AVA-net 118 (2006. 5-6) より
濱井千恵(御薗治療院代表、鍼灸師)
危険な向精神薬
二十年に一度行われる伊勢神宮の御遷宮を目前に、市長が自殺しました。駅前開発事業や市町村合併など様々な問題が市長に重くのしかかっていたためだと新聞などには報道されていましたが、私は市長が、抗うつ剤や睡眠導入剤を常用していたことも一つの要因ではなかったのかと考えているのです。
というのも、市長には重度の障害のお子さんがいます。そしてことの外、障害者の支援やバリアフリー事業、そして市の発展に心血を注いでいました。その市長が、全ての重責を投げ出して自ら命を絶つとはどうしても考えられないのです。抗うつ剤や睡眠導入剤などの向精神薬には、短期間の副作用として「自殺願望」があることは余り知られていません。
処方薬による薬物依存症
当院に来院する患者さんの中にも、ベンゾジアゼピン系の睡眠剤やパキシルなど数種の抗うつ剤が処方されている人が沢山います。「プチ鬱」などという言葉もちまたで流行していますが、安易に睡眠薬や精神安定剤に頼ることは、何時薬物依存症の症状が出るかわりません。つまりこの薬には禁断症状が出て、なかなか離脱できない仕組みになっているのです。更にこれらの薬を常用しながらアルコールを飲用することは、廃人になる可能性もあるわけです。また免疫も低下し、飲めば飲むほど不安が募るという悪循環を招きます。
「不安神経症」という病名もありますが、この世知辛い世に生きていれば、誰しも不安のない人はいません。眠れないときは本でも読もう、あるいは友だちに手紙を書こうなど、病院で処方を受ける前に自分でもちょっとした気分転換を是非試みてほしいものです。そして何よりも多少睡眠不足の人の方が、長生きであるというデータもあることを知ってほしいと思います。
8時間睡眠をとらねばならない、毎日通じがなければならない、3食きちんと食べなければならないなど、まるで人間の身体を機械仕掛けのように錯覚している人が多いことは残念なことです。人間も自然の一部なのです。雨の日があってこそ晴れの日があるのです。ビートたけしのTV番組「本当は怖い家庭の医学」を真に受け踊らされてはいけないのです。薬は症状を抑えるだけであって、治すものではありません。治しているのは自己治癒力に過ぎないのです。長期に服用しても良い薬は、この世には存在しません。
花粉症
今年は花粉が例年より全国的に少ないようですが、ひどい症状が出る前に抗アレルギー剤の入った点鼻薬、点眼薬を多用する人がいます。これらの薬は自分の持つ免疫システムの鍵穴の形を変えていきます。目がかゆい、鼻が詰まるというだけで免疫システムに作用する薬を服用することは決して得策ではありません。
当院ではこの花粉症や、一連の季節のアレルギーも風邪の変形だと考えています。
ではなぜこのように老若男女を問わずアレルギーの人が増えてきたのかというと、それは足の弱りに原因があると考えられます。特に足の拇指に力が入らない子どもは消化吸収能力が低下し、痩せている子が多く、逆に太っていても水太りをしていて、触るととてもお腹が冷たいのです。足の拇指には脾経、肝経が通っています。ですからそこが弱ると、それらに通ずる肝臓、脾臓、膵臓などの横隔膜周辺臓腑には負担がかかるため、お腹に力が入らず、姿勢も正しくすることができません。大人も肩に力が入り、上半身優位型で猪首になって足元に力が入らないことから外反母趾になり、血圧も上がり気味になります。ただ外反母趾は、拇指のみではなく、足首、膝、股関節にも深刻な変形を示すので、症状も少し複雑化することもあります。
花粉の時期に多くなる偏頭痛や耳鳴り、腰痛などの症状も上記の姿勢と更に顎だしが続き、頭蓋の蝶形骨の歪みと連動して仙骨の異常が組み合わされた結果に起因する一種のアレルギー症状なのです。
花粉症対策
重度の花粉症だという人も、上腹部と喉の熱、そして拇指を強化し、下腿三頭筋を強めるテーピング治療を行うと、一瞬で症状が緩解するので皆驚かれるのですが、原因を見つければ治るのは当たり前なのです。花粉症では花粉は単なる引き金に過ぎず、原因は自分自身の普段の姿勢にあったのです。そして鼻はドンドンかんで下さい。鼻は鼻汁を出し、酸素を吸う器官であるにもかかわらず、鼻をすすり、口呼吸をするので鼻が退化し、症状が益々悪化するのです。少々詰まっていても、ゆっくり鼻呼吸を繰り返していくと徐々に空気が通り始めます。そして目がかゆいときは、目頭付近にある涙管を軽く指で押さえグルグルと回して、最後に鼻の方に流れるように手でマッサージしてみて下さい。
私は自己免疫力を上げるには、まずは姿勢、呼吸、その次に食養が来ると考えています。どんな良いものでも、それを消化吸収できる力がなければ意味がないのです。
つづく