Q10
動物モデルが本当にそんなに不適当なものならば、研究者たちはなぜ動物モデルを使いつづけるのですか。
A10
「業績を発表するか、それとも研究者生命を失うか」というアカデミズムの世
界では、動物実験は比較的早く結果が出て、簡単にできるので魅力的なものなのです。既存の動物モデルを用いて一つか二つの変数を変え、論文を書き上げるのは容易です。こうして研究者たちは、重要な科学的問題を提起したり公衆衛生上の問題にとりくまなくても、論文を発表して出世することができるのです。
また、研究者たちは、動物モデルを用いてほとんどあらゆることを、“証明”することができます。多くの動物種を使って、ほとんど無限の変数を操作することができるので、多種多様の“科学的証拠”を提示できるわけです。たとえば、資金の提供者が誰であるかに応じて、タバコが癌を引き起こすということも、タバコが癌を引き起こさないということもどちらも科学者は“証明”してきました。
研究者が変数をコントロールするのは臨床研究の場合よりも実験室の方が容易ですが、しかし人間から引き出したデータでなければ、それがどれだけ“正確”であるかは、結局関係ありません。
長い伝統があることもあって、動物実験には容易に資金助成が与えられます。大学の研究者たちに助成金を獲得するようにプレッシャーをかけることが意図されている制度においては、給料が助成金の額とリンクされていることがしばしばです。その結果、正当で有益なデータの探求よりも、むしろ資金の獲得が研究者たちの主要な関心事となるのです。