日本生理学会の主張 |
私たちの異論・反論 |
はじめに |
■「私たちの生存を守る医学の発達は動物実験によって成り立ってきました。」
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□医学の発達は、必ずしも動物実験に依存しているわけではありません。中国やインド、日本の伝統医学でも、動物実験なしで行われてきました。動物実験に依存した医学は人体を含めた生物の体をモノとして見る唯物論的西洋近代社会の産物です。西洋にも東洋にも動物実験をしない独自の医学の伝統が生き続けています。 |
■「実験に利用される動物がかわいそうという思いは人間として当然ですが、理性的に判断することも大切です。」 |
□動物実験に反対する人々は感情に訴えているのみで、理性的な判断力を持っていないかのような言い方です。人間社会には倫理や道徳というものがあり、科学的見地からは理にかなっているとしても、倫理的見地からは容認されないことが多々あります。これもまた理性的判断の一つです。 |
動物実験とは
1.動物実験の目的・必要性
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■「動物を実験に使用することは、食物として動物を用いるのと同じ道理であり、動物を犠牲にして生きる人間の生の一面です。」
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□動物実験も肉食も、人による動物の利用という点では同じですが、動物に与える直接的な苦痛の程度は大いに異なります。また、人類は自分が生きるために動物を食べてきたかもしれませんが、医者に動物実験をしてもらって生き延びてきたわけではありません。さらに、動物実験に依存しない医学と同様に、動物を食べない文化、地域もたくさんあります。人類社会の普遍的行為とは言えません。 |
2.動物実験の有用性 |
■「20世紀中、平均寿命の延長と小児死亡率の低下はいちじるしく、病苦からの解放、軽減も大きく進みました。これに寄与した医学・医療の進歩は多くの分野にわたり、枚挙にい
とまがありません。これらはいずれも動物実験の上に実現しており、これに止まらず動物実験に基づいていない医療はないと言っても過言ではありません。」
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□平均寿命の延長と小児死亡率の低下は、主に栄養状態の改善、労働環境の向上などによってもたらされました。過去も現在も、世界的に見て戦争や飢餓こそが、人の死亡率を押し上げる最大の要因です。また、医学の進歩は幾多の臨床の経験から蓄積されてきたものです。動物実験を過大評価しすぎています。 |
■「医学の進歩はこの程度で十分であり、もう動物実験は必要ないのでしょうか。」 |
□医学の進歩と動物実験の必要性は必ずしも一致していません。 |
■「未解決の難病は多く残っていますし、新しい病気も次々と出現しています。」
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□自然破壊、化学物質の乱開発など、経済産業活動が地球規模で環境を汚染し、それによってさまざまな難病や未知の病気が起こっていることは周知の事実です。BSE、エイズなど、人間が自然界の秩序をかく乱した結果引き起こされた厄災や様々な難病を、実験医学で解決するなど夢物語でしょう。 |
3.生理学と動物実験 |
■「動物実験は医学のあらゆる分野で必要、不可欠ですが、とくに生理学においては必須です。生理学は、生命の作動原理を理解することを目的とし、それによって健康と福祉の向上に貢献することを目指しています。」
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□医学の目的は、人々を病気から救い、健康を維持させることです。病気の人を目の前にして、実験動物をまず同じ病気にさせる研究から始めるという生理学は、どろぼうをつかまえてから縄をなっているようなもので、直ちにヒトの健康と福祉には結びつきません。自己弁護が過ぎるというものです。 |
4.動物実験の実際 |
■「使用される動物種は、主にラットとマウスが90
%以上を占め、イヌ、ネコ、サルは全体の1%程度と思われます。
」
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□学会の内部でさえ、どのような種類の動物を何匹、どのような研究に使っているかさえ把握できていない状態です。少なくともすべての実験研究を届出にして、正確な数字を提示すべきでしょう。 |
