Q9
公設収容所からの動物実験への払い下げについてはどのように考えますか。
A9
研究者の多くは、ペットとして飼われていたことのある動物たちを実験材料として好みます。かれらは人間に慣れていて、扱いやすく、害を加えられてもかみつくことが比較的少ないからです。しかし、公設収容所の動物は、年齢も、遺伝的構成も、過去の病歴も通常わかっていません。これらの重要な変数を無視すれば実験の妥当性はすっかり損なわれてしまいますし、そのような経歴不詳の対象を研究することは人間の臨床研究であれば許されないことです。
実験に用いられる動物はすべてそうなのですが、公設収容所の動物は監禁されたり身体を傷つけられたりしてストレスを受けており、これが実験結果に混乱を与えます。
ストレスの影響を、研究対象としている病気のプロセスによる影響から識別することはできません。さらに、人為的に引き起こされた動物の病態と人間の病気との間には、意味のある関連性は殆どありません。ですから、公設収容所の動物を使うか、それとも実験用に繁殖した動物を用いるかという問題は、科学的に見て意味を持つ議論ではないのです。どちらの種類の動物から引き出されたデータも、概して人間には無関係なのですから。ただし公設収容所の動物を使うと、科学的妥当性の欠如がより目立つというだけです。