アメリカ州法 連載・2
教育における代替法:生徒の選択権
AVA-net News No.111 (2005.3-4)
翻訳:宮路正子
アメリカでの教育における動物実験代替法を定めた州法の紹介、第2回目。
(ペンシルバニア、ニューヨーク、ロードアイランドの各州法)
24編 教育
(続く)
1章 公立学校法1949
15条 学期と教科
(B) 指定教科および指令
15-1523 生徒の拒否権;動物の解剖
(a) 公立その他の学校の、幼稚園から第12学年までの生徒は、授業の一環として動物の死体解剖、生体解剖、(卵の)孵化、捕獲、その他の動物を傷つける、あるいは殺す、またはその一部を傷つけるような行為を拒否することができる。
(b) 学校は、新入生・編入生とその親あるいは後見人に、動物を傷つける、あるいは殺すような授業を受けることを拒否する権利があることを通告しなければならず、このような授業を受けることを拒否する生徒の権利を、親あるいは後見人が主張する権限を認めなければならない。通告は動物の使用を含む授業が予定されている3週間前までに与えられなければならない。
(c) 本項に該当する実習授業を受けない、あるいはそこでの観察を行わない生徒には、実習によって修得を要求される知識、情報、経験を得られる代替教育プロジェクトを提供しなければならない。試験が動物を傷つける、あるいは殺すことを要求するものである場合、生徒には代替試験を提供しなければならない。生徒は、本章で生徒に与えられる権利を行使して選択を行ったことを理由に差別されてはならず、生徒が代替教育プロジェクトを選択したことにより成績を下げることは、これを硬く禁ずる。
(d) 以下の語句は、本項においては本号の定義で使用される。
(1)「代替教育プロジェクト」には、当該教科課程が要求する知識、情報、あるいは経験を習得するための代替手段を提供するビデオ、モデル、映像、本、およびコンピューターの使用が含まれるがこれに限定されない。また、「代替教育プロジェクト」には「代替試験」も含まれる。生徒には、動物あるいはその一部を傷つけることを含む、あるいは必要とするいかなる代替教育プロジェクトあるいは試験を拒否する権利がある。
(2)「動物」とは、動物界脊索動物門に属する生きた有機体、すなわち脊索を持つ有機体すべてを意味する。この用語には、動物の死体あるいは切り離されたその一部も含まれる。
(3)「生徒」とは、幼稚園からまでの教育機関で授業を受ける21歳以下の者を指す。生徒の権利を主張し、本項に従っていかなる通告あるいは応答を受け取るために、この用語には、教育機関へ入学した未成年者の親あるいは後見人も含むものとする。
教育 17条
特定項目に関する指令
809項 動物の人道的扱いに関する指令
1. 教育委員会から授業科目の規定を委任された担当官は、州立、または州政府の助成金を受けているすべての小学校において、動物の人道的扱いと保護、動物が自然界の秩序の中で果たす重要な役割、また遺棄され、非常に残酷な状態に苦しむ動物を生み出さないためにその繁殖をコントロールする必要性に関する授業が行われるようにしなければならない。この授業は、毎学年度中、教育評議委員会が定める期間行い、文学、読書、言語、自然研究、民俗学の授業と併合することもできる。授業は週に2回、あるいはそれ以上に分けて行うことができる。
本項条項に該当するいずれかの学校において、あるいはいずれかの学校教科における出席に関して、本項の指令条項が実施されない場合、学区には公的助成金を受ける資格がないものとする。
2. 生きた動物の研究と飼養。研究用に動物を飼養する、あるいは使用する学校は、それぞれの動物に次のことを与えなければならない:適切な居住空間、種の正常な行動や姿勢を保つために必要なスペース、適切な換気、照明、および温度調節、適切な食物および清潔な飲料水。また居住空間は定期的に清掃し、不適当なストレスや妨害が最小限に抑えられる場所に設置されなければならない。
