AVA−netでは、ALIVEと共に、2001年4月に情報公開法が施行されると同時に、全国の国公立大学などにおける動物実験について調べるために、情報開示請求を行ってきました。
情報公開制度は、 憲法で定められた「国民主権」の原則に基づくもので、民主主義社会の基礎をなす制度です。「国民は、税金という形で国にお金を納め、その対価として公共サービスを受けています。納税者である国民は、委託をしている行政機関に対して説明を求める権利があり、行政機関は説明をする責任があるということになります。」
この情報公開法は、日本では成立と施行に到るまでに、長い年月を要しました。多くの有識者や市民団体が求めてきた「国民の知る権利」が、条文に明記されなかったことなど、不十分な点が多々あります。それゆえに施行後5年を目途に見直しがなされることとなり、このほど、法改正や制度の運用上の問題などについてパブリックコメントが行われました。
AVA-netが提出した意見は下記のとおりです。
情報公開法の問題点
はじめに
長年の間、多くの人々が待ち望んできた情報公開法が制定されたこと自体は、民主主義社会の成熟度のバロメーターを示すものとして高く評価したいと思います。一方、以下に述べるように、手続きが煩雑で、時間がかかり、その上非開示部分が多すぎるという難点があり、また異議申し立て手続きにおいても同様の問題が生じています。
実際に開示請求をして直面した困難を以下に述べるとともに、これらの点が改善されるよう法改正されることを強く希望いたします。
1,手続きが煩雑
(1)文書の確認について
文書名が判明しないために、どのような文書として存在するか確認する作業が意外に時間がかかります。各行政機関はすべからく文書ファイル名、およびその中にある個別ファイル名についてインターネット上で公開しておくべきと考えます。そうすれば文書の存否を探す時間が省けます。また、公開されているファイル名と実際のファイル名とが異なっていたこともありました。
(2)手数料の事前払い込みについて
手数料を1件につき300円を事前に払い、また再度開示決定が出てからコピー代を支払うため、この料金の2度払いが時間と手間がかかる理由の一つとなっています。手数料とコピー代の支払いをあわせて一度で済むように簡略化すべきです。
また件数についても、似たような文書でも分けて別件としたり、年度単位で1件とするなど、統一性がありません。こうなると手数料がかかりすぎ、開示を求める国民の負担が大きくなりすぎます。手数料は無料にするか簡略化すべきと考えます。
(3)コピー代について
非開示部分のある文書については、行政当局が原本のコピーをとってそれをスミ塗りし、それをさらにコピーをとって渡すということになり、紙資源の無駄使いとなっています。このような労力と資源の無駄を省くため、文書を電子化してCD等で開示する方法を、積極的に採用すべきと考えます。
(4)開示の延長について
開示の期間延長の通知がきてなんと10ケ月も音沙汰のない機関(東京大学医学部)がありました。納品書の開示を求めたのですが、どこにあるかを探すのに時間がかかったとのことです。文書整理をマニュアル化して周知徹底させるべきと考えます。
2,時間がかかりすぎる
以上のような手続きの煩雑さが、結果的に時間を浪費させ、また人手を要することになっています。手続きを簡素化することは、時間と労力を減らし低コスト化させることとなりますので、この点をぜひ見直していただきたく要望するものです。
3,開示度が低い
(1)個人情報について
国立大学の動物実験計画書の開示請求をしたところ、すべての個人名が非開示とされていました。異議申し立てをして、講師、助教授、教授は公開されることになりましたが、実際に実験に従事している助手や大学院生は非公開のままとなっています。これらの研究は公費である科学研究助成金などを用いて行われているのですから、それを用いる者の氏名の公開は当然と考えます。こういう匿名性が無責任な実験研究を野放しにさせている要因の一つとなっています。個人名といえども公費を使用する人々の氏名は原則公開とすべきです。
(2)業者名について
例えば実験動物の納品書を見ると、実験動物の購入先業者名はほとんどの場合非開示とされています。公的機関が物品を購入する場合は数社から見積書を出させて検討するはずですが、この分野ではそのような検討が行われている気配がありません。またこれまでに違法に捕獲した動物の実験用売買などがメディアで報じられており、実験動物の販売業者についてはいかなる法規制もなく実態が把握されていないのが現状です。研究期間がこのような業者名を非開示としていることは、特定の業者との癒着関係があると疑われます。公費を用いて購入している以上、業者名の公表は当然の義務であると考えます。
(3)実験委員会について
動物実験計画書は、実験委員会の審査による承認を得るために出されるものですが、この第三者機関であるはずの動物実験委員や委員長の氏名が非開示となっています。これでは実験計画それ自体の正当性を疑われることになります。第三者である審査機関である委員会の名簿は公開されるべきです。
(4)実験内容について
大学によっては、実験内容の多くも非開示とされますが、その理由は「研究の独創性や優先権」に係わるからだと述べています。しかし実験計画書を出す意味は、これが国際的なアカデミズムのルールに則り「この動物実験が科学的かつ倫理的に行われていることを第三者である実験委員会が承認した」というお墨付きを与えるためです。つまりは明確な手続きに従ってこの実験が行われていることを証明するための文書であって、研究のプライオイリティの有無とは別問題です。論理を混同して、ほとんどを非開示とする実験研究者の態度は、社会的責任を欠くものであり、安易な非開示は許されるべきではないと考えます。
4,異議申し立て手続きに時間がかかる
異議申し立てを受けた行政機関が、情報公開審査会に諮問するまでの時間がかかりすぎます。諮問をするまでの期間が法律で定められていないため、恣意的にいくらでも延ばされてしまうのでは、訴えの利益がないことになってしまいます。
また、審査会委員の数が少ないせいか、審査会が開かれる回数も少なく、審査自体にも時間がかかります。審査委員についても市民を含め一般社会から広く多様な意見を反映させることのできる人選をすべきと考えます。