欧州議会:
化粧品の動物実験廃止法案を可決
AVA-net News No.86 (2001.5-6)
翻訳:宮路
4月3日、動物実験を行なって開発された原料を使用した化粧品(シャンプーや香水なども含む)の販売を禁止する法案が欧州議会で可決された。議会で可決された法案はまず欧州連合(EU)の行政府に相当する欧州委員会(EC)にかけられ、ここで承認されればEUメンバー国15ヶ国それぞれの担当相にまわされ、その後議会にもどされて最終票決が行われる。この法案が正式に施行されれば、代替法があるもので動物実験を行なって開発された原料を使用した化粧品については即刻発売禁止、代替法のないものでも2005年1月には原料の安全性検査に動物実験を行なったものは販売禁止となる。この法律は輸入される化粧品にも適用されるが、すでに動物実験によって安全性が証明されている現在市場に出回っている8000ほどの化粧品原料については適用外となる。
議会はまた、代替法によって開発された化粧品に動物実験を行なっていない旨を表示するラベルをつけるのではなく、動物実験を行なって開発された化粧品にラベルをつけるという改正案も可決した。
欧州議会と欧州連合は、1998年に提出された化粧品開発の動物実験廃止案を先延ばしにしてきたが、これは化粧品会社が必要な代替法を開発できずにいたためだ。イギリスでは1998年に国内での化粧品開発用動物実験は廃止になったが、輸入品についてはこれは適用されていない。今回の法律が成立した場合、海外で動物実験を行って開発された化粧品の輸入も禁止になり、世界貿易機構(WTO)からクレームがつくことも予想される。しかし、王立動物虐待防止協会(RSPCA)のスポークスマンは、海外で動物実験を行ったものの輸入も禁止にしなければ、化粧品会社は商品開発を海外で行い、商品をEU内で販売できるので意味がない、と述べている。
ヨーロッパでの化粧品会社の年間売り上げは合計で390億ドル(約4兆7000億円)にものぼる。ロレアルやP&Gなどを含むこれらの会社は、まだ多くの動物実験に代る代替法が開発されていないと、今回成立したばかりの法律に反対の意を表明している。
ファイザー製薬:書類を改ざん
ファイザー製薬がナイジェリアで重病の子供たちを被験者に臨床試験を行った件で、ナイジェリアの医師は、日付を改ざんした書類を作成したことをワシントン・ポスト紙のインタビューで認めた。この書類は、ファイザー製薬の要請により、ナイジェリアでの臨床試験が、事前に同国の倫理委員会の許可を得ていたように見せかけるためのものだった。ニューヨークに本社を置くファイザー製薬は1997年、脳膜炎流行に際して、抗菌薬Trovanの小児用使用許可を求める申請書を米食品医薬品局に提出。これに対する審査用に申請の補助証拠としてこの書類を添付している。アメリカでは政府規定機関に故意に不正書類を提出すると連邦法違反に問われる。
Trovanはアフリカで1万5000人もが命を落とした記録的な脳膜炎の流行期に児童や幼児に対して使われた。
アメリカでは法律で、医薬品の商業流通認可申請に海外での医学研究データを使用する場合、この研究データが事前に当事国の倫理委員会で正式に認められているものでなければならないと定められている。
(なお、Trovanは発売後、副作用により急性肝不全などの症状を引き起こすことが明らかになり、米食品医薬品局から厳しい使用制限を勧告された)
製薬会社スミスクライン・ビーチャム(昨年12月にグラスコ・ウェルカムと合併し、グラスコ・クラインと社名変更)は、同社開発の脳卒中や心臓発作のための薬の臨床試験中、被験者の死亡数があまりに多いので、この試験を中止することにした。問題の医薬品otrafibanの臨床第?相試験開始後、122人もの被験者が死亡したため、試験を中止し、被験者9197人すべてに薬の服用を中止するよう指示した。Lotrafibanは心臓発作や脳卒中を招く血液の凝血を防ぐ目的で開発された。被験者は試験中、Lotrafibanとアスピリンを併用しており、この試験は二重盲検法(治療効果などを調べるために問題の薬や治療法を誰がうけているかを被験者にも研究者にも知らせないで行なう方法)で2年近く行われていたが、プラシーボ(偽薬)を服用していた被験者の死亡数は92名だった。Lotrafibanを服用していて死亡した122名は心臓や神経の疾患があったが、死亡原因は脳卒中や心臓発作ではないという。
(AP)
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