1.四川大地震で狂犬病が懸念
四川大地震で飼い主を失ったペットの犬が野生化して人を襲っているという報道があった。また、野犬が感染症を持っているので、警察が野犬は見つけ次第、射殺しているという報道もあった。
中国は狂犬病発生国で、2008年3月には全国で163人が発症し、151人が死亡したという。他の感染症が発生する可能性があるように、狂犬病が広がる恐れもある。
当然、最近地震が多い日本をふりかえって、狂犬病は大丈夫だろうかと心配になった。
日本では狂犬病予防法によって、飼い主は犬の登録と狂犬病予防接種を義務付けられている。公表の接種率は70%を超えているが、犬の登録頭数(約660万頭)と実際の飼育頭数は倍の開きがあるというから、予防接種をしている犬の割合も実情は35%くらいにとどまっていると考えられる。
大学や製薬会社には、実験用の犬が多数飼育されているが、それらの犬はほとんど登録も注射もされていないという。
これでは、大規模な地震などが大都市で起きた時、狂犬病の心配が起きる…。と、単純に考えたけれど、それって本当にそうだろうか?
2.大規模な地震で狂犬病が発生した?
日本国内では、もう50年以上狂犬病の発生がない。ニュースになるのは海外で感染した日本人の話だ。
心配されているのは海外から輸入された動物が感染している可能性と、北海道などに寄航するロシアの船に乗っている犬なのだが。
例えば、大規模な地震が起きた場合、実際に狂犬病に感染した動物がいない状況での、発生の心配ってどのくらいあるのだろう。阪神淡路大震災の際も、新潟
中越地震の時にも、多くの犬が飼い主とはぐれたり置き去りにされたりしたが、狂犬病発生の心配報道には触れていない。
犬の狂犬病予防接種率の低さよりも、大学や企業の研究所にある狂犬病のウィルスの管理体制の方を考えた方がいいのではないだろうか?
3.狂犬病予防接種はなぜ毎年?
さらにいえば、なぜ日本は年に1回狂犬病予防接種をするのだろう?
米国などは3年に1回だという。米国は狂犬病発生国だけれど、それでも予防接種は3年に1回ですむ。だいぶ前に、そのことを電話で農林水産省に尋ねたところ、電話口に出た担当者に「なぜでしょうね」といわれた。
狂犬病予防接種による副作用のことを考えても、犬の負担を少なくするために、米国のように3年に1回でいいのではないだろうか? 米国で使っているのと同じワクチンを使うか、接種間隔が長い狂犬病予防のワクチンを開発すればいいだろう。
義務として打たなければいけないのなら、長期間有効なワクチンにしたほうがいいと思う。予防接種での犬への負担もそうだが、回数が少なくなれば飼い主や
自治体の財政の負担も少なくてすむ。どうしても毎年打ちたいという人は、任意で1年間有効の注射を打てばいい。それとも、年に1回打たなければいけない理由がほかにあるのだろうか。
行政が本当に、35%といわれる狂犬病予防接種率を上げたいと思うのなら、根本的な制度から考え直した方がいいと思う。
それとも、狂犬病予防法があるからワクチンの接種を義務付けているだけで、まぁ接種していない犬がたくさんいても問題ないと、本音では考えていたりしているのかもしれないが、それでいいのだろうか?