【連載コラム】本田真知子の動物実験あれこれ(4) AVA-net News No.128 |
犬のネールアートについて
1.愛犬ブームで犬におもねる?
愛犬雑誌の編集をしていた頃は、まだ今のような愛犬ブームではなく、巷では犬に対して「ワンちゃん」という呼び方も一般的ではなかったし、ミックス犬は雑種と呼ばれることのほうが多かった。
雑種という言葉の力強さや可能性の大きさが私は気に入っていたが、ミックスと呼んでという飼い主たちの声にゆずった。でも、取材で「お宅のワンちゃんは…」という気にはなれなかった。「かわいいワンちゃんですね」というのは、なんだか犬におもねっている気がするのだ。
犬に服を着せるのはどうかと思っていたが、室内で飼われている犬は冷暖房が効いている部屋で過ごしていることが多く、アンダーコート(下毛)が薄くなってきたので、冬場は寒く感じるのだという獣医師の話を聞き、そういう場合なら服を着ても仕方ないかと思った。もちろん、雨の日の散歩にレインコートを着せることには何の抵抗もなかった。
2.犬を飾ることの意味は
しかし、どうしても嫌なのが犬の毛染めと、最近話題のネールアートだ。せっかく白い毛の犬を飼っているのに、なぜわざわざカラーリングをするのか。かわいいじゃないの、犬も喜んでいるという意見はあるが、相手は自分の意思を伝えられない犬だ。傍から見ていると着せ替え人形で遊んでいるかのごとくで、飼い主の自己満足の世界だよなぁと思っていた。
そして、今度はネールアートである。勘弁してくださいって感じだ。あの細い爪に、それも足先を触られるのを嫌がる犬が多いのに、なぜわざわざネールアートをするんだ。
ネールアートに使用するカラーと呼ばれる絵の具(マニキュア)、そしてそれを拭き取るリムーバー(除光液)は犬が舐めても大丈夫だというふれこみだが、
本当だろうか? 人間だってリムーバーを使っていると手先が荒れてくるし、爪のエナメルだって溶かすのだ、犬だって荒れるのではないだろうか。もちろん、人間はそれを承知しているが、犬はなすがままなのだ。
そして、除光液に含まれているアセトンなどは、有害性の評価のために動物実験も行われている。もちろん、犬の毛染めもマニキュアも化学物質だし、(犬のためというよりは、それを使う人間の安全性のために)動物実験をされている可能性がある。愛犬を飾るために、他の動物を犠牲にするのは、どんなものだろう。
人間のネールアート、携帯電話を飾り立てるデコ電。最近、若い女性を中心に、ごてごてと飾り立てるのが流行っている。犬のネールアートもその流れなのだと思う。
3.あるがままの姿で満足できないか
ネールアートを施すために、しつけをきちんとする、飼い主が喜ぶことで犬が嬉しく思う、など。まぁ、ネールアートの効用を言う人もいる。もちろん、犬にネールアートをするということは、マーケットが広がることだから、商売をする側としては、悪く言わないし、すすめるに決まっている。
かわいいからと毛の色を変えたり、爪を飾り立てたり、そういうことではなく、何も足さない「あるがままの姿」の犬で満足できないものだろうか。
なぜ、そんなことを考えるかというと、なんとなく生き物をシンプルに見ることが少なくなると、命や体に対する扱いが軽くなる気がするからだ。上手く説明できないので、勘といっていい。でも、そう思うのだ。
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