AVA-net 117 (2006. 3-4) より
濱井千恵(御薗治療院代表、鍼灸師)
昨年の12月から1月にかけて、高齢の知人や患者さんの家族がたくさん亡くなりました。 寒暖の差が激しかったのも原因の一つに考えられるのですが、どの方もインフルエンザワクチンを接種していたことも、私にとっては気がかりな一つです。特に高齢の方がデイサービスを利用するにはワクチンを接種しなければ入所できないと聞いて、どこか腑に落ちません。
90歳近い心肺機能の弱い老人にワクチンを打つことや、既にインフルエンザが出始めた12月にワクチンを打つ意義は本当にあるのでしょうか? ワクチンで抗体ができるまでには通常2〜3週間はかかるはず。それを承知でインフルエンザが出始めた時期に、体力のないお年寄りや小さな子どもに打つ。これって何かおかしいと思いませんか?
過剰な処方
また介護士や看護士も同様にインフルエンザワクチンを半強制的に接種されるのですが、それでもインフルエンザに罹る人は結構います。前回も書きましたが、インフルエンザとは何かを理解していれば当たり前のことで、型の特定も難しく、インフルエンザの変異は恐ろしいほど速くて確実に防げるワクチンなど作れるはずがないのです。インフルエンザに罹患した方がまだましではないかと思われるほどの酷い副作用で何ヶ月も苦しんだ人たちを、私たちはこの数年幾度となく目の当たりにしてきました。
また最近来院した方の子どもが、インフルエンザで40度近い高熱を出しました。親はやはり不安になるのか小児科に行き、当然の如くタミフルを5日分処方されたのです。既に子どもは罹患して3日目。もうその日の夕方かあるいは翌日には熱は下がったはず。ですが、その小学1年生の子どもが追加に処方された薬はなんと座薬(解熱剤)、咳止め、痰切り剤、抗生物質に抗炎症剤。おまけにノロウィルスによる胃腸風邪にも罹患していて嘔吐や下痢もあると、下痢止めまで処方されていたのです。その過剰な処方に私は愕然とし、やはり今回もインフルエンザについて再投稿したいと思います。
医療がビジネス化
単なる「流行性感冒」を特異な恐ろしい病気のようにテレビは競って報道していますが、一時期強制的に学校で接種していたワクチンが中止になった理由をなぜ報道しないのでしょうか? 「牛乳神話」ならぬ「ワクチン神話」は一体どのように何のために作られたのか、今こそ検証しなければならない時期が来ています。
国の医療保険の改革は口先だけだったのかと言いたくなるほど、保険の乱用を押し進めるメディア。危険を承知で次々と薬を出す医師。そしてタミフルを安全だと言い切った厚生省にも、私は製薬会社との利権を感じてしまうのです。
このインフルエンザワクチンに限れば、当に医療はビジネス化していると言わざるをえません。私の住む伊勢でも実費で4〜5000円するわけで、市外の高い病院だと6000円の所もありました。700円という原価を考えるとこのシーズンは笑いが止まらないのじゃないかと下種(げす)の勘繰りをしたくもなります。
熱を怖がらないこと
1月に入りいよいよインフルエンザが猛威を振るい始め、受験やクラブの試合を控えている学生がこぞって当院にやってきます。風邪の患者が鍼灸院でどのような治療を受けるのか不思議に思うかもしれませんが、敢えて熱を早く出し切り、節々の痛みを緩解するよう、経筋の治療で全体のバランスを整えてインフルエンザをやり過ごす方が身体が楽だったのです。そして薬で無理矢理熱を下げると、何日も体中にだるさや熱感、関節の痛みが残り、却ってその方が辛かったことを身にしみて知ったからだと考えます。
熱を怖がる必要はないのです。私たちは治療の合間や通信で、急性脳症はインフルエンザが原因ではない、解熱剤を乱用するのは危険であり熱をうまく出し切れば身体は強くなるのだと、10年以上も言い続けてきました。
納得できる一冊
そんな一介の鍼灸師の思いを裏付けるような本をつい先日ネットで見つけました。『今年はどうする?インフルエンザ−疑問だらけの予防接種』(ジャパンマシニスト社)です。国立公衆衛生院疫学部感染症室の室長である母里啓子氏監修で、浜六郎先生を始め、著名な医師や研究者がインフルエンザワクチンや特効薬に警鐘を鳴らし、はっきりと仕組まれた需要だと言い切っています。それは私たちが長年訴えてきた思いを医師や専門家の方たちが後押ししてくれたようで、私のこの投稿にも自信を持たせてくれました。皆さんにも是非御一読をお勧めしたいと思います。そしてワクチンとは何かを一緒に学んでいきましょう。
昨日(2006年1月31日)医薬品による副作用の全例公表を独立行政法人医薬品医療機器総合機構がホームページで行いました。同日午後からアクセスが殺到し、1日平均数が約63万件だったそうで、如何に国民が薬の副作用に関心が高いかを現しています。ですが、副作用は人間だけに起こるのではありません。犬猫のワクチンも同じです。問い合わせた大半の獣医師は作用が弱いから大丈夫だと言います。しかし、「生と不活化」の8種にも及ぶ混合ワクチンを毎年打つことには、長年とても不安を感じているのです。
つづく