Q5
クローン羊が話題となっています。クローン動物を作る技術が確立すれば、研究の精度が上がり、動物実験の数も減るという言い方もされていますが、どうでしょうか?
A5
クローン動物は、「材料としての質」が均一化されますので、データのばらつきが少なくなることが期待できます。したがって、1回の実験に消費される動物の数を削減する効果はあるかもしれません。しかし、実施される実験の数が増えればそれまでのことですし、動物実験が抱える問題を本質的に解決していくことにはなりません。
それ以上にこのクローンを初めとする遺伝子工学は現在の私達に大きな問題を投げかけています。先走る科学技術と倫理観の欠如、このアンバランスな状態は、地球が永遠に近い歳月をかけて作り上げてきた生態系を根本から破壊してしまう危険性を秘めています。不自然な生命、生物に対して「おかしい」と感じる感覚を呼び覚ますため、私達エコロジー団体が担う役割はますますその重要性を高めていると思います。
クローン羊が誕生したニュースが報じられると欧米各国は相次ぎその技術を人間に応用することを禁じる声明を発表しました。日本でもマスコミが大きく取り上げ、連日テレビや新聞、雑誌で特集が組まれたことは会員の皆様もよくご存知のことと思います。それらの内容はいずれも動物実験はまだしも、人間への適用は許されないという点で一致していました。人間への応用は現実的なニーズやメリットが見つけだしにくく、人間への適応は考えられないとする楽観的な主張が主流で、実験者の暴走に懸念する意見はほとんど耳にすることができなかったように思います。しかし、本当にそのように楽観できることなのでしょうか。
研究者を動かす動機は必要かあるいは不必要かといった需要、ニーズよりも、研究者1人1人の好奇心、欲求、探求心である場合が多いようです。すなわち、有用であるかないか、学問的に意味があり医学や科学的な評価が期待できるかというよりも、現実には研究者の好奇心で実験は行われているということです。
すでに、遺伝子組み替え食品という不自然なものが私達の食卓にも登るようになりました。これ以上、不自然な生活、なにかが狂っている生活を広げないために、一般市民が明確な姿勢を示す時期に来たと思います。