■「動物のほとんどは、研究用に育てられた動物を業者より購入して使用します。イヌ・ネコ・サルは
地方自治体において殺処分になるものの一部を合法的に譲り受けることもあります。
」 |
□私たちが研究機関に対して動物の購入納品書を情報公開請求をすると、どこから購入・入手しているかの部分はすべて墨でぬりつぶされます。つまり研究者たちは動物をどのようにして入手しているか公表できない(したくない)わけで、実態は不明です。 |
■「動物を研究に使うとき、研究者は動物を人道的に扱い、苦痛を与えないよう最大限に努力し注意を払いま
す。」 |
□つい最近も、大学における実験動物の取扱がずさんであることがメディアで報道され、国会でも問題にされました(本誌P.5〜7参照)。本当に人道的に取り扱われているかどうかを外部から査察、立証する制度がない限り、信用することはできかねます。 |
■「実験にはいろいろなものがあります。」 |
□どのような実験計画があるのか、国民には知らされていません。動物実験計画を、正確に、どのような分野の実験が行われているか統計を出すべきでしょう。そのためには実験計画の事前登録制、ライセンス制が必要でしょう。 |
■「実験終了後は速やかに安楽死させます。」 |
□法律で定められており、言わずもがな、当然のことです。 |
■「動物に対する一連の行為はすべて関連法規に則り、実施され、すべて動物実験(倫理)委員会の審査を受け、承認されることが必要です。
」 |
□関連法規ではなくガイドラインにすぎないもので、それが遵守されているかどうかを外部からチェックする仕組みは何もありません。実験委員会はすべて内部関係者で構成されそのメンバーの顔ぶれさえ公開されていません。なれ合いと言われても仕方がないでしょう。 |
■「このようなルールが守られているという保障なしには、国内外の学術雑誌や学術集会において研究発表することは許されていません。」 |
□日本では動物実験に関する法的な規制がないために、国際的にも実験そのものの信頼度や評価が低く見られています。 |
動物実験
QandA
1.動物実験は人の医学に役に立たない?
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■「ヒトと他の動物は種が違うので、動物実験の結果はヒトに適用できず役に立たないという主張がありますが、間違いです。ヘルシンキ宣言(1964)がヒトを対象とする医学研究は動物実験に基づかなければなら
ないと述べているのも、また、新薬は動物で十分に試された後にヒトに使われるのも同じ理由に拠ります。」
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□薬物の作用をみるデータで、ヒトと動物では27%しか一致しなかったという報告もあります。近年、薬物の代謝作用を見るためには人の肝臓など人体組織を利用する方が短時間で精度が高くできるということになったとたん、動物実験のデータは、人間のデータと違いすぎるという論調が聞かれるようになりました。研究者の側も自分の都合のいいデータだけを引用するという傾向があります。ちなみにヘルシンキ宣言(1964)は、戦争中に行われた非人道的な人体実験に対する世界の医学界の反省の弁です。新薬の副作用は、動物実験では判明せず、必ず人体実験を経なければなりません。 |
2.動物実験は代替法で十分に置き換えられるか? |
■「身体全体の機能を解明する研究や病気の原因、病態を調べる研究は、今のところ動物
実験に頼る以外はありません。新薬をヒトに使用する前に動物で試す必要は今後とも無くなるとは思えません。代替法によって動物実験の必要が全面的になくなる可能性は、少なくとも近い将来は期待できません。」
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□代替法の主目的は、動物の犠牲を減らすことにあり、そのためにどれだけの努力をできるかということです。しかし、代替法を採用するための基準も審査もなく、インセンティブもないことが、代替法が進まない要因です。 |
3.実験用に飼育された動物でないとデータは信頼できない? |
■「素姓のわからないネコやサルでの実験データ
は信頼できず、国際誌には掲載されない、という主張をする人々がいます。」
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□研究者自身がそう主張しているのです。ともあれ、一部の実験者は、ペットは個体差があるがゆえに実験に適していると主張していますが、一方別の研究者たちは、年齢、病歴、由来、嗜好、遺伝的特性等一切不明のペットを使用すると実験の条件が一致せず、実験結果も不統一となって、科学としての再現性が得られないと言っています。研究者たちは、自分の都合のいいところだけを主張しがちです。
