6.化粧品の選びかた
-薬事法と効用表示について
前回は、化粧品やトイレタリ−製品の「成分表示」に関して、消費者の方々には“無添加”“自然派”といった曖昧なイメ−ジ商法に惑わされることなく、使用されている全成分を確かめて製品選びをしていただきたい事、そのためには、是非とも「全成分表示」の義務付けを求めていく必要があることをご説明いたしました。引き続き今回は、「成分以外の表示」について書かせていただきます。
化粧品やトイレタリ−(石鹸、シャンプ−、整髪料、浴用剤、はみがき粉等)の製造が、「薬事法」上の承認、許可制度によって規制されているものであることはこれまでも述べてきた通りですが、消費者が製品を選択するための情報として、一番身近な問題でもある「表示」についても、「薬事法」によって詳細なル−ルが取り決められています。
前回取り上げた「表示指定成分」もそのひとつですが、この他、容器やパッケ−ジに必ず明記しなければならない事項として「製造業者又は輸入販売業者の氏名、名称と住所」「(承認、許可を受けた)販売名」「製造番号又は記号」「厚生大臣の指定する化粧品にあってはその使用期限」があります。同様に「内容量」等は、厚生省令に基づいて記載が定められています。
また、口紅、シャンプ−等、種類別名称の表示だけでその製品の使用方法が理解される製品以外には「用法・用量」記載が必要とされていますし、「使用上の注意」の記載については薬事法第62条に定められており、日本化粧品工業連合会作成の表示に関する自主基準に準じて表示を行わなければならないというル−ルもあります。ですから、飲用にしてよいようなヘチマ水(市販のヘチマ水には色素緑色何号などを添加したものもありますので誤解なきよう!)であっても、化粧水として販売する場合には「使用中、使用後に異常の現れた場合にはただちに使用を中止し……」といった文言を記載する必要があります。以前に、「アプリコットさんの製品には“異常が出たら専門医に相談することをお勧めします”という注意表示があるから余程危ない成分を使っているに違いない。私の使っている手作り化粧水は安全だから注意書きなんてないですよ」という貴重なご意見を賜ったことがあり、このような誤解も「薬事法」が消費者に認知されずに空回りしていることの現れであると考えさせられました。消費者に使用成分も知らされない市販の化粧水に比べれば、「注意表示」記載義務を怠った手作り化粧水を非難する気にもなれませんでしたが、このように形骸化した薬事法の規制の中で、命を落とさなければならない動物たちがいることを思うと本当にやりきれない気持ちになります。
また、消費者が一番関心をもって見る情報である「効能・効果」については、薬事法第60条や薬務局長通知により、種類別に記載してもよい効能・効果の範囲が限定されています。
一例として、「クリ−ム、乳液、ハンドクリ−ム、化粧用油」について記載が認められている効用は、「肌荒れ、あせも、しもやけ、ひび、あかぎれ、にきびを防ぐ。剃刀まけ、日やけによるしみ、そばかすを防ぐ。肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ」です。つまり、これ以外の効用をうたうことは「薬事法」に違反することになります。また、化粧品自体への記載ばかりでなく、広告についても薬事法第66条と医薬品等適正広告基準とによって「効能・効果の範囲」が規制されています。これらの表現について第66条は、『明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない』としています。
新聞、雑誌、折り込み広告、テレビCM、ポスタ−、DM等、その広告を目にしない日はないという程、化粧品業界は広告費を惜しまない業界でもあります。その中には「シワがとれる」「シミが消え肌が若返った!」「夢の化粧品として特許認可を受けました」等々、多分皆さんも目にしていらっしゃるでしょう「明示的、暗示的」以上の表現が大手を振って横行しています。
薬事法の存在さえ疑わしくなるようなこの現状、「言ったもの勝ち」が取り締まり切れないこの業界にあっては、薬事法を順守しているアプリコットのような会社は、相対的に地味な存在になってしまいます。
美しいイメ−ジ、派手な広告は、魅力的であるかも知れませんが、その高い広告費は消費者自らが負担させられているものです。自分が支払う高価な化粧品代で、自身が騙されたり、使用成分も知らされずに化粧品被害に苦しんだり、動物実験の費用までが賄われている事実をしっかり見据えられる賢い消費者がひとりでも増えていくことを願います。
|