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 HOME > 海外ニュース > 動物実験計画に対する評価の信頼性について  
 

海外ニュース

動物実験計画に対する評価の信頼性について

AVA-net News No.90 (2002.1-2)
翻訳:宮路

●動物実験委員会を調査する

 アメリカでは、ほとんどの動物実験施設は所内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee :IACUC)を設置し、動物実験を行う場合にはこの委員会に実験計画書を提出して審査を受け、計画が連邦政府のガイドラインに沿ったものであることを確認後、承認されることになっている。委員会がガイドラインに沿っていないと評価した計画については不承認とするか、計画の変更を求めなければならない。過去20年間、この同僚による動物実験計画の科学的審査方法はしばしば議論と注目の的となってきたが、実験に付随するリスクから実験動物を保護するためのシステムはこれまでほとんど実証的調査の対象となってこなかった。

 ウェスレイアン大学のスコット・プラウツ博士とウエスタン・キャロライナ大学のハロルド・ハーツォグ博士は米国立科学基金の助成金を得、3年がかりでIACUC評価の信頼性に関する調査を行った。

●実験の評価の仕方をチェック

 まず、今回の調査のために実験リスク保護局(U.S. Office for Protection from Research Risks)のリストに掲載されている全米916の所内動物実験委員会から70を無作為に選出したところ、50の委員会が協力に同意し、評決権を有する委員566名のうち494名(女性151名、男性343名)が調査に参加した。

 各委員会に最近審査した動物の行動関連の実験計画書を3つ、その実験計画に対する委員会の評価と共に提出してもらい、提出した委員会やその評価内容などに関する情報を削除した後、第二審査を行う別の委員会を無作為に選び、評決権を有する各委員に実験計画書を送付、審査を依頼した。

 各委員はそれぞれの実験計画について、ほとんどの委員会で通常使われている4段階評価表(提出されたまま承認,条件付きの承認、決定保留、不承認)に沿って審査を行い、計画に関する4あるいは5項目(実験計画と手順の質、実験計画の明確さ、実験動物の種類と数の妥当性、科学的価値、苦痛度分類)についてそれぞれ5段階評価表を使い評価を出した。

 個々の委員が評価を出した後、委員会はグループとして3つの実験計画それぞれに対する最終評価を出したが、この際、通常通りの手順で審査作業を行い、実験計画についての議論も他のものについてと同様に行った。

 その結果を第一審査の評価と比較したところ、二つの評価の間には特に相関性がみられなかった。この相関性の欠如は150の実験計画すべてに関して見られるだけでなく、電気ショック、断餌・断水、外科手術、薬物・アルコールの実験といった比較的侵襲的な実験、安楽死をさせなければならない実験、また、実験動物がかなりの苦痛を体験するだろうと評価者が予想できる実験などにおいてもみられた。つまり実験が致死的なものや苦痛を伴う性質のものであるか否かを問わず、実験計画審査の評価は委員会間の評価者間一致度において偶然の域を出なかったということだ。

●評価の信頼性の低さ

 第一・第二審査の評価が一致しなかった実験計画は全体の79パーセント(150中118)で、そのほとんど(101)のケースにおいて第二審査の評価のほうが厳しかった。実際、第二審査ではほとんどの場合、実験計画のすべての面において否定的な評価を下している。例えば、「実験動物の種類と数の妥当性」について納得できる、またはほぼ納得できる、と評価されたものは43パーセントに過ぎず、実験計画と手順に関して良い、または優秀という評価を受けたものは45パーセントに過ぎなかった。

 総合してみると、61パーセントの実験計画は「実験計画の明確さ」がよく分からない、あるいはまったく分からない、「実験計画と手順の質」が悪い、または「実験動物の種類と数に関する妥当性」があまり、あるいはまったく認められないという評価を受けた。しかも、これらの評価は実験計画を承認するかどうかという判断に直接結びつくものだ。

 第二審査のほうが厳しい評価が出ているのは、第一審査と第二審査の間に手順の差があり(例えば第一審査よりも第二審査のほうが詳細に行われた、など)、それが原因で評価者間一致度が低くなったという解釈も成り立つ。あるいは第一審査では実験計画を提出した研究者がだれであるかを評価者が知っていたが、第二審査においてはこのような情報は提供されなかったので評価者は知りようがなかったことと関連があるのかもしれない。一方、同一委員会内における評価者間一致度が低ければ、評価者間一致度の低さに対するこのような説明は説得力がなくなる。


●委員のばらつきの大きさ

 そこで第二審査に関して同一委員会内における評価者間一致度を評価するために級内相関係数(intraclass correlation coefficient)を算出してみたところ、一般に低いとみなされる数値が出た。つまり、第一審査と第二審査における評価の一致度が低いのは、それぞれの委員会の審査手順が異なったためだけではなく、むしろ個々の委員レベルで評価が一致していないことを示している。

 また、個々の審査項目についても級内相関係数を算出したところ、こちらの評価信頼度も低かった。しかし、実験動物が体験すると予測される痛みや苦痛の度合に対する評価だけは例外で、この項目に対する評価信頼度の数値は他のものと比較して2倍と飛びぬけて高かった。これは評価者が審査項目に対して詳細に分類された基準を与えられた場合には評価者間一致度が比較的高くなるということを示してる。と同時に、そのような基準が存在しない場合、同一の実験計画を審査する際に同じ審査項目を用いても委員会内における評価者間一致度は低いということになる。

 臨床実験や動物実験の規定構造はどの実験を承認し、どの実験を不承認とするかについてIACUCと倫理審査委員会(Institutional Review Board :IRB)が信頼性のある評価を下す能力の上に成り立っている。しかし、今回の研究ではIACUCの実験計画審査の評価者間一致度が低いという結果がでた。通常のIACUCの審査手順とこの研究の一環として行われたIACUCの審査手順の間に違いがあったためという可能性も考えられるが、これでは説明のつかない部分も残る。同じACUCに所属する委員が同一条件下で実験計画を審査した場合にも、その評価にはばらつきが見られ、しかも審査された項目は実験計画審査過程において重要項目とみなされるものだった。したがって第一審査においてこれらの項目について充分な考慮がなされなかったために評価が信頼性の低いものになったとすれば、今回の調査結果はさらに深刻なものとなる。

●身内どうしの評価の甘さ

 第一審査では、委員会に提出された実験計画書のうち不承認となったのはわずか2パーセントだった。評価者間一致度の低さを考慮に入れると、この数字は別の委員会が審査していれば不承認とするであろう実験計画もほとんどの場合承認されていることを示唆する。

 委員達は適正な評価を下すよう努めているが、信頼性のある審査に必要とされる詳細で統一されたガイドラインを与えられていない、とプラウス博士はいう。

 また、ハーツォグ博士は、動物実験研究者のひとりとしてこの結果に驚き、委員達は頭もよく、仕事熱心な人たちであり、彼らが出した実験計画評価の信頼度が硬貨の裏か表で物事を決める程度の確率でしかないとしたら、審査制度は改められなければならない、と述べている。

 同僚による審査システムの信頼性を向上する方法についてはこれまでにもいくつかの提案がなされており、最近の研究によって評価者の能力向上トレーニング、審査手順の統一化、具体的な評価基準の開発などが評価の信頼性を大幅に高めることがわかっている。IACUCによる実験計画審査が動物実験の規制において信頼でき、効果のある構成要素で在り続けるためには、このような方法を取り入れることが非常に重要だと思われる。

(Science, Wesleyan University)

 

 

 
 
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