都道府県「動物保護(愛護)条例」の
制定・改正のために
2000年12月に「動物の愛護及び管理に関する法律」が施行されました。この法律の運用のための国の予算はほとんど付いておらず、実際の施策はすべて都道府県が行うことになっています。また、法で定められている犬猫の引取業務などは、都道府県、政令指定都市、中核市、保健所設置市(2003年で97自治体)が単独で行うことになっています。
動物に関わる具体的取り組みは、各自治体が条例を定めて行うことになっています。また、動物愛護法では、各自治体が法律を越えて条例を制定できることを規定しています。地域に密着した動物行政のよりどころとなる条例の制定はたいへん重要です。私たちは、動物愛護条例に以下のような事項が盛り込まれるように要望しています。
1、動物取扱業を許可制に
ペットショップ、ブリーダーなどの動物業者における動物の取り扱いがたいへん劣悪です。全国の動物保護団体は、動物愛護法改正の際、許可制にするべきと主張してきましたが、国としては「何もないところから一気に許可制まで行けない」という意見で、届け出制にとどまりました。しかし、動物愛護法では、法律を越えて自治体の条例でこれを強化することができることを定めています。
これを受け、東京、大阪、愛知、鳥取などでは条例で動物取扱業者を「登録制」とし、違反者に対しては、改善勧告、命令が出され、なお改善がなされない場合は、罰金と氏名の公表などの措置を取るとしています。
2、動物の流通・飼育実態が把握できるように
海外からほとんど何の規制もなくさまざまなエキゾチック・アニマルが輸入されペットショップで売買されています。動物がどのような環境でどのようなものを餌としていたかもわからないため、しばしば衰弱させ死なせてしまいます。野生動物の輸入は海外の生息地の生態系を破壊したり、輸送のストレスで動物を衰弱死させたり、あるいはさまざまな未知の病気を媒介したりといった問題を含んでいます。どのような動物が輸入されたり売買されているか実態を把握するために、動物の数、種毎に販売先台帳を設置し、最低でも5年間保存させるようにする必要があります。
3、多頭飼育の規制を
全国各地で、個人で何十、何百という犬や猫、その他の動物を集めたり自家繁殖させている飼い主が問題となっています。あまりに過密で不衛生なため、伝染病が発生し、病気のまま放置、餓死といった悲惨な状態となるばかりか、近隣へも多大な迷惑をかけています。動物の繁殖業者などもしばしばこのような多頭飼いをしており、ほとんど動物虐待的な状況となっています。行政が繰り返し改善勧告を行っても、いっこうに改善はなされません。このような場合には、条例で飼育禁止の措置を設けるべきです。
4、危険動物の個体登録制を
従来から、ほとんどの自治体ではトラやライオンなど人に危険がおよぶおそれのある動物を「特定動物(危険動物)」として、その飼育施設を許可制としています。しかし施設許可では、動物の個体の生死や出入りの数をチェックできません。東京都では、2000年に無許可施設のトラが人を殺した事件の反省から、危険動物を「個体登録制」にしました。しかし、このトラは、危険動物の条例さえない青森県で生まれ、千葉県の業者を経て東京都内に持ち込まれました。全国レベルで個体登録制にしないと、途中で行方不明になってしまいます。全国レベルで、動物の出生から死亡までを追跡調査できる個体登録制を導入していく必要があります。
5、野生動物(移入種)の水際規制と飼育規制を
和歌山県では閉鎖した動物園から逃がされたタイワンザルが野生化し、千葉県では、アカゲザル、キョンなど業者や動物園などの施設から逃げ出して問題とされています。プレーリードッグがペストを媒介するとして輸入禁止の措置が取られまたりもしています。逃がしたり捨てられたりして野生化し、人や他の動物、生態系を脅かすおそれのある動物については、輸入禁止や、飼育規制を厳しくすべきです。
(1)人に危害のおそれのある動物
(2)他種の動物に危害のおそれのある動物
(3)生態系に悪影響のおそれのある動物
このような動物を指定して(特定動物または指定動物)個体登録制とし、その輸入、売買に際しては、種毎に仕入先、販売先を届け出させることや、飼育の許可基準を厳しくする必要があります。
6、実験動物業者と実験施設を届け出制に
ペットショップでフ売れ残りの犬や猫が実験動物として売られたり、飼い犬猫が盗まれて実験用に転売される例があります。実験動物業者が動物取扱業の届け出制から除外されているのは、社会的に不公平であり、不正の温床となります。兵庫県は条例で実験動物業者も動物取扱業者として届け出制にしていますが、各都道府県も見習うべきでしょう。
動物実験施設では衛生上の問題はもちろんのこと危険な化学物質や放射線、遺伝子組み替え生物などを取り扱っており、中でどんな危険な実験をしているか近隣の住民さえ知る手段がないというのはきわめて不当です。人の安全のためにも、動物実験施設は最低限、届け出制にすべきです。
7、動物愛護監視員の設置を
動物愛護法では、条例で行政に専門職としての動物愛護監視員(有給)を定めること、および民間に動物愛護推進員(ほとんどボランティア)を委嘱することができるとしています。責任ある飼い方の普及啓発のためにはこれらの制度を導入することが必要です。行政の専門職である動物愛護監視員は、動物の福祉や行動学的知見や経験を積んだ者を指名するとともに、主な業務として立ち入り調査と改善指導、勧告を行うべきです。動物へ暴力を振るったり、ろくに水も餌も与えず、病気になってもほったらかしという動物虐待を警察に告発することも任務の一つです。
8、動物愛護推進員を一般公募に
法律で規定された虐待ではないけれども、狭いケージに閉じこめたまま運動させない、ろくに世話をしないため糞尿にまみれている、悪臭、糞尿、鳴き声などで近所に迷惑をかけている、次々と子供を産ませては保健所などに引き取ってもらっている・・こういった劣悪な飼育に関する通報が、当会には数多く寄せられます。行政が指導するだけでは追いつかず、民間における動物の正しい飼育方法などを啓発普及する活動がたいへん重要です。広く動物愛護推進員を公募して、啓発普及活動を支援することが、長い目でみれば最も効果的です。
9、勧告及び命令について
改善勧告を重ね、改善命令にも従わない動物取扱業者に対しては、科料や罰金だけでは効果がありません。全部又は一部の業務停止の措置命令を条例で定めるべきです。(ちなみに、種の保存法では、特定国際種事業者(届出制)について、措置命令違反には業務停止命令があります。)
AVA-net News より
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