ほとんどの新薬はあまり意義がないという
研究結果
AVA-net News No.95 (2002.11-12)
翻訳:宮路
この10年間に承認された新薬のうち、既存薬にはない成分を含み、米食品医薬品局 (FDA)が既存薬よりも著しく有効だと評価したものはわずか15パーセントにすぎないことがわかった。
ほとんど大半の新薬は既存薬と大きな違いはなかった。しかし、全米衛生管理研究所 (National
Institute for Health Care Management: NIHCM) のまとめた研究によると、同期間の処方箋薬への消費者の支出は1320億ドルと2倍以上になっており、この増加分のほとんどはほんとうに効果のある新薬ではなく、特に有効でないものや成分的に既存薬とあまり変わらないものに使われているという。
FDAその他の団体はこれまで既存薬よりはるかに効果のある薬が開発されるのはまれなことであると警告していた。しかし、このほど発表された研究は、薬への支出額を、その薬の健康管理に対する重要度によってランク付けするという新しい方法をとっている。
このデータは、患者が賢い消費者にならなければいけないことを示している。私たちは皆、「新しく改善された」ものはつねによりよいものだと思い込んでいるが、それは必ずしも正しいとは限らないとNIHCMの所長チョクリーはいう。
しかし、この研究は発表されると同時に製薬業界から集中攻撃にあった。
米国医薬品研究製造業者協会 (PhRMA) 側はこの研究に対して「公共の利益のための科学を装った、政治的・経済的目論見のための安っぽいお為ごかしにすぎない」とのべている。
FDAは、新薬がそれまでに使用されたことのない化学成分を含んでいるか、などをもとに異なる基準を設け、新薬の評価を行なっている。FDA「お墨付き」のプライオリティ薬(FDAが既存薬に比べ格段の効果があると認めるもの)は既存薬の場合より健康の改善がいちじるしい。FDAによる「スタンダード薬」は格別の効果があるわけではない。とはいえ、ある薬が効かなくても別の薬が効く場合もあり、類似薬の間の小さな差が人によっては大きく影響する場合もあるので、選択肢があるのは大切だという。
NIHCMは1989年から2000年の間にFDAに承認された1,035の薬について調査し、そのうちわずか153がFDA「お墨付き」のプライオリティ薬であり新成分を含む薬であることがわかった。
FDAに承認された他の薬の多くは既存薬を多少変えたもので、この傾向は年々増してきたという。1995年から2000年の間にFDAが承認した304の薬がこの種類で、それ以前の6年間に承認された同様の薬は168だった。
新薬は既存薬より高価であることが多い。しかし研究によると、2000年にアメリカ人が処方箋薬に費やした額は1320億ドルで、うち440億ドルが1995年以降に承認された薬に費やされているが、新成分を含む薬に費やされたのはこのうち3分の1にすぎない。
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