動物を使った毒性試験はきわめて信頼性の乏しいものです。その理由として、人間と人間以外の動物の間の代謝上の違いや生理学的な違い、異なる種に投薬量を外挿する(当てはめる)ことの不確実性、人間に起きる副作用の多くを動物実験では予見できないということ、などがあげられます。動物を用いた毒性試験で得られたデータが臨床において関連性を持つと考えにくいということは医学文献にくり返し記述されてきました。毒性試験における多くの近代的な技術ははるかに正確なものなのですが、残念なことに古い習慣とはなかなかすたれないものです。動物実験データは決して信頼性をもって人間に適用することはできないものですが、担当行政機関は製薬会社が多くの動物実験を行なうことを現在も義務づけています。
しかしながら、米国の国立癌研究所(NCI)は抗癌剤の候補となる物質をスクリーニング(ふるい分け)する方法としてマウスによるバイオアツセイ(生物検定)を使っていましたが、それを人間のさまざまな癌細胞の組織培養を用いた一連のテストに変更しました。多くのイン・ビトロ(細胞および組織培養)テストが、動物実験よりも反応が強く正確で効率的であることがわかってきています。イン・ビトロのスクリーニングと組み合わせれば、医薬品の市販後監視(PMS)によって予期せざる副作用も迅速に検出することができるでしょう。このような効率的な医薬品監視システムがもし1960年代に存在していたならば、サリドマイドが先天異常を起こすことは、2〜3の症例が出た時点でわかっていたことでしょう。