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本の紹介

動物と共に生きる

AVA−net News No134


アメリカ動物診療記

西山ゆう子著
駒草出版 2000円+税

 
 アメリカでは2〜30年前までは年間2000万匹のも犬猫が殺処分されていると言われ
ていました。これが社会問題であると認識されるようになり、地域の行政、獣医師、 愛護団体が連携して様々な対策に取り組んだ結果、現在殺処分数は激減しているとのことです。日本でも頭の痛いのら猫問題がありますが、増えたのら猫をいくら捕獲して殺処分しても、隣のコロニー(なわばり)から猫が移動してあっという間に増える という事実が判明したこと、また、不妊去勢手術をしてまた元の場所に放す方法(TNR)の有効性が、科学的にも統計的も実証されたことにより、このTNRが全米に普及し、のら猫の数も激減したとのことです。
 また、動物シェルターで健康な犬猫が殺処分される一方で、劣悪な環境で犬猫が過剰に繁殖させられペットショップで売られる現実が批判を受けるようになり、ペットを生体販売する店も激減したと言います。
 悪質業者や動物虐待にはアニマルポリスが出動して、保護された動物を受け入れるシェルターがたくさんあることなど、日本でも見習うべき多くの対策が、本書で紹介されています。
 文化も言語も異なる異国で、獣医師として、女性として、2児の母として、様々な困難を乗り越えて活躍している人の活動記としてもたいへん心打たれます。

AVA−net News No134


Rescue!(レスキュー)
エリザベス・オリバーの動物シェルター

ブックマン社  2000円+税

 先日、オリバーさんからARKの活動を紹介するこの美しい写真集をいただきました。写真のなかの穏やかな目をした動物たちを見て、改めて1992年の出来事を思い出しました。この年、奈良県の天理市でひとり暮らしの老人が200頭もの犬と猫を多頭飼育し、その多くを餓死・衰弱死させていたことが判明したのです。ARKでは現場の悲惨な写真を絵はがきにして国内外に配布。犬たちの救出を求める多数の声が、英国の日本大使館、奈良県知事や総理府等に寄せられ、ついに県が救出活動に乗り出し、犬たちは地獄の状態から救出されました。
 ARKで今は穏やかな日々を過ごしている動物たちのすべては、かつて虐待されたり、捨てられたり、世話をされずに放置されていた不幸な過去を背負っています。その数は現在450匹にも達するとのこと、それらの動物たちを受け入れ、世話をして、新しい飼い主に手渡すという活動には限りがありません。
 英国から来られて日本の動物たちを長年に渡り助けてくださっていることに心から感謝したいと思います。そして、シェルターで保護できる動物は日本全国の同じような運命の動物たちのごく一部でしかないことを痛感し、社会への啓発普及活動や法律の改正などを、今後とも共に働きかけていきたいと思います。

AVA−net News No.128


私、獣医になります! −アメリカ動物病院記

井上夕香著 ポプラ社 1200円

 日本で獣医師になるのもたいへんなのに、この本の主人公シューコさんはアメリカで獣医大学に通い、さまざまな困難を乗り越えて獣医師となりました。動物救急病院ほか各地の動物病院に勤務し、野生動物や虐待されたた動物たちの救護に関わる中で、東洋人であることを生かして動物の東洋医学を学び、治療に生かしてきました。2006年の夏からは、デラウェイ州でただ一つの東洋医学で自然療法を行う病院に勤務し、ノーキルシェルター(殺処分をしない保護施設)や動物福祉団体のボランティア獣医としても働いています。
 ちなみに、同州では、動物病院で狂犬病の予防注射を受けるたびに、費用の3%が貧しい人々のペットや捨て犬猫のために使われる法律を制定、これにより安楽死させられる動物の数が急激に減少したとのことです。(野上)

