【アメリカ】
農務省が
カリフォルニア大学サンフランシスコ校を
動物虐待で訴える
深刻な違法行為が発覚
AVA-net 海外 ニュース No.108 2004.9-10
翻訳:宮路
米国農務省(USDA)は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)が60に及
ぶ動物福祉法違反行為−その中には実験動物用ケージを清潔に保っていない、動物に対する実験中および実験後の不適切な処置などが含まれる−を行っていたとする訴状を提出した。
訴状によれば、違反行為は2001年から2003年にかけて行われ、麻酔薬を使用せずにサルの頭蓋を切断するというような驚くべき外科処置も含まれており、違反行為は深刻である、と記されている。違反は、USDA検査官が半年ごとに行う検査の際の報告に基づいている。この訴状は、8月31日に提出され、大学側は回答に20日の期限を与えられている。
USDAの弁護士、コリーン・キャロルは、動物福祉法違反により民事罰あるいは刑事罰、または実験許可の取り消し、ないし停止を受けることもあるという。
UCSFの実験担当副学長ターマシアンは、大学はUSDAおよび他の動物福祉機関の申立ての内容をすべて非常に真剣に受けとめており、これらを調査し、改善措置を取る、という。
また、ターマシアンはUCSFが最近、実験動物の人道的扱いを推進する民間の非営利団体である国際実験動物認定基準協会(AAALAC)から適合承認証を受けたことに触れ、この承認証は、実験動物の人道的ケアと使用における最高の基準を示した機関に与えられるのだと述べた。
USDAは、過去10年間で動物実験施設に関する正式な申立てを10件ほどしか行っていない。
UCSFは国立衛生研究所から国内で4番目に多額の助成金を受け取っており、現在、げっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、フェレット、リス、人間以外の霊長類を含む500を越える動物実験を行っているが、8月、医学研究における動物の使用を廃止しようとする団体から、アメリカにおける連邦動物福祉法の最悪の違反者と名指しされ、批判された。これに対してターマシアンは、動物実験は真剣に受けとめられ、良心的に行われている。大学は動物の使用を最小限に押さえ、代替法を取り入れようと努力しているが、動物実験が医学の革新にとって必要不可欠であると信じていると答えた。
◆USDAの申立ての焦点は実験の主体である動物
違反の中でも特に深刻なものには次のようなものがある:
--麻酔薬または鎮痛薬を用いずに雌ヒツジとその胎児の手術を行った。
--麻酔薬なしでサルの脳を露出するために開頭手術を行った。
--マーモセットの過剰繁殖。
--サルに水を与えず 、著しい体重の減少を招いた。
--外科手術後、動物のモニタリングを怠った。
USDAの申立ては大学のマーモセット繁殖プログラムを非難している。マーモセットは出産後、まだ授乳中に次の妊娠をするということを何度も繰り返しさせられており、あるマーモセットは3年の間に7回の出産で14頭の赤ん坊を生み、そのうち6頭が死亡した。母親の体重は400グラムから283グラムまで落ち、無気力な状態であると検査官は報告している。この母親と生まれたばかりの赤ん坊がグループ・ケージから出されたとき、母親は痩せて明らかにうつ状態だったという。また、1か月後には、子供は無気力状態で反応を示さず、母親から離され、安楽死させられ、母親もまた、その後に安楽死させられた。
その他の違反としては、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウサギのケージを十分清潔に保っていない、飼料を衛生的に保つことを怠ったことなどがある。
動物保護団体、In Defense of Animalのプログラム・ディレクター、スーザン・ロイは、USDAの申立ては動物の苦痛を焦点にしているという。訴状に記された違反行為は、USDAが年2回行う実験施設への検査によって明らかになったが、検査官が目の当たりにしただけでもこれだけ多くの動物が苦しんでおり、検査官のいないところで何が起こっているかは想像するしかない、という。
USDAがこれまでに申立てを提出した実験施設はそれほど多くはないが、UCSFもそのひとつとなった。申立てが提出される前に、書面で警告がなされ、罰金が課される。2000年には、UCSFは、研究者がサルを訓練するために水を与えなかったことの罰金として2000ドルの支払いに応じている。
2004年9月15日
(San Francisco Chronicle)
http://sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/chronicle/archive/2004/09/15/MNG
088P5B61.DTL
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