3.動物の犠牲をなくすために私たちにできること
動物の犠牲のないライフスタイルを実現するために、わたしたちにできることのひとつとして、化粧品を選ぶ時に確かめていただきたい点、していただきたい事を下記に挙げさせていただきます。
動物実験をしている化粧品メーカーの製品は買わない。
化粧品開発に関わる動物実験を廃止するためには、動物実験をしている化粧品メーカーの製品を買わないこと、そして、その不買の意思をメーカーや関係省庁、関係団体に伝え、消費者の多くが動物実験をしている製品は使いたくないと考えていることを理解してもらう必要があります。
化粧品の新規成分開発に関わる動物実験は、薬事法とこれを補足するガイドラインによって義務づけられています。以前、野上さんたちと厚生省、化粧品工業連合会、各メーカーに対し、動物実験の廃止を求める要望書を出し、面会に行ったことがありました。
化粧品工業連合会や動物実験を行っている大手メーカーからは、申し合わせたように同じ答えが帰ってきました。「われわれも動物実験をしたくはないが(お金もかかるし、と本音をもらすメーカーもありました)、薬事法で義務づけられているのだから仕方がない」というものです。そして、「新規成分の開発をやめれば動物実験の必要は無いでしょう?」という質問に対しては、「それはできません。新製品の開発は消費者の皆様からの要望ですから」という返答です。本当に消費者が、安全性(=危険性)も定かでない新規化学合成物を自ら望んで使用したいと考えているでしょうか?その形だけのデータづくりの為に、多くの動物たちが苦しみながら死んでいく事実を知っても、なお無駄な動物実験を望むでしょうか?
また、厚生省の返答も、化粧品メーカーのいうところの”消費者からの要望”と同様、「動物実験を充分に行って、安全性を確認するようにという市民からの要望の方が、あなた方の”動物実験を廃止してほしい”という要望よりも大きい。行政は、民主主義、多数決で決定されるのだから動物実験は廃止できない」というものでした。この申し入れは、7、8年前のことでしたので、海外の動物実験廃止動向も顕著になってきている現在では消費者団体の方たちの中でも動物実験批判が明確になってきておりますし、市民の要望を本気で聞いてくださるつもりがあるならば厚生省はすぐにでも形骸化した動物実験を止めるべきでしょう。
動物の生体抽出成分を使用していないメーカーの製品を選ぶ。
では、動物実験をしていない化粧品メーカーの製品であれば、生命の犠牲はないかというと、ここにももうひとつ確かめてもらいたい点があります。それは、化粧品の原料として動物の生体抽出成分が使われているかどうかということです。
国内で約900社ある化粧品メーカーのうち、動物実験をしていない会社が9割以上であることは、前の章で述べましたが、それらが動物の生命を尊ぶ姿勢からであるか、単に経済的な理由によるものかは判断できず、「動物実験をしていない」からといって「動物の生体抽出成分を使用していない」ことにはなりません。動物実験はしていなくとも、(動物を殺すことによってできる)生体抽出成分を無造作に使用している場合も多くあります。
馬油や石鹸等の原料として用いられてきた牛脂をはじめ、「天然」のスクワラン(深海に棲むアイザメの肝臓の脂)やヒアルロン酸(天然のものは鶏のトサカから抽出)等々、動物を殺して作り出される化粧品原料は数え切れないほど多くあります。プラセンタエキス(牛の胎盤から抽出)にいたっては、海外で人の胎盤が使用されている事実が指摘され、中絶胎児密売スキャンダルにまで及び、新聞報道でも取り上げられてきました。
さらに問題なのは、このような生体成分配合の有無が、製品に表記されていないこともあり得ることです。上記のような成分名が製品や広告に書かれていれば、これを避けたり、メーカーに問い合わせる事も可能ですが、全く表記が無い場合、あるいは「プラセチン」「ミトプラゾール」「アラセントール」(いずれもプラセンタエキスのこと)のように特異なネーミングがなされてしまっている場合には、消費者にはそれが生体成分であるかどうかさえ判断がつきません。
この成分表示の曖昧さは、薬事法に定められた表示義務が、7000種ある原料数のほんの1.5%にも満たない「表示指定成分だけ」ということに起因しています。
動物実験まで義務づけておきながら、使用成分は表示しなくてもよいという薬事法は、あまりにもメーカーのご都合主義に偏り過ぎているように思われ、厚生省と化粧品業界界隈に黒い癒着の匂いが漂っているようにさえ感じられます。
昨今、遺伝子組み替え食品が私たちの身近に販売されることに対し、消費者団体による批判の声により、表示の義務づけが進められていますが、化粧品に関しても同様、消費者が安全な化粧品を選ぶためにも明確な表記義務が唯一の手がかりでもありますので、賢い消費者として、現在の薬事法の曖昧な実態を知り、行政や企業に追及していくことが大事です。
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