情報公開資料からわかったこと
実験用の猫の値段はいくら?
家庭の「飼育ネコ」も実験に?
AVA-net News No.146 (2011.1-2月号より)
日本には、動物実験の実態を把握する法制度がなく、実験動物がどのようなところで繁殖され、どのような業者が取扱い、どこの実験施設に納入されて、どのような実験に使われているのか、トレーサビリティができる仕組みはまったくありません。
唯一、手がかりを得ることができるのが、国公立機関に対する情報開示請求で公開される文書です。当会では、文部科学省直属の研究施設である理化学研究所に対して、実験動物の購入に関する情報開示を求め、全研究部門におけるサル、ネコの購入伝票を調べてみました。
【平成11年度〜13年度】
理化学研究所では、脳統合機能研究、認知脳科学研究、脳皮質機能構造研究、視覚神経回路モデル研究、、脳回路モデル研究のために業者からサル、ネコを購入しています。2年間に購入された個体数の合計は114匹、購入額は29,480,475円。サルは3業者から、ネコは4業者から購入されていました。
◆脳統合機能研究:
アカゲザル:19匹、8,914,500円
ニホンザル: 4匹、1,197,000円
ネコ: 45匹、4,848,000円
ネコのうち飼育ネコ:8匹、270,000円
◆認知脳科学研究
アカゲザル:20匹、10,319,400円
ニホンザル: 6匹、1,556,625円
合計26匹、11,876,025円
◆脳皮質機能構造研究:
ネコ:9匹、1,270,500円
◆視覚神経回路モデル研究:
ネコ:8匹、1,075,200円
◆脳回路モデル研究:
ネコ:3匹、299,250円 ※3匹とも8週齢の雌ネコ
【平成14年度〜15年度】
平成14年〜15年度の2年間でサル、ネコの購入数は72匹で、購入額は22,725,100円です。
アカゲザル:20匹、10,532,550円
ニホンザル:29匹、 8,678,250円
ネコ: 23匹、 3,513,300円
実験用のアカゲザルは1頭50万円くらいで、ニホンザルはその半額の25万円くらいと安価です。ニホンザルの由来は不明ですが、「有害駆除された野生由来のサル」であるとすれば、違法性の問題が生じます。
実験用のネコは1匹が10万円以上していますが、「飼育ネコ」だと3万円ていどです。この「飼育ネコ」とは、家庭で飼われていたネコと思われ、ワクチン接種済という条件がつけられています。
【平成15〜17年度】
平成15〜17年度分はサル、ネコに関する動物実験計画書から、使用数を算出しました。以下のような残酷な実験が行われています。
◆視覚神経回路モデル研究:
発達期視覚野機能構築形成および可塑性の研究および聴覚皮質の機能マップの研究で、マウス120匹、ラット66匹、ネコ72匹を使用しています。
マウスとラットは業者から購入し、ネコは自家繁殖したSPFネコ(特定された微生物や寄生虫が存在しないネコ)となっています。
動物実験の目的は、生後成長に伴って発達する視覚野機能マップの形成を経時的に観察するため。代替法はないと記載しています。
動物実験の方法は、脳組織を取り出して組織化学的検索を行うこと、発達に伴う機能マップ形成に及ぼす薬物を投与すること、ネコを脳定位装置に固定して開頭手術を行って皮質活動を測定すること、子猫を暗箱飼育・単眼遮蔽など視覚入力を制限した飼育を行うことなどです。
◆脳統合機能研究:
サル48匹を使用し、サル連合皮質における視覚情報表現に関する研究と、ネコ48匹を使用した先端的脳機能技術の開発。
サルもネコも業者から購入。どちらの研究も大脳皮質切片標本を作製するため、実験動物は安楽殺させられます。
◆認知機能表現研究:
4〜8歳のサル35匹を使用した大脳連合野機能の電気生理学的・行動学的研究。
実験では、サルをモンキーチェアーに座らせ頭部を固定し、行動課題を訓練する。報酬として水またはジュースを与えるために給水や給餌を制限する、脳の一部を破壊することなどが記載されています。
また、実験動物の死体(臓器、組織)等の処置は業者委託する他、研究機関へ無償譲渡する予定となっています。
◆神経構築技術開発:
0〜5歳のサル8匹を使用した、高次脳機能の神経構築学的基盤のための実験。本実験でも脳を摘出して顕微鏡標本を作製するため、実験動物は安楽殺させられます。
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