Q10
難病に苦しむ友人がおり、効果的な薬の開発を欲している姿をみると、動物実験の廃止運動に参加していることがためらわれます。
A10
難病に効果のある新薬が開発されることを望むのは私たちも同じです。
しかし、「動物実験をすれば、特効薬が開発できる」というものでもないように思います。動物実験が医療の発展に寄与する部分は実は極めて少ないのではないでしょうか。現実にインドや中国など、動物実験が行なわれてこなかった国でも有効な医療が実践されており、その医学が動物実験を行っている国々に比べて遅れているというわけではありません。逆に動物実験が野放しの状態であるわが国が、動物実験を厳しく規制しているドイツ、イギリスに代表される現代西洋医学(実験数は日本よりずっと少ない)において、優位に立っているでしょうか。日本の製薬会社が世界で認められるような画期的な新薬を多数開発し、世界の薬学会をリードしてきたといえるのでしょうか。
私たちが動物実験の廃止運動を起こし、また多くの方にご賛同いただくのは、現在の日本の動物実験の実態があまりにも悲惨であるからであり、それを少しでも改善したいと思うからです。動物実験を認めるわけではありませんが、もし、極めて少ない数しか行われていない、それも動物に苦痛を与えないような配慮が行き届いているような状態であれば、おそらく現在のような動物実験廃止運動は起こらなかったでしょうし、また、もし起こったとしても多くの方の同意は得られなかったと思います。動物実験の廃止運動が起こったのは、無意味で残酷な実験があまりに多すぎるから、その実態があまりに悲惨だからです。
日本の動物実験は、残虐な人体実験をしたことで悪名高い731部隊をそのルーツにしています。日本の動物実験者側は、まず731部隊が行った人体実験の反省に立つべきです。人体実験は戦争という異常事態の中で行われたことだとの指摘も耳にしますが、少なくとも肯定できることではありません。そうであれば、生命に対する残虐性という点で、動物実験もまた強く批判を受けるべきことなのです。
難病に苦しむ友人がいることと動物実験の廃止運動に参加することはなんら矛盾することではありません。自信と信念をもって運動にご参加ください。
(北村孝至)
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