ちなみに、実験者のアンケート調査によると、実験動物を選ぶ際の一番大きな要素の一つが「価格」でした。本当のところ、由来のわからない動物は単に安い、そして使い捨てにしやすい、というだけなのです。 |
4.野生動物や保健所に収容された動物は使用すべきでない? |
■「日本では大量の野生ザルが有害獣として捕獲され殺されています。殺処分される動物を使用することにより別途犠牲となる動物の数を減らすことができるので使うべきである、というのが私どもの考えで
す。」
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□野生動物の有害駆除は、農林業被害などの対策の一つとして行われているもので、被害がなくなれば駆除もなくなります。農林業被害に依存して研究材料を入手しようという意図は、日夜被害をなくそうとしている市民や行政、農家の気持ちを無視した自分勝手な考えです。それにまた、研究者自身、「肝炎、結核、B-virusなどの感染症が恐いので捕獲動物ではなくきちんとした繁殖施設で育ったクリーンな動物を使用したい」とも言っています。 |
■「保健所の収容動物についても、処分が決まっている動物を無為に殺さないという観点とその分犠牲
となる動物を減らすことができるという観点から、研究に用いてよいと考えます。近年、多くの自治体がイヌ・ネコの研究用払い下げを止めています。欧米では
払い下げが禁止されているというのが根拠とされているようです。」 |
□これは動物行政の現場を知らない人々の空論です。犬猫の収容施設ではパルボやジステンバーなどのウイルス汚染があり、従来から実験用に譲渡されても、実験以前に次々と死んでいたことを知らないのでしょうか(9割が実験以前に死亡していた時代もあった)。現在、犬の収容数は激減しており、実験に払い下げ可能な犬自体が少なくなっています。多くの自治体は、犬や猫の終生飼養の啓発普及という動物愛護行政の促進の観点から払い下げを廃止しています。 |
5.実験が重複し不必要な数の動物が使用されている? |
■「科学的事実が真理として確立するためには、特定の研究者の一回の実験だけ
では不十分で、さまざまな角度から、またさまざまな方法での追試が必要です。時には、同じ方法を用いて確認する必要も生じます。またすでに確立した事実で
も、教育上優れた実験は学生の実習などで実施されます。これらは必要な重複なのです。」
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□実験研究は常に仮説を立て、その確認作業として行われます。また、実験は、ある特定の条件で行われたことの特定の結果を示すものです。条件が異なればいくらでも異なる結果が出てくる可能性があるので、研究には際限がないということになります。しかし、そのような研究はすべて国民の税金や消費者の出すお金で支えられているわけですから、その研究の必要性を最後に判断するのは国民でなければなりません。 |
6.日本の動物実験は法規制がなく野放しである? |
■「日本も米国や欧州諸国と同様、法規によって動物実験を管理しています。ただ、法規の枠組み・規制方式は国によって様々で、それに
は文化、宗教、習慣などの違いが反映されていると思われます。類型的には、日本の方式は自主規制を主とした米国方式に類似します。」
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□日本には動物実験に関する法規はありません。法規とは、国民の意志を代表するはずの国会で定められた法律とそれにもとづく規則を言います。動物愛護法では、苦痛の軽減措置と実験終了後の安楽死処分を求めているだけですし、これに反しても罰則はありません。その他の基準や文部省の通知、各大学・研究機関の指針はガイドラインであって、法的強制力はありません。さらに動物実験(倫理)委員会は、すべて内部の実験関係者だけで構成され、何をどのように審査しているのかその基準もありません。これをもって日本にも欧米諸国と同様の法規があるとはとうてい言えません。
また日本は米国に近いといいますが、米国では連邦動物福祉法によって動物実験施設は登録制です。また同法に従って実験施設は委員会を設置しなければならず、その委員は研究機関とは無関係でかつ動物の福祉に関心をもつ一般社会を代弁する者を含まなければならないとしています。委員会は少なくとも半年に1回は査察を行ない、基準違反に対しては報告を行うことになっています。基準違反の場合は研究資金がうち切られることもあります。実験者や実験技術者は動物福祉や3Rに関する研修が義務付けられています。米国ではこれらが法律で定められており、日本とは明らかに異なります。
