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こんな動物実験が必要ですか?

【連載コラム】本田真知子の動物実験あれこれ(13) AVA-net News No.137

光る猿の意味が分からない

 

1.猿の遺伝子組み換え世界初成功!?

5月末、新聞とインターネットに、少し毛色が光っている猿の写真が掲載されていた。

「世界初成功、サルの遺伝子組み換え…人間の難病解明へ一歩」の見出し。

「猿の一種、マーモセットを使い、新しく導入した遺伝子を子供に受け継がせることに、慶応大と実験動物中央研究所のチームが成功した。

霊長類での遺伝子組み換えは世界初で、人間の難病遺伝子を導入する手法によって、病気を詳しく調べることが可能になる。28日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

研究チームは、猿で最も繁殖性が高いコモンマーモセットを選び、遺伝子の導入効率を高める工夫をして受精卵に蛍光遺伝子を送り込んだ。この受精卵を順次、仮親の子宮に入れたところ、5匹が誕生。5匹とも毛や皮膚などが光り、導入した蛍光遺伝子が働いていた。

5匹のうち、2匹では精子や卵子でも導入した遺伝子が働いている。この2匹を片親として生まれた子供4匹のうち3匹でも導入遺伝子の働きを確認できた。

これまで次世代まで遺伝子導入できるネズミはあったが、病気の原因遺伝子を入れても、発症の様子が異なることが多かった。このため、人間に体の仕組みが近い霊長類で遺伝子導入する技術が求められていた。」(2009年5月28日 読売新聞)

2.意味が分からない

人間の難病解明への一歩というが、本文を読んでみて、どうしてそうなるのか、意味が分からなかった。

受精卵に遺伝子操作をして、子供を生ませたと。その次世代も操作された遺伝子を受け継いでいるのが分かった、ということらしい。

人間に近い猿に遺伝子組み換えが出来たことで、遺伝子の働くメカニズムが解明できるということなのだろうか?

それで難病の解明につながるというが、ここが私の能力の限界なのか、理解できない。

次世代へつながった遺伝子が発現するメカニズムって、そう簡単に判らないと思うのだけれど。

こんな遺伝子組み換えの猿をつくることが、研究者には大きな発明の一歩になるのかも知れないが、私には無駄な気がするのだ。

 もっとシンプルな形で、難病の人たちに対するフォローが出来ないものだろうか。

3.写真の意味するもの

 公開されたマーモセットの写真はかわいい。蛍光する毛も、染色したみたいなので違和感もない。だから、蛍光遺伝子を入れたことに対する、グロテスクさが伝わってこない。

 一方、脱毛や薄毛の原因となる遺伝子を特定したといって、実験に要されたねずみの写真が公開されたが、こちらは、頭部の毛が抜け落ちたものや全身の毛が抜けたものなで、ぎょっとしたし、見ているとその姿に痛々しさを感じた。

 しかし、この2つの遺伝子を操作された動物は、人の健康や生命のためという大義名分を掲げられているが、それよりも純粋な研究者の好奇心による産物のような感じを受ける。

 こういう写真を見ると、人間の英知はすごいという感銘よりも、なんとなく傲慢なにおいがするし、嫌な感じがする。

 そう感じるのは、私だけだろうか?

 こんな動物実験は許せないというと、「難病に苦しむ人たちの気持ちが分からないのか」と、批判されるんだろうなぁ。

 やれやれ。

 


 

 

 

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