名古屋検察庁でブタの実験
2003年2月、麻酔され腹這いにされたブタの肛門に消火用ホースの放水で水を直撃、30秒後に肛門の裂傷ができたという動物実験が行われました。この実験結果は、名古屋刑務所で刑務官が受刑者に消火用のホースで水をあびせ死なせた事件で、刑務官の有罪判決の決め手となったとされています。刑務所という密室の中で行われた行為であるため、「客観的証明」をしようとして、検察側がこのような動物実験を行いました。
しかし、受刑者を司法解剖した鑑定人は、「受刑者の位置と放水の角度からみて、放水は肛門部には絶対に当たらない」と反論しています。裁判でも、刑務官側が事実関係を否認しており、真相はまさに「藪の中」状態です。
ここで問題としたいのは、動物実験のデータは「動かぬ証拠」となり得るか?という疑問です。ブタと人間の身体の構造の違い、麻酔を受けている場合と受けていない場合の違いはもちろんのこと、消化器具、水量、水圧、放水距離、気温、水温といった物理的条件でも大きな差異はでてくるでしょう。動物実験というものは条件の設定次第で結果は大きく変わります。それ故に当初の意図通りのデータが得られるようにすることも容易です。実験データはそれを使いたい側にいかようにも有利に使えるという側面があることを頭に入れておく必要があります。
いずれにせよ、この事件で刑務所の暗黒状態が明るみに出され、100年ぶりに「監獄法」が改正されることとなったのが、唯一の救いかもしれません。
(2005年11月 名古屋 刑務所受刑者暴行事件)
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