アメリカ動物実験反対協会(AAVS)の傘下にある代替法研究開発基金(ARDF)と代替法キットなどの製造会社
In Vitro International、そしてペンシルバニア州の大学生は昨年、米農務省(USDA)を相手取り、温血動物であるラット、マウス、鳥類について、他の実験動物のように動物福祉法に則った飼育基準などが設けられていないのはおかしいと訴訟を起こしていたが、両者の間で法廷外での和解が成立し、USDAはラット、マウス、鳥類についても飼育などに関する最低基準を設けることに同意した。これにより、これらの動物の食餌、水、住居、痛みに対する軽減措置などについて法的基準を設け、また、科学者はこれらの動物を使用した実験の代替法の開発を心掛けなければいけないことになった。
1966年に制定された動物福祉法は研究、実験、その他の目的に使用される温血動物保護のためにUSDAが基準を設けなければいけないとしているが、これまでUSDAは国立衛生研究所(NIH)がすでに齧歯動物などの飼育については規定を設けてあり、これが国内のほとんどの研究者に適用するのでそれで十分だという意見だった。
しかし、活動家側はNIHの規定は齧歯動物を実験使用する研究者の60パーセントほどにしか適用されないし、NIHの規定を満たしていない施設は助成金を打ち切られることになっているとはいえ、これが実施された例はほとんどないと主張していた。連邦政府の法規定が不十分であることもあって、これらの小動物がどのくらい実験に使用されているのか正確には把握されていないが、全米生物医学研究協会(NABR)は1998年には約2300万匹のラットとマウスが使用され、これは実験動物総数の95パーセントにあたると報告している。
研究者団体の中には今回の決定を支持しているところもあるが、ジョンズ・ホプキンズ大学は「生物医学研究界を代表して」訴訟に介入しようとしていた。同大学は、動物保護活動家の真の目的は、アメリカでの動物を使用した医学研究をすべてやめさせることで、そうすることで人間に及ぼす影響をまったく考慮に入れていないと非難。そして、今回の決定により、医学が進歩する速度が著しく遅れ、多くの研究が動物実験に対する規制がほとんど、あるいはまったくない国へ移る可能性もある、と述べている。
一方、動物保護活動家側は、イギリス、フランス、ドイツなどの「研究先進国」では、これらの動物の実験使用にはとうに規定が設けられている(特にイギリスでは115年前から規定が定められている)が、世界でも最高水準を誇る研究レベルを維持するにはなんの問題もないと反論している。
ジョンズ・ホプキンズ大学のこの訴訟に介入しよるとする試みは、大学がもともとは訴訟に関与していないという理由で判事に阻止されたが、その数日後、上院予算委員会の議員がちょうど議会にかかっていた2001年会計年度農務省予算案に「ここで割り当てられている予算は現行の動物福祉法における動物の定義の修正に関連する公示、その他の費用としては使用できない」という条項を盛り込んだ。この予算案はすでに議会の承認を受け、上院と下院で可決され、大統領が最終に承認すれば正式に効力を発するが、これがこのまま承認されれば今後1年間はUSDAは実質的に和解内容について何のアクションも取れなくなる。このため動物保護団体側は大統領に拒否権を行使するよう要請している。
ARDFの代表マカードル博士は、アメリカでの実験動物関連の3大団体(アメリカ実験動物学協会、国際実験動物管理評価認定協会、科学者による動物福祉センター)はラット、マウス、鳥類に関する基準作成を支持しているし、これに賛同する科学者も多い。声高に反対意見を述べている少数派がアメリカの医科学界を代表していると勘違いしないでほしい、と述べている。