実験研究室の中で起こっていること(4)
「自主規制」は機能しているか?
−まだまだ続く研究不祥事・法令違反−
AVA-net News No.115 2005.11-12
前号の「AVA-net News」(「科学的非行」と動物実〜科学論文には不正行為がいっぱい!?)という記事でも研究者の不正行為について最近の例を掲載しましたが、科学研究に関しては、まだまだいろいろな事件が続いています。これで本当に動物実験は「自主規制」で問題ないと、社会に公言できるものでしょうか??
●慶応大教授ら科研費8500万不正受給(10月)
慶応大医学部教授石川博通氏ら4人の研究者が2004年度までに、先端的な研究に交付される文部科学省と厚生労働省の科学研究費補助金計8500万円を不正に受け取っていたことが判明。
●明治製菓の研究所 遺伝子操作菌の培養液流出(10月)
明治製菓は、神奈川県小田原市栢山の同社微生物資源研究所で今年6月20日、遺伝子組み換え細菌の培養液を流出させる事故があったと文部科学省に届け出を行った。
●東大教授 論文の信頼性に問題、生データなし(9月)
東京大学は同大大学院工学系研究科の多比良和誠教授研究者がまとめた遺伝子分野の論文の内容について、実験結果の再現性に問題があるとする中間報告を発表。生データが存在せず、同教授に対し、研究不正の有無を判断するため、追実験の指示を出した。同教授がジーンファンクション研究センター長を兼務する産業技術総合研究所も、研究不正の有無について予備調査委員会を設置し、調査を開始。
●名大、研究費2700万返還へ(9月)
名古屋大は、文部科学省の研究費「21世紀COEプログラム」2003年度採択分のうち、同大大学院多元数理科学研究科の藤原一宏教授の業績に関し、申請書類に誤った研究業績記載があったとして、プログラムの認定を辞退。今年度後期分の研究資金2700万円を返還すると発表。
●文部科学省 放射性物質管理「不適切」88件と報告(8月)
文部科学省は全国の教育・研究機関など60事業所で、放射性物質の放置などの不適切管理が計88件見つかったと原子力安全委員会に報告。登録や廃棄の手続きがずさんだったために10年以上放置された例が多いとのこと。
●日本学術会議会長 科学における不正行為に対してコメントを発表(8月)
日本学術会議は、第18期学術と社会常置委員会報告「科学における不正行為とその防止について」、および第19期学術と社会常置委員会報告「科学におけるミスコンダクトの現状と対策−科学者コミュニティの自律に向けて−」を発表。これは、科学における不正行為の防止と、科学者に対する、倫理性の向上を訴えたもの。
病原菌の実験施設はどこにある?
平成18年、病原微生物の所持等に初めて法規制
〜感染症法改正〜
現在の日本には、先進国で唯一、病原微生物の利用に関する法規制がなく、エボラウイルスやペスト菌など、危険性の高い病原微生物の場合であっても、所持・管理等は研究者が自由におこなうことができます。立ち入り検査や罰則などの規定もありません。
しかし、来年いよいよ感染症法が改正され、国の生物テロ対策の一環として、病原微生物の所持や譲渡に厳しい規制がもうけられることになりました。厚生労働省では現在、厚生科学審議会感染症分科会でその法規制について検討をしており、五十七のウイルスや細菌に関し、危険性の高いグループから順に、所持等の原則禁止や許可、届出、基準の遵守と、4段階の規制が行われることになりそうです。
この法改正へ向けての調査では、炭疽菌と多剤耐性結核菌を研究用に保有している医療機関や研究所が全国で少なくとも114施設あり、そのうち約半数の58の施設では、管理マニュアルすら整備していないことがわかりました。いかに日本が研究を「研究者の自主性」に任せ、危険と隣り合わせできたかがわかる数字です。
この法改正によって、危険な病原微生物を所有する医療機関・実験施設については、国が実態を把握することが可能になりますが、このことによって私たちの求める「動物実験施設の届出制」が不必要になるわけではありません。むしろ、その目的が動物福祉であることが明確になるのではないかと思います。
■霊長研 犬山市にニホンザル繁殖場
愛知県犬山市の京都大霊長類研究所は、ナショナルバイオリソースプロジェクトの一環としてニホンザルの繁殖場を含む研究施設の新規建設を計画中。現在の三倍以上の広さを予定し、来年度末の完成を目指す。犬山市は建設計画を受け入れる方針。(8月29日中日新聞)
■長崎のベンチャーが中国にサル1600匹の動物実験施設
長崎県立長崎シーボルト大・久木野憲司教授が創業したベンチャー企業「バイオラボ」が、中国浙江省にサルの動物実験施設を設け、来春からゲノム創薬の開発試験を請け負う。中国はサルが調達しやすく、建設コストも安い。(9月21日共同通信)
■ミニブタを使う医療機器の開発・訓練施設 11月神戸に完成
ミニブタを使ってステントやカテーテルなどの医療機器の開発やトレーニングを行うための施設、神戸医療機器開発センター「メデック」が、11月に神戸市のポートアイランドに完成。来年稼動予定。(8月31日日経 edWave)
動物を使わない代替法の開発進む
J-TEC、化粧品の実験用に培養人工皮膚開発
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)は、人間の皮膚と同じように紫外線に当ると日焼けをする培養人工皮膚を開発。年内にも発売、動物実験代替法として売り込む。(日経産業新聞10月4日)
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