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 HOME >巨大災害・原発事故の中に漂う人と動物 最先端科学としての原子力がもたらす災厄に思うこと
 
 

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【連載コラム】動物実験見聞記(17) AVA-net News No.147

橋爪 竹一郎(宝塚造形芸術大学教授・元朝日新聞論説委員)


巨大災害・原発事故の中に漂う人と動物

最先端科学としての原子力がもたらす災厄に 思うこと

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 被災地の動物:一匹の黒い牛
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 東北大地震・津波で多くの動物も被災した。かつて被災した動物の映像を見たことがある。瓦礫の原っぱに黒い牛が一匹へたり込んでいた。「生き延びた家畜…」という短いナレーション。一瞬の映像だったが、牛は戸惑ったような、のんびりした表情だった。それがかえって哀れを誘った。
 動物は震災とか津波とか放射能とか、そんなものを知らない。赤ちゃんのような無邪気な存在に見えて、かわいそうさがつのる。それにしても、被災動物・家畜の情報はほとんどない。ネットで調べても、家畜に放射能汚染の飼料や水を与えないようにという農水省通達とか、飼料の運送ができず家畜が飢え死にしているケースもあるとか、医薬品、獣医が不足しているとか。
 原発事故・放射能汚染は人間のしわざだ。動物のあずかりしらないことで、動物は犠牲だけ負わせられている。

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 動物のことを思うのは感情的か
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 一般に動物保護とか動物実験の残酷さを訴えると、感情的、感傷的、ヒステリック、合理的でない、現実的でない、科学的でない、見方が狭い、社会性がない、大局観がない、といったイメージを思い浮かべる人々がいるようだ。
 しかし、野上ふさ子さんの著書「新・動物実験を考える」は前述のようなイメージ・先入観をことごとくひっくり返している。動物保護の問題は地下水脈でもっともっと大きなものとつながっていることを、私は以前、野上さんの本を読んで考えさせられた。そのとき書いた文章を引用させてほしい。今回の震災と表面上のつながりは薄いが、本質的には深く関わる問題だ。身近な小さな生き物たちへの優しさは、戦争、爆薬、農薬、核問題、エイズなどなどを網羅する骨太な文明論につながり、哲学、宗教、ひとりひとりのかけがえのない一生をどう生きるか、の死生観に落ち着く一本のしたたかな回路であることを教えてくれる。

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まぶたに焼き付いた被曝の動物実験シーン
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 野上さんはかつて見たある映像のことを書いている。
 核実験の爆心地を中心にした半径の各地点にヤギ、ヒツジなどの動物が杭につながれている。悲しそうにうなだれている。砂漠だ。まわりにほとんど草木はみあたらない。  やがて、目に焼きつくような閃光が全体を覆い尽くし、その直後、巨大なキノコ雲が立ち上がる。爆風がまばらな草木をなぎ倒す。踏ん張っていたヤギやヒツジたちも横転する。一定の距離をとった地点に動物たちを配置し,被曝の距離と殺傷の関係を調べる目的で行われた動物実験。―この映像はいまも野上さんの深層に焼き付けられたままだ。野上さんはこう書く。
 「スケープ・ゴート(身代わりのヤギ)という言葉がありますが、この光景はまさに人類の犯している罪悪を、何の罪もない動物たちに背負わせている行為……広島・長崎に核爆弾が落とされる前に米軍はその威力をためすために核実験をしました。多数の人や動植物を殺傷するばかりでなく、放射能の後遺症が長く……略。世界の核兵器保有国の核実験は合わせると千数百回におよぶと言われます。数えきれないほど多くの動物たちが放射線被曝の実験にさらされてきたのです。」
 それまでうかつにも動物実験と言えば、医学の領域だけ、と思い込んでいるようなところがあった。核実験と動物の組み合わせはボクにとって新鮮であると同時に、医学の分野にもましていっそう人類の罪深さを意識してしまったのはなぜだろう。

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 原爆で動物も犠牲になった
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 優れたジャーナリストで、広島の平和文化センターの理事長だった斎藤忠臣さんの話を思い出す。
 斉藤さんは就任してまもなく、同センターが管轄する「原爆資料館」を見て回った。そのとき、地下の収蔵庫で一頭の被爆した馬の標本を見つけたのである。背中は焼け焦げ、鼻の先っぽはなかった。おとなの農耕馬らしかった。
 農作業の最中に被爆したのだろうか? 仔馬はいたのだろうか。一緒に働いていた人は? どんな家族構成だったのだろう?
 そして、人間だけでなく、多くの馬や牛、犬や猫、動物たちもまた焼けただれ、苦しみながら死んでいったことを改めて思ったのだった。動物たちにも人間と同じような、後遺症の問題があったのだろうか。
 焼けて、もの言わぬ一頭の馬は、被爆者とは違ったチャンネルで、斎藤さんに核兵器の圧倒的な悲惨とその廃絶を迫ってくるように思われた。斎藤さんは一頭の被爆した馬の物語を通じて、小さな世代に何かを訴えたい、そう念じて、童話を書いてみたいという。
 核兵器という、人類が創り出したもっとも科学的で悪魔的な大量殺戮のツールを試すために、日本国民はすでに広島と長崎で人体実験にさらされた。そのとき、多くの動物たちが巻き込まれたが、それ以後は人間の代わりに本格的に動物をつかっての核兵器の開発競争が始まっているのだろう。
 人間同士の殺し合いが目的なのに、なぜ、まったく関係のない「動物のいのち」たちが、実験の対象にならねばならないのだろう。科学と無縁な動物たちが、人間の科学の成果によって殺され、苦しめられ、動物実験の結果、ますます科学としての核兵器は殺傷能力の精度を高めるというこの循環。
 人間とは異なった立場から、動物には動物の怒りと悲しみと言い分があるに違いない。
 実験者たちは、核兵器の開発競争は人類のために有益であり、そのためにやむなく実験動物を犠牲にしているのだ、とでも弁明するのだろうか。