3. 適用。本項の条項は、畜産の通常業務に関する職業訓練を禁ずる、あるいは規制する、または環境保全部が定める環境教育活動の授業を禁ずる、あるいは規制するものではない。
4. 動物の解剖。倫理上、あるいは宗教上の理由で、動物、あるいはその一部の解剖を行うこと、あるいは解剖の観察することを拒否すると意思表示した生徒は、担当教師が認めた代替プロジェクトを行い、終了することができる。しかし、動物の解剖を拒否する場合には、生徒の親、あるいは法定後見人が書面でこれを確認しなければならない。動物の解剖を行わない、あるいは観察せず、代替プロジェクトを選択する生徒に処罰を与えることはしてはならない。
5. 生きた脊椎動物の扱い。
a.本号で定められているものを除き、学区、校長、理事、あるいは教師は、学校内、あるいは学校の敷地内外を問わずいかなる学校関連の活動において、以下に挙げるもの・方法を用いる生きた脊椎動物を使用した授業、あるいは実習を要請、あるいは許可してはならない。
(i) 人間や動物の疾病を引き起こす微生物、
(ii) 電離放射線、
(iii) 発ガン物質と認識されている物質、
(iv) 有毒化学物質、
(v) 苦痛や身体的変形を引き起こす薬品、
(vi) 極端な高(低)温、
(vii) 電気などによるショック、
(viii) 過度の騒音、
(ix) 有毒ガス、
(x) 極度の疲労を招く運動、
(xi) 動物を過密状態に置くこと、
(xii) 筋弛緩剤などで麻痺状態にすること、
(xiii) 食物、水、その他の必要栄養物を与えない、あるいは過度に与えること、
(xiv) 外科などの侵襲的処置、
(xv) その他の極端な刺激、または
(xvi) 命を奪うこと。
b. 本項の規定に反する内容であっても、教育委員は、書面によるプログラム計画が提出された場合、当該校へ次の条件に従い、生徒に書面による制限の免除を出すことができる:
(i) 学生が10学年、11学年、12学年生の場合;かつ、
(ii) 学生が、科学教諭の免許を持つひとり以上の教師の監督下に置かれる場合;かつ、
(iii) 学生が、州あるいは国のAPテストの受験準備をするために、教育委員が定義するところの科学の強化コースを受ける場合。
教育委員は上記に該当する生徒の指導を行う科学教諭の免許を持つ教師に制限の免除を与えなければならない。プログラム計画は書面で次のものを含むが、これに限定されない。
(i) 免除を求める教育的根拠;
(ii) 授業あるいは実習の目的;
(iii) 使用する方法および技術;かつ
(iv)教育委員が要求するその他の情報
6. 報告書。本修正項発効日より、毎年1月1日までに、教育委員は、知事および立法部に報告書を提出するものとする。報告書は、学校から提出されたプログラム計画申請書の数、そのうち教育委員が承認した申請書の数、を含むがこれに限定されない。教育委員が承認したプログラム計画申請書については、教育委員の提出する年次報告書に追加し、その一部とする。
16編 教育
16-22章 教科課程
16-22-20節 動物の死体解剖と生体解剖
−拒否権−代替学習プロジェクト提供の義務
(a)公立私立の小中学校に通ういかなる生徒の親あるいは法定後見人は、生徒が脊髄動物・無脊髄動物、あるいはその身体の一部を死体解剖、あるいは生体解剖を行うことを拒否することができる。
(b)死体解剖あるいは生体解剖を学習活動の一環として行う学校は、生徒がその活動へ参加することを親あるいは法定後見人が拒否する場合、解剖によって学習する内容を、代替法を通して能力を示すことを可能にするようにしなければならない。
代替教材および代替法には次のものが含まれるが、これに限定されない:ビデオ、モデル、映像、コンピューター・プログラム、粘土細工、スライド。
(c)教師は、生徒の親あるいは法定後見人が代替教育プロジェクトを選択し、生徒が死体解剖あるいは生体解剖に参加しないことを理由に生徒を差別したり成績を下げたりしてはならない。
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