アメリカ医学会誌 (JAMA (2003;289:454-65)に掲載された記事によると、2000年のアメリカにおける生物医学の研究の62%は企業が資金提供を行ったものだが、これは、1980年と比較するとほぼ2倍にあたる。一方、政府からの助成金は減少している。学術研究者の4分の1は企業と何らかの関わりがあり、これが研究や論文に影響を与えている可能性があるという。
この記事はエール大学医学大学院のチームがまとめたもので、企業、研究者、学術機関の財政関係について独自のデータを加えて、これまでに発表された37の研究の評論を行っている。1980年にバイ・ドール法(連邦政府支援による大学における研究及び開発から生じた発明の権利を大学側に帰属させることを定めた法律)が成立して以来、企業と大学の協力関係は強まった。1996年には、生命科学関連企業の92%が学術研究を支援している。
チームが引用した1999年の研究によると、米国やカナダの研究機関の68%がその機関で行なわれる研究に出資した企業の株に投資していたという。これは重要な財源だった。
研究によれば、学術研究者の23%から28%が企業からの資金提供を受け、43%がバイオマテリアルや任意に使える資金といったものを受け取っていることが分かった。また、3分の1は、スポンサーの企業と個人的に財政的なつながりを持っていた。これには講演、コンサルティング, 諮問委員会の委員職、そして企業への投資が含まれる。
企業に資金提供を受けている研究はその企業に有利な結論を出す可能性がある。企業が資金提供をした非ステロイド抗炎症剤の61の治験では、比較薬がスポンサー企業の薬より優秀だと判断されたものはひとつもなかった。
チームのリーダー、ケアリー・グロス博士は、企業の資金提供による治験においてスポンサーに有利な結果が出る可能性が3通りあるという。まず、治験する薬を他の治療やプラセボ(偽薬)と比較しない、あるいは比較薬よりスポンサーの薬の使用量を多くする、またはよく吸収されなかった比較薬とスポンサーのよく吸収された薬のデータを比較することだ。また、肯定的な結果のほうが否定なものより公表される頻度が高い。そして企業の支援は、基礎科学から臨床適用の研究へと移行する傾向もある。
企業の資金提供を受けている研究者のうち58%は研究結果を最低6か月間 (大抵はスポンサーが特許を申請している期間)機密にすることを要求され、企業が研究結果を市場に出す間、研究発表を遅らせる研究者もいると考えられる。また、研究データすべてにはアクセスを与えられていない研究者もいた。
研究者がスポンサー企業の株を所有したり、コンサルタントとして仕事をすること、あるいは職務に就いていることに関して何らかのポリシーを持っている学術機関はほとんどなかった。また、相反する利益に関するポリシーを持つジャーナルは半分もなかった。