AVA−net News No.128


きみがうちにくるまえ…

マリベス・ボルツ文 ディビッド・ウォーカー絵
木坂 涼 訳 あすなろ書房 1300円

 動物愛護センターを訪れると、誰もが胸を締め付けられる思いがすると思います。片隅でおびえている犬、何かを問いかけるような犬、すがるように見つめる犬…彼らの目を見ると、いったいどうしてここに来てしまったのか語ってほしいと思わずにはいられません。1匹1匹の犬たちに、どこで生まれて、どんなところで育って、なぜ捨てられてしまったのか、これまでどんな目にあってきたのか、と。彼らがものを言うことができれば、捨て犬の原因を知ることができ、対策が立てることができるでしょう。
 もの言わぬ動物たちに語りかけてみたいこと、それを本書はアニマル・シェルターからもらい受けた子犬に、少年が語りかける言葉で代弁してくれています。(野上)

AVA−net News No.125


いっしょに歩こう
元実験犬ハッピーの物語

ホリコシアイコ著 新風舎 1500円(税込み)

 毎日毎日、小さなケージの中で暮らしていた実験犬のビーグル。ある日施設から出され、新潟行きの飛行機に乗りました。インターネットで実験犬の里親探しを見たホリコシさんご夫婦が、飼いたいと名乗りをあげてくれたからです。
 この本は、ハッピーと名づけられたその元実験犬が、「ワン」となくことすらできなかった状態から、だんだんと人に心を開き、幸せな家庭犬となるまでを描いた感動の手記です。
 ハッピーの文字通り幸せそうな映像は、今年(2007年)5月、テレビ新潟でも紹介されました。この本を通じて、実験に使われた犬たちでも家族の一員として幸せになれることが知られ、実験動物の「第二の人生探し」がもっと広まることを願ってやみません。自費出版書籍ですが、一般の書店や発行元のインターネットサイトで注文できます。(東)

AVA−net News No.125

一緒に歩こう 
〜人と動物、小さな命のつながり〜

渡辺眞子 ジュリアン刊 1200円+税

 共同通信社より30回に渡り、全国の地方紙に掲載された「いつもいっしょに ペットとのくらし」を大幅に加筆修正し収録した一冊。初めてペットを飼う人へ、そしてすでに一緒に暮らしている人にも、犬や猫を迎える為の準備や心構え、食事、しつけ、散歩、病院など日常の様々なことにどのように対応していったらよいのかが、色々な角度から書かれています。
 そして、ペットと暮らすという身近な話から、犬猫の殺処分、地域猫、動物実験、外来種・野生動物、学校の飼育動物、動物園といったALIVEの活動にそのまま通じるもの、さらには著者が経験したカエルの解剖の授業のこと、アフリカでのサファリツアーの体験、アメリカのテレビ出演をするオランウータンや手話のできるゴリラとの出会いなどの話まで。すべては、人間と動物とはどのようにかかわっていくべきなのか、改めて考えさせられる内容です。(小林)

AVA−net News No.124


「地域猫」のすすめ
−ノラ猫と上手につきあう方法

 黒澤泰著  文芸社 1200円+税

 ノラ猫に餌を与える人と、猫による迷惑を受けている人は、猫をどうするべきかでしばしば意見が対立します。行政はその双方の間に立って板挟み、といった状況もよく起こります。本書は、行政の職員であり獣医師でもある立場から、双方の立場の人がまず会って話し合いをし、問題解方法をさぐる場を作り出したことから始まります。
 そして、ノラ猫の世話をしながら、猫による被害を減らすという、双方が納得できる合意点を作り出すことに成功します。
 この場合の問題は「猫」でしたが、他のさまざまな地域トラブルの問題においても、相対立する立場や意見の人々が、地域という場所で話し合いをすすめ「合意形成」をははいっていくことは、たいへん重要な手続きだと考えられます。
 まず、実態把握を行い、その情報を公開し、論点を洗い出し、意見を整理し、対立点をつきあわせながら、双方が妥協できるところを見付け、取りまとめをしていくというプロセスが、社会のさまざまな場に導入されていくといいのではないでしょうか。
 近所のノラ猫問題に悩まされている方は必読です。(野上)


