AVA-net 海外 ニュース No.130 2008.5-6
翻訳:宮路正子
科学はしばしば奇妙なものだ。
私たちは自分が暮らす世界についてあまりよく知らない。ほとんどすべての新しい実験は、人類に関する一般的な知識を何か少し増やしてくれる。
ときおり、その少しの新しい知識を得るために、科学者は奇妙なことや危険なことを研究する。そのような研究は、人間を使用するには、あまりに奇妙であったり、危険であったりすることが多く、そのため代わりに動物が使用される。私たちはこのような研究を許容してはいない。なかには言い表せないほど残酷で、決して行われるべきではなかった研究もある。ここに挙げるのは、これまでに行われたうちでも最も奇妙な5つの動物実験だ。
5位 カンガルーのおなら
この話題は最近、メディアでも盛んに取り上げられていた。科学者は、カンガルーの胃腸を調べて、カンガルーがどのように自分のおならからメタンガスを取り除くのかを解明しようとしてきた。
カンガルーのおならについては、実は2つの別々の研究が行われていて、ひとつはこれをどうしたら牛に適用できるかというもの。 もうひとつは、もっと奇妙で、いったいどういう科学者が思いついたのかは知らないが、カンガルーのおならにメタンが含まれているかどうかを調べるために瓶詰めにしようとしたものだ。
4位 性的に興奮した七面鳥
1960年代に、ペンシルバニア州立大の2人の研究者、マーティン・シェインとエドガー・ヘイルは、七面鳥の性行動と性的嗜好についてかなりたくさんの研究を行った。それ自体は特に奇妙ではない。というのも、科学者はいつも動物の性生活に関する研究を行っているからだ。
この2人が行った最も奇妙な実験は、取り外し可能なパーツからなる雌の七面鳥モデルを雄といっしょにし、雄の性的関心を計ろうとしたことだ。科学者は雌の七面鳥モデルからいろいろな部分を次々に外していった。誰しも、雄の七面鳥は、この洋服を脱ぐように身体のいろいろな部分がなくなっていく雌の七面鳥に、そのうち関心をなくすと思うだろう。ところがそうではなかった。棒のうえに頭だけが残った状態になっても、雄の七面鳥はまだ雌のモデルに関心を示していた。
3位 喫煙する動物
この研究は、先に述べた「信じられないほど残酷な」範疇に入るものだ。それほど奇妙ではないが、この上なく酷いものなので、ここで紹介するべきだと思う。
科学者は喫煙の影響を動物を使用して何年も研究してきた。そして何十年もの研究の挙句にやっと発見したのは、肺ガンが喫煙と関連するということだけだ。
多くの実験がタバコ会社の出資で行われ、科学実験の模範とは到底いえないことを考えれば、仕方のないことなのだろう。タバコが健康に与える影響についての研究は何十年にも渡って行われ、何千もの動物が数え切れないほどのタバコを強制的に吸わされた。
これが「奇妙」なのは、すでによく知られていることについての劣悪な実験だからだ。科学者はすでに何年も前から、喫煙習慣と肺ガン患者の研究によって、喫煙と肺ガンが密接な相関関係にあることを知っていたのだ。
2位 動物のLSD使用
動物を不必要に化学物質に曝すといえば、かなり多くの科学者が、動物に麻薬を与えるとどうなるか調べるという実験を行った。あの有名な「LSDを使うクモ」のビデオもその産物だが、最も奇妙で最悪の実験はおそらくゾウのタスコの実験だろう。
タスコはオクラホマ動物園にいたインドゾウだ。1962年、オクラホマ州立大の科学者ウォーレン・トーマスと同僚は、タスコを被験体としてLSDが(雄の)ゾウの発情として知られる状態(musth)を引き起こすかどうかを調べるために実験を行うことにした。この状態になったゾウは一時的に正気を失い、凶暴になる。
トーマスが、人間への標準投与量のおよそ3000倍に当たる300mg近いLSDをタスコに注射すると、タスコはすぐに倒れ、投与後2時間経たないうちに死亡した。科学者たちは、この実験のおかげで世間の非難を浴びたが、自分たちも多量のLSDを摂取してみたので、ゾウが使用しても危険はないと確信していると主張した。実験の結果は、「象はLSDに対して非常に敏感である」というものだったが、ゾウを蘇生させるために使われた薬が実際にはゾウの命を奪ったという意見の人もいた。
そして、20年後、別の科学者が同じ実験を再現することにした。今度は、ゾウに注射を打つのではなく、飲み水にLSDを混ぜたところ、最初の実験とはまったく別の結果となった。ゾウは陶酔状態になったようだが、興奮もせず、死にもしなかった。しかし、たとえそうであったにしても、ゾウを使用してLSDの影響を調べるというこの二つの研究を行うことがどうして許されたのかと思う。
1位 双頭の犬
1954年、ウラジミール・デミコフというロシア人科学者は、外科処置で作り上げた双頭の犬という恐ろしい創造物を公表し、実在のフランケンシュタイン博士となった。
デミコフは、子犬の頭、肩、前肢部分を、大きなジャーマン・シェパードの成犬の身体に移植したのだ。
この「狂気の科学者(マッド・サイエンティスト)」は、自分の作り出した怪物を集まった報道陣に見せびらかし、報道陣は犬の両方の頭が器に入ったミルクを舐め、食道がつながっていない子犬の頭が舐めたミルクが首から滴り落ちるところを慄きながら見ていた。
この犬は組織の拒絶反応のため、間もなく死亡したが、デミコフは合計で20の「創造物」を作った。
デミコフの実験は「狂気の科学(マッド・サイエンス)」のように見えたが、実は「崇高な目的」があった。外科的移植方法を完成させる方法を見つけ出すための試みだったのだ。デミコフは人間の心臓と肺の移植手術を行う初めての医者になるつもりでいたが、クリスチャン・バーナード博士に先を越されてしまった。しかし、ほとんどの研究者は、デミコフが現代の移植医療への道を切り開いたと認めている。
2008年3月25日
Environmental Graffiti Ltd
http://www.environmentalgraffiti.com/sciencetech/the-5-weirdest-animal-
experiments/964
写真:『現代の蛮行』より AVA-net刊
※同書には、このような「マッド・サイエンス」のさまざまな実例が写真つきで紹介されている。