2001年4月1日から、国の情報公開法が施行されました。これは民主主義社会の基本となる法律で、先進諸国では数十年前から整備・制定されてきたものの、日本は官尊民卑の旧弊のせいで遅れに遅れてきました。むしろ都道府県の方が先に取り組み情報公開条例が制定されてきたという経緯があります。
今回、ようやく国レベルで情報公開が義務付けられるようになりましたので、これからは動物実験を行っている国立研究機関に対して、どのような動物を何匹使ってどんな実験をしているか、開示請求を行うことができるようになります。これにより、密室・暗闇の中の動物実験に関して、ある程度は情報が得られるようになるはずです。
徳島県では、会員が法律の施行と同時に、国立徳島大学医学部の実験動物についての情報開示請求を行いました。ちなみに、これより先、福島県では同じく会員が県の情報公開条例に基づいて、県立医科大学の実験計画の公開を求めて、一部開示を得ています。
しかし、ここで私たち二つの壁に直面します。一つは、「記録が存在しない」
という状態です。情報公開には、公開すべき情報が記録として存在しているという前提があります。しかし、日本では動物実験に対してどんな法規制もないので、研究機関では動物の種類や数や実験内容を把握し公的な記録に遺す義務がないと主張し、情報公開請求をしても、「記録がない」という理由で拒否されるおそれがあります。
実験動物は、帳簿上は「消耗品」として処理されています。1匹何万円もする実験動物は帳簿に記載されているかもしれませんが、保健所や動管センターから払い下げの犬や猫はほとんど無料なのできちんと記録が取られているか、帳簿に残っているかどうか、といった初歩的な記録保持がなされていない可能性もあります。
二つ目は、情報の非開示、または一部非開示です。福島県立医科大学の「動物実験計画書」の開示では、肝心の実験内容がすべて黒く塗りつぶされています。払い下げの犬を使った実験などは国際学会に学術論文を出そうとしてもまったく評価されないものです。その程度の実験を隠さなければならないというのは、市民の批判を恐れているからと疑わざるを得ません。市民の評価に耐えられない(公表できない)ような実験を、税金を使ってやる必要があるのかどうか、たいへん疑わしい限りです。
しかし、動物実験に関する文書がこれほどでたらめだということがわかるだけでも一歩前進と言えるでしょう。何よりも、動物実験の密室性を打破しなければなりません。そのためにも、どこの機関で、どのような動物を、どのくらいの数使って、どのような実験が行われているのか、その研究の結果はどのような形で公表されているのか、しないのか、またその研究にどのくらいの費用(国民の税金)がかけられているのか、そのような実態を市民が把握できる仕組みが作られ、それによって規制がかけられていく仕組みが必要です。
情報公開の前提には法律に基づいて、記録をきちんと取り、それを管理するという社会が土台となっていなければなりません。
野上ふさ子