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7.残酷な実験が密室で行われている? |
■「ヒトの手術を密室で行われている残酷な措置だとか生体解剖とかと表現するでしょうか?研究者は動物を使用すると
き、ヒトの手術と同様に麻酔・鎮痛薬を投与し、十分な苦痛軽減の処置を行います。」
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□ヒトの治療はあくまで治癒を目的としていますが、実験動物に対する措置は研究ですから、実験措置そのものが苦痛を与え、しかも終了後は殺処分されるのです。麻酔・鎮痛剤は、動物を保定する必要上行われるものです。また、研究の内容によっては、麻酔・鎮痛剤を使わない実験の方がずっと多いのです。 |
8.霊長類は使用すべきでない? |
■「サルは身体の構造・機能がヒトに近いため、医学生命科学の研究にきわめて重要な役割を果たしています。エイズ、SARSや肝炎等
の感染症の病因解明、ワクチン開発等の治療・予防法の研究に霊長類は欠くことができません。また、高次脳機能の解明、その障害を引き起こす神経疾患・精神病の病因解明、治療・予防法の確立のためにも、サルを用いた研究の必要性はますます高まっています。」
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□サルは、生物進化の歴史から見れば人に極めて近い存在です。それゆえに身体的・精神的苦痛も人に極めて近い存在と推測されます。それにもかかわらず、人に近い福祉的配慮は何もなされていません。さらに、サル類はすべて絶滅のおそれのある野生動植物の取引を規制するワシントン条約の対象種となっています。地球的規模で保存がはかられるべき野生動物であって、一部の研究者だけの都合で好き勝手に利用できる存在ではないのです。 |
9.なぜ多様な動物種を使うのですか? |
■「問題に応じそれに適した動物種を用いて研究します。例えば、心臓・血管系の病気のメカニズムと治療の研究にはイヌ、ウサギ、ネコなどが用いられ、癌や感染症の研究にはマウス、ラット、ウサギ、サルなどが、神経系の研究にはラット、ネコ、サルなどが多く使われています。」
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□実験に使われる動物は、ペットや家畜など、人間と生活をともにしてきて慣れ親しみ扱いやすい動物であることが特徴です。それだけに一般の人にとっては、同情が高まるのは当然です。一度、実験者自身も、犬や猫を家庭で家族の一員として飼育し、それを自分の実験に供するという経験をしてみたら、どうでしょう。一般の人々の気持ちがいくらかは理解できるのではないでしょうか。 |
10.3Rとはどういう意味を持つのですか? |
■「Replacement(代替),
Reduction(削減),Refinement(実験精度向上)の頭文字です。Responsibility
(責任)または Review(審査)を加えて4つのRという概念も提唱されています。日本生理学会会員は実験者及び管理者の責任を重視し、動物実験(倫理)委員会の審査を受け、3Rの原則のもとに動物実験を行っています。」
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□動物実験(倫理)委員会は実験者を含めたすべて内部関係者で構成されています。また、どのような場合に、3Rをどのように採用するのかという基準が存在しないので、単なる言い訳にすぎないようです。3Rの実施基準を学会自ら定め、それを公表すべきでしょう。 |
日本生理学会からの訴え
1.動物実験反対運動に対する見解
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■「動物実験に反対する多くの人々は、必要な医療は受けたいし肉も食べたいが、実験に使用される動物がかわいそうだから実験は止めて欲しい、という考えであると思います。しかし、その願いは両立しません。」
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□なんだか勝手に決めつけていますね。私たちが動物実験に批判的であるのは、単に「動物が愛くるしくてかわいそうだから」という理由からではなく、人間が過剰に動物を利用し搾取し苦しめていることに対する自己反省から来ています。ですから、できるだけ不必要な医薬品や過剰な医療の介入を避けるような選択をしたいと望んでいます。また、現代の集約畜産が動物を苦しめるばかりか、BSEをはじめとする様々な疾病を引き起こしたり、穀物資源の乱費による世界の飢餓、環境破壊とも関連があることに気づいたからこそ、自分の健康管理のみならず動物の保護や環境保護に関心を持つのです。つまりは自分自身の健康や環境の保全を考えての理性的な生き方の選択でもあるのです。 |
