5.化粧品の選びかた
-薬事法と成分表示について
「○○○メ−カ−のクリ−ムを使ったら顔が腫れあがるくらいかぶれ、友人から勧められた自然派化粧品の△△△メ−カ−のセットを何万円分も買って切り替えたが、かぶれた皮膚にピリピリ滲みて使えなかった。無添加化粧品の×××メ−カ−のものでも合わなかったが、アプリコットさんの化粧品は大丈夫か?」というような問い合わせの電話がよくあります。
相談者は、自分が、何の成分に対して異常反応を起こすのか判らないまま、あちらの化粧品、こちらの化粧品と渡り歩いて、さらに症状を悪化させているのです。このケ−スのように、既に発症している場合には、とりあえず全ての化粧品の使用を止め(表皮のプロテクト機能が低下している時は、石鹸のアルカリですら刺激性を増す)、症状の鎮静化を待つと共に、原因物質を特定し、以後、その成分の配合された製品を避けるようにすべきなのです。
メ−カ−名を挙げ連ねて相談されても、その製品にどんな成分が使用されているか、弊社でも知る術がないので、原因物質を特定することができません。化粧品メ−カ−各社が使用全成分の表示をしていれば、少なくとも、異常反応が発症した場合に共通する原因物質を特定し、その成分を避けることができるのです。
1980年に厚生省が定めた「表示指定成分」とは、アレルギ−等の接触性皮膚炎を起こす恐れがあるとして製品に表示の義務付けられた化粧品原料です。
一方、化粧品被害に占める原料ワ−スト順位は、1位が香料で50.6%、2位が色素で43.9%、防腐剤・殺菌剤4.9%と続いています。このうち、色素の黄色204号と赤色225号、赤色219号の3つで全体の3割を越えるというデ−タもあります。
これだけ問題が多いにも関わらず、「表示指定成分」の中では83種もの色素が「タ−ル色素」として、5000種もある香料についても「香料」という1品目扱いの表示でしか表されないことも改善すべき点でしょう。
また「表示指定成分」としては、ポピュラ−でよく使用される防腐剤のパラベンを例にとりますと、
「1970年に米国で、皮膚科に来診する接触性皮膚炎患者の0.8%がパラベンアレルギ−であった」あるいは、「病院など32施設のパッチテストでは、パラベンの一種、パラオキシ安息香酸ベンチルエステルで763人中2人
(0.26%)、パラオキシ安息香酸プロピルエステルでは763人中1人 (0.13%)が陽性であった」(日本接触性皮膚炎学会研究班・研究92年)等の報告があります。
しかし、これら表示指定成分以外のものでも、それ以上の比率で、接触性皮膚炎等を起こす恐れのある成分は数多くあるのです。前号でも記述した通り、純粋な植物抽出成分なども例外ではありません。オリ−ブオイルでアレルギ−を起こす方の意外に多いことは既に知られていますし、エッセンシャルオイルの中には光毒性をもつものがあり、外出時に使用してはいけないことも常識となっています。また、紅花の色素に対してアレルギ−を起こす方のいることも聞いています。純粋な植物抽出成分でも、このように、接触性皮膚炎やアレルギ−反応を示すことは少なくなく、ましてや、表示指定成分逃れの、これまで人間が使ったことのないような新規の化学合成物が引き起こす異常反応や、それら「非表示指定成分」の種類数からいっても「100品目の表示指定成分」以上に起こり得る可能性は高いといえるでしょう。
消費者団体などから「全成分表示」要求の声が上がって久しいのに、薬事法の改善についてはいまだに「全成分表示」を誘導する通達も講じられていません。動物の命を犠牲にしてまで「安全性」の確認を意図している「厚生省」「薬事法」であるはずなのに、あまりにも片手落ちな規制と言わざるを得ません。
同じ厚生省の管理下にある「食品衛生法」では、消費者が当然知るべき権利として、添加物(天然成分も含む)の全成分表示が義務付けられ、また米国では化粧品について全成分表示がなされていることと比べ、日本の薬事法はあまりにもメ−カ−のご都合主義に偏っていると思われます。
動物実験が、次々開発される化学合成品の免罪符になってしまっているのと同様、「表示指定成分」を隠れ蓑に、それ以上に安全性も定かでない新しい成分を使った『無添加化粧品』が、大手を振って市場を闊歩してしまっていることが、消費者をますます深い混迷の縁に投げ込んでしまっているのです。
アプリコットは、全成分を表記することはメ−カ−として最低限の義務であると考え、設立の当初から全ての製品について全成分表記を徹底しています。そのため、他社メ−カ−と比べて添加物が多く使用されているという印象を受けることもありますが、『無添加』や『自然派』を強調している製品ほど多様な成分が含まれ、そのごく一部の成分しか表示していないことを知って頂きたいと思います。
また、消費者にとっても全成分が確認できれば安全性の選択も可能となりますので、ぜひ化粧品の成分についても関心を持ってお選びになることをお勧めします。
残念ながら、市場のシェアを占める多くの化粧品は、巨大なイメージ広告により氾濫している虚偽化粧品がほとんどで、現実的な成分表示に関して誠実であろうとする数社の小規模な宣伝力が及ばないのが現状です。環境面からも安全で害の少ない製品を求める声が増えて欲しいものです。
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