AVA-net News No.113

カイが行くはずだった場所

阿部知子 著 アニマルクラブ発行
1300円 カラー 48ページ

 親子で海辺に捨てられ、保健所に送られたハルとカイ。捨てられて捕獲された犬が、飼い主が引き取りに来てくれる日を待つ期間はわずか3日間。宮城県動物愛護センターには、県内の保健所から、住民が持ち込んだ「不要犬・猫」と、捨てられたり迷子になったために捕獲された犬たちが運び込まれます。その動物たちを待つのは殺処分の運命……。
 本書では、動物処分の現場で働く方々が、隠さず制限もせずに、ありのままの現状 を撮影・取材させてくれたことで実現したとのことです。
 この「隠された現場」を多くの人々が知ることで、動物を終生飼うことの責任を感 じてくださることを祈ります。
 本の収益は全額「捨てる命は生ませない」ための不妊去勢手術等の助成金に使われるとのことです。
◆本の注文先:アニマルクラブ
 Tel.& Fax.0225-23-2680
  http://a-c.sub.jp/

 

AVA−net News No.106

改正動物愛護管理法 解説と法令・資料

 動物愛護管理法令研究会編
 青林書院 2800円+税 2001年4月刊

 一般に何かを変えたいと思ったら、まず変えるべき相手の性質を知って取りかかるのと、知らないで取りかかるのでは大きな違いがでるでしょう。現在の法律では少しも動物を守れないとしたら、法律を変える必要がありますが、その時にはまず現行法のどこに問題や欠陥があるかを知ってい取りかかる方がいいでしょう。

 本書は、動物愛護法の改正に携わった行政官が執筆したもので、法改正の経緯、新旧対照表、関係資料などもたくさんあり、動愛法をもっと詳しく知りたい方には格好の参考書として役立つと思います。また動愛法の改正運動を動かしてきたのは、動物保護関係団体であり、私たち市民の力であったことも記録されています。

 ただ、当時の法改正はあくまでペット中心で動いており、動物実験は頭から拒否され、畜産動物は一顧だにされなかった5年前の風潮をそのまま映し出しています。そのような限界を考慮しながら、新しい時代が必要としている法制度は何かを考えていきたいものです。(野上)

AVA-net News No.108

Q&Aでわかるペットのトラブル解決法

 矢花公平/浅野明子著 法学書院 1800円+税

 著者のお二人は弁護士で、ペットをめぐるさまざまな問題を、法律的にどのように対処したらいいのか、多くの事例をもとに詳しく紹介しています。内容は、ペットの飼育に関すること、ペットが人や物を損傷した場合、人がペットを殺傷した場合、ペットの交換・売買に関すること、ペットの医療事故、ペットの保険・葬儀・おはか、ペットの食べ物・ペットショップ、宿泊施設など、たいへん多岐に渡っています。無用なトラブルを事前に避けたり、あるいはトラブルが起こっても賢く対処するために、お手元に1冊あると役立つと思います。

AVA-net News No.101

獣医療トラブル Q&A Vol..1/ Vol.2

 池本卯典著 チクサン出版社 各3500円+税

 著者は医師で、法医学、人類遺伝学、医事法学の専門家で、現在日本獣医畜産大学の学長。開業獣医師が知っておくべき法律や獣医療に係わるさまざまなの問題をQ&Aで取り上げています。獣医師の仕事は、診療はもちろんのこと、飼い主との接し方や誤診、医療ミスへの対処、適正な診療費など社会的な視野に立って対処しなければなりません。獣医学教育、獣医師の臨床研修、開業獣医師の往診といった制度の問題や、獣医師の社会的責任なの問題など、たいへん幅広いテーマで取り上げられています。獣医療も人間の医療と同様、社会の変化、法律や制度の変化の中で動いています。Vol..1 は1995年刊、Vol.2は1999年刊なので少し古いのですが、獣医師と社会の関わりを知るにはとてもわかりやすい本と言えるでしょう。