■「未解決の難病は多く残っていますし、新しい病気も次々と出現しています。」
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□この数十年、医科学研究には莫大な国家予算が投じられていますが、それにもかかわらず、みるべき成果がなく、さらに次々と新しい病気が出現するというのはどうしたわけでしょう。実験研究のために国民は永久に莫大な税金を支払わなければならないということでしょうか。 |
■「動物の使用に際して、研究者が
動物の福祉を重んじ、優しく人間的に扱うべきことは言うまでもありません。当学会においても研究倫理委員会を中心に動物福祉の充実に努めていますが、実際に研究者がそう考え、行動していることは一般の方々に知っていただきたいと思います。」 |
□自分たちだけでどんなに主張していても、諸外国のような第三者による査察制度もない以上、懐疑的にならざるをえません。動物の生命よりは遙かに重いはずの人間の医療の場においてさえ、毎月のように全国で医療事故が続発し、何百件もが裁判で争われています。科学研究助成金(国民の税金)の不正使用もひんぱんに報じられています。口先だけのきれいごとではなく、具体的な事実をもって証明していただきたいものです。あらぬ疑いをかけられるくらいなら、むしろ、実験研究者自身が法規制を求め、自分たちは法律に基づいて適正に実験を行っていると主張した方がいいのかもしれません。 |
2.実験研究用動物の安定的確保 |
■「近年は研究使用への心情的抵抗を生み易
いイヌ、ネコ、サルなど中型実験動物の確保が危機的状況に陥っています。国民的合意のもとで、研究用動物が安定して確保できる体制を整える必要があります。最近、文部科学省がナショナルバイオリソース計画
を開始させ、生命科学研究に必要な実験動物の供給安定化の方策を打ち出したことは大変画期的なことであります。私どもはその成果を期待し見守るとともに、今後とも実験動物の供給安定化と動物実験の環境整備に一層努力し、これにより、子孫の健康を守るための基盤整備に寄与したいと思います。」
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□私たちが情報開示請求を行って得た犬や猫、サルの購入状況を見る限り、危機的状況にあるとはとうてい思えません。犬や猫については、売れ残りのペットを業者から購入していますし、サルについて動物園から譲渡・購入するなど、これらの動物を思うがままに入手し使用しています。その上さらに何十億円という国民の税金を投入して、ナショナル・バイオリソース・プロジェクトを進めるというわけですが、依然として研究者は、その実験の必要性について社会的合意形成の過程を経ることなく、好き勝手にやっています。「実験動物の供給安定化と動物実験の環境整備により、子孫の健康を守るための基盤整備に寄与」などというのは論理の飛躍もいいとこですが、まずそれほどの税金を使うだけの根拠と成果見込みを具体的数値で示していただきたいものです。 |
ともに考えて下さい |
■「動物実験の必要性や意義について、今後ともできる限り私どもの立場・考え方を説明していく所存です。動物の命を奪うことの是非を問うわけですからどうしても感情が刺激されます。しかし、動物の犠牲の上に生きるという人類の業に思いをはせた時、国民の皆様も、人間と動物の関わりについてご意見を持っていただきた
いと思います。私どもはこの問題について皆様とともに考えていきたいと思っております。」
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□ヒトは動物の犠牲の上に生きているばかりの存在ではなく、動物と助け合って共に生きていきたいと願う存在でもあります。研究者がそれだけ膨大な数の動物の生命を犠牲にする以上は、それを上回る公益(国民全体の利益と幸福)にどれだけ寄与しているかを、抽象的な言葉ではなく、それこそ具体的なデータで示さなければ、説得力をもちません。
動物実験の問題は、私たちも研究者の方々とともに考えていきたいと思いますが、この社会は、研究者、専門家ばかりで構成されているのではない以上、まず、議論の前提として、どこで、どのような実験が、どれだけの動物の種や数を使って、どれほどのお金をかけて行われているのか、具体的なデータを出すべきです。実験研究者自身が把握していないことを、一般の市民に理解してもらおうというのは困難ではないでしょうか。 |