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 戦略爆撃機のパイロットになった動物
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 野上さんはほかにもいくつか具体例をあげている。
 アメリカの国防総省は、爆撃機を操縦中のパイロットがソ連の核攻撃を受けた場合、どこまで任務を遂行できるか、その度合いを知りたかった。
 このために、チンパンジーをパイロットに仕立てた実験を試みた。チンパンジーを固定装置にしばりつけ、電気ショックを与えながら飛行機の操縦レバーの操作を覚えさせる。そのうえで、つぎつぎ放射線の量を増やして照射していく。どの程度の放射線なら、チンパンジーは操縦を続けることが可能かを研究するのが目的だ。
 この実験はドラマ化され、映画『プロジェクトX』になった。日本では『飛べ、バージル』というタイトルで公開された。悲劇なのか、喜劇なのか、ブラックユーモアなのか、判断しかねるが、映画の最後で主人公の青年が「チンパンジーは自分が被爆したことを知らない。しかし、(人間の)パイロットはそれを知るのだ」とつぶやく。野上さんはこの言葉を引用し、実験の愚かさを断罪している。
 また、海ではイルカが特殊掃海のメンバーとして出動する。アメリカ海軍は機雷探知や敵の潜水艇を発見するための特殊掃海部隊にイルカを駆り出す。多くのイルカが生地と異なる海域に運ばれ、慣れない環境のもとで伝染病にかかったり、酷使され、あるいは訓練中に体罰や虐待を受け、死亡したと報道されているそうだ。

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 放射能汚染の中へ餌やりに戻る被災者たち
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 原子力は人間の日常性や想像を超えた異常なパワーを持つ。効率効果を求める人間はどうしてもその魔力にすがりたがる。しかも人間や動物や植物、地上の生きとし生きるものは、いまもむかしも、はかない存在だ。その対比があまりに大きすぎて、うまくいっているときはいいが、一度バランスが狂うと、人間の手には負えなくなる。そのことをじゅうぶんかみしめないといけない。
 今回の大震災に関連するネット情報で、農水省の通達のあと、だれかが「避難で置き去りになっている家畜もいる。これ以上の犠牲をなにも知らない家畜に負わせないようにしよう」と書き込みを添えていた。巨大な原子力と、飼い主にも逃げられ何も知らないままに置き去りにされた動物たち。その対比がやっぱり悲しい…。
 避難圏内に指定されている地域からいったんは逃げ出したが、再び戻ってきている被災者たちも多いという報道もあった。なぜ戻ってきたかというと、家畜にえさをやるためだったという。これも悲しい。家畜が餓死しては元も子もないという損得勘定ではなく、日ごろ接していた家畜への思いやりだろう。

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 私たちに出来る小さな革命
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 原発事故は綱渡りのような危機状態で、これが当分続きそうだ。被災者の生活支援、放射能汚染、停電や企業活動、なにもかもまだまだ激動中、予断を許さない。国家的な危機の中でこんなことをいうのはひんしゅくを買いそうだが、今回の大震災は人類が文明の大きな転換期にあることを教えてくれた気がする。
 原子力をはじめ、日本はいろんな分野で科学の成果を取り入れ、やみくもに便利さ、豊かさを求めて世界の先端を走り続けてきた。でも、われわれは幸福だったのだろうか、とふと考え込んでしまう。それは中国に経済力で追い抜かれたから、という理由だけでない。少なくとも僕は今回の大震災の前からここのところずっと、これでいいのだろうか、なにかがおかしい、こんなはずではなかったのに…そんな無力感、脱力感、失望感、一種の不幸感に浸されていた。
 車いすの天才宇宙学者ホーキンスは人類はあと1000年で絶滅するといい、アメリカの科学雑誌には別の学者たちが、いや、2〜300年だ、と論文を発表していると山折哲雄さんがどこかに書いていた。人類がいまの文明の方程式で突き進んでいいのだろうか、という危機感みたいなものは世界の多くの人が共有しているとおもう。中国だって、そのうち、いまの日本人のような虚脱感に襲われるに違いない。
 一方で、もっと問題を小さく具体化していうと、これから原発是非論が再燃するだろうが、では火力発電に切り替えたらいい、と単純に割り切れるものかどうか。地球の資源は限られていて、石油の高騰は避けられない。投資マネーも狡猾に動くだろう。せこい日本人がこれにどう対応するのか。千年に一度のことだからと再び原子力におんぶする路線に立ちかえるのか…。まあ、動物問題から大きなテーマになってしまったけど、環境汚染を真っ先に知るのは小鳥だというから。
 今回の大震災を機に私たちの暮らしを考え直すことも大事だと思う。現代日本は電力浪費のシステムが日常生活の隅々まで支配している。一人ひとりが日々の暮らしの様式を節電型にすること。これはわれわれにもできる「人と動植物が幸せ」になれる小さな革命だろう。


 

 

 

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