【連載コラム】本田真知子の動物実験あれこれ(11) AVA-net News No.135 |
食品として安全?クローン動物は異常が多い!?
1.死産、病死などが多い
前々回、クローンペットについて書いた。その中で、クローン山羊や牛などに異常が多いということに触れた。
クローンは受精卵クローンと体細胞クローンがある。
受精卵クローンは1つの受精卵を2つや4つに割って、人工的に双子や四つ子を誕生させること。体細胞クローンは、例えばある山羊の体のどこかの細胞から遺伝子を取り出し、それを核を取り除いた受精卵にいれて、代理母となる山羊のお腹に戻し、出産させること。この場合は、遺伝子の持ち主の山羊と瓜二つになるとされている。
しかし、実際のところ体細胞クローンで誕生した猫では、遺伝子を提供した猫と柄が違っていたりする。
この体細胞クローンについて、気になるデータがある。
農林水産省が昨年6月に発表した3月末までの「家畜クローン研究の状況」では、体細胞クローン牛の出生頭数551頭、そのうち死産78頭、生後直後の死亡91頭、病死等134頭、事故死8頭、廃用11頭、試験屠殺143頭、研究機関での育成・試験中86頭となっている。
体細胞クローン豚は出生数256頭のうち、死産88頭、病死等59頭、事故死10頭、試験屠殺47頭、研究機関での育成・試験中52頭。体細胞クローン
山羊は、出生数9頭で、死産4頭、病死等3頭、研究機関での育成・試験中2頭である。
牛でも豚でも、死産、生後直後の死亡、病死などが多いことが分かる。
2.動物の福祉から考えて
このデータの中では、死産や病死などが多い原因には触れられていない。しかし、牛においては5割以上、豚では6割近くが死産や生後直後の死亡、病死などである。
これでは異常といわざるを得ないし、商業化など夢のまた夢である。
いくらおいしい黒毛和牛の体細胞クローンをつくったところで、出生した牛の半数が育たなければ、この技術を使うだけ無駄というものである。
さらに無駄という以上に、たとえ家畜として人間に飼われている動物であっても、こんなに死亡する数が多い技術を研究し続けていいのだろうかという疑問が湧く。
動物の福祉という観点から考えて、許される技術であろうか?
3.食品として安全といわれても・・・
1月6日の新聞報道で、「クローン牛やクローン豚について検討している内閣府食品安全委員会の作業部会が、食品としての安全性を認める見通しになった。」という報道があった。
専門家による部会の小グループが国内外の文献を調査。その結果、「誕生から6か月を超えると、健常に発育する」と結論づけた。また、クローン牛や豚の子孫についても、「従来の繁殖技術による牛、豚と差異は認められない」としている。
というが、前述したように、農水省の報告データの中では、死産や病死などが多い原因には触れられていない。その情報公開をしないまま、6カ月過ぎた牛や豚は安全だといわれて、納得できるだろうか。
技術の問題、動物の福祉、食品の安全性のどれをとってみても、体細胞クローンはクリアしていないと思う。
また、出生した半分が死んでしまう技術では商業化だって、採算が取れるのかと心配になってしまうくらいだ。
どうして、食品の安全性を認めるなんて、いうのだろう。
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