1.日本における情報公開制度の概要
1999年に国の情報公開法が成立し、2001年4月から施行されました。これは、1980年に「情報公開法を求める市民運動」が運動を始めてから20年もかかってようやく実現した法律でもあります。これまで、様々な公害問題や薬害問題などが起こっても、国が情報を公開しないために市民が多大な不利益を被ってきました。
また、法律ができてもそれを利用、活用しなければ意味がありません。私たちは、市民の力でようやく制定されたこの法律を、いかによりよく活用していくかを考えなければならないと思います。
ちなみに、日本の情報公開制度は1982年に地方自治体の情報公開条例から始まり、現在2,178自治体が条例を制定、これは全国自治体の3分の2に相当し、市・区では96%が制定しています。
2.情報公開制度とは
これまで、国民は国に対して、情報を出してくださいとお願いする側でした。けれども、この法律によって、国民は公開を求める権利が保障され、行政はそれに応えなければならないことが定められました。国が持っている情報は原則として公開されなければならず、例外的に非公開とする場合は、その理由を述べなければなりません。
でてきた文書が黒くスミで塗りつぶされているというのは、情報が一部非開示になったわけです。この非開示部分はできるだけ開示させるようにしていく必要があります。非開示処分となった場合は、二つの救済方法が設けられています。一つは、行政不服審査法に基づくもので、不服申し立てをできる制度です。もう一つは、行政訴訟として裁判所に訴える方法です。
このように非公開を争うことによって、情報公開の範囲を広げさせることも必要です。
3.制度の目的
現在の憲法は「国民主権」を基本としています。つまり、主権者である国民は、国に情報公開を求める権利があり、政府は自らの仕事を説明する義務があるのです。国民は、税金という形で国にお金を納め、その対価として公共サービスを受けています。納税者である市民は、委託をしている役所に対して説明を求める権利があり、役所は説明をする責任があるということになります。
4.制度の入り口
○対象となる情報
国の行政機関が保有している文書で、それが組織的に用いられているものであれば、すべて公開の対象です。紙、写真、フロッピー、CD-ROM等も公開の対象です。
○対象機関
すべての国の行政機関が保有する文書が公開の対象です。宮内庁も警察庁も公安委員会も対象です(ただし、国会と裁判所の文書等は除外されています)。特殊法人については別の法律で対象となる予定です。
○請求権者
「何人も」とうたわれています。外国人も可能ですが、請求は日本語でしなければならないことになっています。
5.主にどんな情報が非公開になるのか
●非公開となる部分
個人情報は保護されることになっています。公務員の氏名については、職名と職務の遂行に関わる部分は公開されます。また課長以上の職は公開されることになっています。自治体では公務員の氏名は公表することになっていますが、国の場合はまだそこまでいっていません。
●法人情報
役所は、自分が作ったものではない情報、許認可に関わる情報の中に、企業秘密が含まれる情報の公開についてはたいへん慎重です。しかし、深刻な公害を引き起こしている問題などについては、例外的に公開できる規定を設けていますが、被害との因果関係が不明な場合は、公開が難しい規定になっています。
●事務事業情報
これは行政の手の内の情報で、監査や検査の方法、ノウハウなどであいて側に知られるとやりにくくなる情報です。
●意思形成課程情報
行政機関内意思決定のプロセスを示す情報で、たとえば審議会の議事録などでは、発言者の氏名を非公開とする理由として使われることがあります。
●存否応答拒否
これは文書があるかないかを応えずに請求を拒否するもので、たとえば警察の内偵情報とか、特定個人の個人情報などが該当することがあります。
●不存在
文書そのものが存在しないということですが、本当にないのか、法律の対象にないのかで異なります。後者の場合は争うべきでしょう。
6.情報公開請求をするには
情報公開請求は、誰でもできます。しかし、たとえば、動物実験といっても漠然としているので、具体的にどういう情報が必要なのか請求をする前に、知りたい情報についての整理をして置きます。
○窓口の活用
公開窓口に電話をしたり直接出向くなどして職員と話をして、どこにどのような文書があるかを把握します。
○請求の方法
窓口には標準書式がそなえつけてあり、ただそれに自分の住所、氏名、書類の名称を書いて出せばよいのです。書式は各省庁のホームページにも掲載されています。自治体の中にはFAXでの取り寄せが可能な場合もあります。国に請求する場合は開示手数料として300円を納付する手続きが必要です。
7.公開請求に対する決定
○決定までの機関
開示の決定は、申請から2週間以内(情報公開法では30日に)ですが、延長されることもあります。その場合は、役所はその理由と期限を説明しなければなりません。
開示資料のコピー代は、国の場合は1枚20円です。窓口に行くと、その文書を有する担当部署の人が出てくるので、時間の余裕のあるときは直接窓口まで出向くといいかもしれません。
○非公開に対する不服申し立て
文書の非開示処分があった場合は、決定から60日以内に不服申し立てをすることができます。
不服申し立てを審査する機関として、第三者によって構成される審査会が設けられています。国の情報公開審査会は内閣府直属の9人の委員で構成されています。
異議申し立てを受けた役所は、内部で検討して公開範囲を見直すか、あるいは審査会に諮問(審査依頼)をするかします。
審査会は双方の意見を聞き、答申を出します。この答申は双方に送付されますし、ホームページを通じて一般公開もなされます。答申を受けた役所は再検討し、再度申し立て人に開示等の決定を行います。
この答申には法的拘束力はありませんが、争えばそれなりの成果はあります。地方自治体条例では公開範囲の拡大を求める答申の割合は5割、全部公開を求める割合は1割くらいになります。この異議申し立てには費用もかかりません。
異議申し立ての結果を不服として裁判を起こす場合は、決定の日から90日以内となります。情報公開の裁判の一審では25%が完全勝訴しています。これは行政訴訟に中では異例といえる勝訴率です。その理由は、非公開の立証責任が役所にあるからです。
(質疑応答)
会場参加者に、これまで自治体または国に開示請求をしたことがあるかどうか質問したところ、30人中5名が挙手。
Q:公開された文書の使用法について何か制限はありますか。
A:適正使用の努力義務はありますが、悪用しない限りどのように使用しても自由です。そもそも「何人」に対しても公開されるべき情報であり、著作権上の問題もありません。
Q:公務員にも競争上の利益があって、それは保護されなければならないということになっていますか。
A:公務員の競争上の地位は、特に保護されていません。その代わり事務事業の公正な遂行や能率的な遂行を理由に非公開にできる規定がおかれています。
Q:情報公開と情報提供の違いについて。
A:本来、行政の文書は原則公開でなければならず、開示請求という手続きを取らなくても情報提供という形で出すのが本筋です。その方がお互いの労力を無駄にしなくてすみます。市民が情報公開請求を求めていくことが、結果的に行政の情報提供を促進することにもつながります。