【オーストラリア】
病気を「発明」する製薬会社
BBC News 2006年4月11日
AVA-net 海外 ニュース No.119 2006.7-8
翻訳:宮路正子
オーストラリア、ニューキャッスル大学の研究者デヴィッド・ヘンリーとレイ・モイニハンは、Public Library of Science Medicine(PLoS Medicine: www.plosmedicine.org)誌に、製薬会社が、病気捏造(disease-mongering)というやり方で、ありもしない病気を宣伝し、さしたる問題でもないことを誇張して薬の売り上げを伸ばし、更年期の症状などを治療の必要な疾病としたことで人々を危険に晒しているという内容の論文を発表した。
「病気捏造」とは、疾病の販売促進であり、疾病の範囲を拡大し、治療薬や治療法を販売・提供する人間のために市場を広げるものだ。
論文は、「病気捏造」の例として、米国人女性の43パーセントが性機能不全であると信じ込ませようとしたり、高コレステロール値や骨粗しょう症などの危険要因にすぎないものを疾病扱いしたり、多くの人に下肢静止不能症候群(むずむず足症候群)のような実際には稀な症状であるという診断を下したり、過敏性腸症候群のようなごく軽い問題を深刻なもののように扱ったりする、などの事例をあげている。
キャンペーン
病気捏造の最も明確な例は、疾病に対する意識を高めるために製薬業界が出資するキャンペーンだ。これらのキャンペーンは、疾病予防や健康維持についての意識を高めたり、情報や知識を提供するというより、薬を販売するために企画されているとして、論文は、医師、患者、支援団体に製薬業界のマーケティング戦術に注意し、製薬業界がさまざまな症状をどのような「疾病」として扱っているかについてより詳しい調査をするべきだと呼びかけている。
保健衛生の専門家や健康推進団体の動機は、自己の経済的利益ではなく患者の福祉だろうが、この動機が製薬業界のマーケティングにうまく利用されることがあまりにも頻繁にあるようだ。病気捏造におけるさまざまな立場の人間の異なる動機を識別することが、この現象に対するより良い理解に向けた主要なステップとなるだろうという。
しかし、英国製薬産業協会(ABPI)のリチャード・レイは、この研究はアメリカを中心に行われており、アメリカでは、製薬業界がその製品を一般に販売促進することが比較的自由に行うことができるが、イギリスでは広告の出し方もはるかに厳しく制限されているので、これをこのまま当てはめるのは間違っているし、患者をどのように治療するかを決めるのは医師であり、製薬業界にはどうこうしろと言うことはできないので、業界が病気を「発明」するという表現も正しくない、と反駁している。
BBC News
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4898488.stm
病気捏造に関する論文を掲載してあるサイト
http://collections.plos.org/diseasemongering-2006.php
A Collection of Articles on Disease Mongering in PLoSMedicine
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