AVA-net News No.105

ちいさいいのち−ペットブームのかげで

 文 川杉知恵 え 川杉雅江 東銀座出版 1500円(税込み)

 著者がこれまでの人生でかかわってきた犬や猫たち。川べり捨てられた子猫。山中につながれたまま置き去りにされた犬。虐待しか受けたことがなく感情を失った片目の犬。捨てられた犬や猫たちだけが不幸なのではない、飼われていても何の世話もしてもらえず、糞尿にまみれてぼろぞうきんのようになってしまった犬たちもいる。

 さらに作者の心を苦しめたのは飼育係をしていたときに出会った実験動物たちの姿。どんな実験をされてもひたすら人を信じ続けるやさしい犬たちの目。それを見ながら死なせるための注射を打たなければならない…。動物の受ける心身の苦痛を感じるが故に、自分の身も心も同じように苦しみ痛んでしまう。動物にとってやさしい社会は、ある意味で人間にとってもやさしい社会であるのです。

AVA-net News No.96-97

馬の瞳を見つめて

 渡辺はるみ著  桜桃書房 1500円

 競馬場で人々の熱狂と興奮に包まれて全速力で疾走する競走馬たち。なぜ人々は熱狂するのでしょうか。単にギャンブルの興奮だけではなく、命がけで走る馬という動物の生命の躍動に魅せられるからでもあるのでしょう。しかし、競馬好きの多くの人々は、単に目の前の走る馬しか見ようとしません。競馬場に出る前に大多数の馬は落ちこぼれ、競馬場に出てからも成績が悪ければすぐに姿を消してしまいます。その馬たちの大部分は肥育牧場に送られ肉用に処分されています。その数は年間約8000頭。

 馬もまた人と同じように喜怒哀楽の感情を持ち、痛みや苦しみを感じるいのちある存在です。それなのに、馬好きの人々はその部分をまったく意識の内から欠落させているかのようです。

 馬に心から魅せられた渡辺さんは、北海道の競走馬の牧場に嫁ぎました。そしてわが手のうちに生まれ育った馬たちが、名前も個性も奪われて苦しい最後を迎えている事実を知り、走ることのなくなった馬たちを自ら引き取って「安楽死」させることを決意します。

 「どうせ肉になるのだからと劣悪な環境を馬を飼うのはやめてほしい。たとえ死後は肉になろうと、死ぬ直前の生きている間が心地よい環境であり、死ぬときも恐怖と苦痛を感じない工夫がされるのなら、私の心はもっともっと楽になれる。私のもとを旅立った馬たちが、どこへ行こうとも、その場面場面で、人々が愛を持って接してくれるのなら、私はこんなに不安を抱かなくてもよかった」と渡辺さんは書き、動物を飼育するということはその「死」に至るまで責任を持つことだということを、切々と訴えています。

 本書によって、動物の健康と福祉に配慮した飼育および最後の「安楽死」が、経済動物、産業動物と呼ばれる動物たちに対する人の基本的モラルとなるべきこと、そして巨利を得ている競馬界がその利益の一部を馬の福祉のために還元してくれるならどれほど多くの馬が苦しみから救われるかを、私たちは心から納得することができるでしょう。

AVA-net News No.96-97

スウィート・ホーム物語−オリバーさんと、幸せをつかんだ22匹の犬

 エリザベス・オリバー著  晶文社 1700円

 犬ほど古くから人間と共に生きてきた動物はありません。今でも、家庭で飼育されている動物のトップは犬であり、日本では1000万頭くらいが飼育ます。これほど身近にいる動物なのに、その本来の習性や行動について多くの人が知らないばかりに、犬たちをいたずらに苦しめたり、心身の病気にさせてしまっています。特に、犬が一日中つながれていると、動物園の動物と同じように「常同行動」を起こしたり、むやみにほえたり、あるいは無気力状態やうつ病になったりするようになります。
 人が犬という他種の存在についてより多くを知り学ぶなら、お互いにもっと幸せに楽しく生きることができるようになるでしょう。

 

 

 

 

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