EUで化粧品の動物実験全面禁止へ
期限の先延ばしに反発の声
AVA-net News No.96 (2003.1-1)
翻訳:ベル
ヨーロッパの政治家たちが化粧品の動物実験に終止付を打つまでの予定表をたてたが、これに対して動物保護団体が非難の声を上げている。欧州議会は11月7日、2009年までに化粧品開発過程での動物実験を禁止することで各EUメンバー国と合意した。合意内容には、開発、製造の過程で動物実験が行われた化粧品の輸入、販売の禁止も含まれている。しかし、RSPCA(イギリス・王立動物虐待防止協会)はこの合意を「良い点よりも、悪い点の方が多い」と非難し、国際的な動物保護団体も、「充分ではない」とのコメントを表明。欧州議会と15カ国のメンバ−により、「形式上は」依然として承認されていないこの指令は、議会側からは「バランスの取れたフェアな妥協」と表現されている。
動物保護団体は禁止が発効されるまでの期間の長さを批判。つまり、化粧品業界に動物実験に代わる代替法の発見までに7年間もの猶予期間を与えたことに対してである。特に現在行われている14の動物実験の内、3つは、動物を使用せずに安全性を確認することが困難と判断されているのだが、これらは毒素の生殖機能への影響と毒素の伝播を測定する毒性試験であり、これらに関しては2013年までの猶予期間が設定された。
RSPCAのマーロウ・ハイナン氏は、「問題なのは、これらの(3つの)テストが動物に対して最も苦痛に満ちたものであることだ。欧州議会がその立場を堅持することができず、イギリスを含むEUメンバー国の圧力に屈してしまったことを非常に残念に思う。化粧品の動物実験は、言い訳のたたない、不必要なものであり、すでに禁止されていてしかるべきものである。そしてまた、永久に禁止されるべきものである」と表明した。
RSPCAによれば、EU域内において現在約38000もの動物が毎年、新しい化粧成分と化粧品開発、テストのために使用されている。実験に使用された後、これらの動物たち−ウサギ、ラット、マウス、モルモットなど−は日常的に殺処分されている。
PETA、世界最大のアニマルライツ団体はCNNに対して「今回の合意は正しい方向への一歩ではあるが、充分ではない。本当に必要なのは、製造過程において動物実験が行われた全ての化粧品の販売を即時、禁止することである。2009年まで禁止はされないのに加えて、世界中の何百という化粧品会社がすでに代替法による人道的で効果的なテストを実施しているのだから、EUもこうした流れに参加する時期に来ているだろう。」とコメントを発表。
IAAPE(苦痛に満ちた実験に反対する国際的な協会)のブライアン・ガン氏は、「私たちの団体は過去30年にわたり化粧品への動物実験禁止を求めてキャンペーンを展開してきたが、さらにもう10年、話しを続けなければならない」と語る。
CNNにガン氏が語ったところによると、化粧品業界は化粧品製造の場を世界の別の場所(EU外)へ移すことで欧州における実験禁止を巧妙にだしぬくことが可能である。というのも、イギリス、オーストリア、オランダが現在、化粧品の動物実験を禁止しているのみで、しかも他国の製品はこうした国でも販売されているからだ。ちなみに最も実験をおこなっているのは、フランスとイタリアである。
ところで、多くの化粧品はハンドクリームから口紅、香水にいたるまで広範囲な副作用を調べるためにテストされている。テストの中には試験管の中でできるものもあるが、科学者は癌が発生しないか、またアレルギー反応を起こさないかといったことを調べるために動物を使用するという。
デンマ−クの環境大臣、ハンス・シュミット氏は、「EU内での化粧品のための動物実験禁止は、それ自体、動物福祉にとって大きな勝利である。しかし第三国で動物実験がおこなわれた製品のEU内への輸入を防ぐために、この件に関する合意は販売規制にまで及ぶことが重要である」と述べている。
こうした取り決めは、WTO(世界貿易機構)の貿易障壁に関するルールに抵触しないだろう。ヨーロッパ化粧品・香水協会は、業界はこれまでに50億ユーロ(50億米ドル)以上を代替法の開発、促進、そして使用に費やしてきたと主張。協会のスポークスマンは、「長期間の複雑な過程において重要な進歩がなされた。業界は今後も代替法開発に向けて投資と最大限の努力を続けていく。しかし、完全に動物実験を排除することが必要な代替法全てに対する認可と開発のために提案された期限については、重大事項として保留案件とする」と付け加えた。
CNN(一部、語句説明のためにIAAPEA会報より抜粋、挿入)
※今後のスケジュール
11/6 第2回調停会議
11/27 第3回調停会議
2003年
1月 欧州議会閣僚理事会にて正式に調停結果を承認
2月 EU指令の公表
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