【アメリカ】
増加する薬の副作用報告
AVA-net 海外 ニュース No.149 2011-7-8 翻訳:宮路正子
処方薬の副作用に関する公式報告はこの10年間で劇的に増加しているという。
1969年に立ち上げられた米食品医薬品局(FDA)のデータベースにある、特定の薬品や装置による“副作用症例”報告の半数以上がこの10年以内のものであることが明らかになった。
FDAは、現在、そのような医療品に関連する健康被害、ときには死亡の報告を、毎年約50万件受け取っている。2000年には、少なくともひとつの処方箋が出された外来診療1万件あたり約5件の割合だったが、2005年までには、その割合は約7件に増えたと、“アーカイブ・オブ・インターナル・メディシン誌”に発表された研究は分析している。
2000年から2010年までの間、報告数は毎年11パーセント以上増え続け、2010年には、報告数は220万にも上り、データベース全体の55パーセントを占めた。
研究執筆者のボルティモア、メリーランド大学のシーラ・ウェイス-スミス博士は、報告数が実際の薬品の副作用数を表すものではないという。
博士によれば、製薬会社は自社製品に由来する健康被害と疑われるものについてはすべてFDAに報告する義務があるが、医師、患者、弁護士、その他の人については、副作用に関する報告の義務はまったくないという。
薬品の副作用が実際にはどのくらいの数に上るのか推計するのはむずかしいとウェイス-スミス博士はいう。公式報告は実際の副作用の10分の1程度だろうと見る専門家もいるが、博士は、実際の副作用数は皆目見当がつかず、その中のどの程度が報告されているのか分からないので、この推計も信憑性に乏しいという。
博士は、また、副作用の報告数がなぜ増えているのかを突き止めるのも難しいと付け加えた。高齢者の人口における割合が増えており、高齢者では薬品に対する副作用が平均より多く起こる可能性もあるという。
また、より多くの人がより長期にわたって薬品を摂取するようになったことも、薬品に対する副作用や複数の薬品の相互作用による副作用の増加の理由となっているという。
特定の薬品に問題があるという新しい記事が発表されると、その薬品に対する副作用の報告数が増える傾向が多い。例えば、Vioxxという鎮痛薬は2004年に販売禁止となったが、一般への公表が副作用報告にどれほど拍車をかけるかは、驚くほどだという。
ウェイス-スミス博士らは、ブランド薬の副作用に関する2000年から2009年の間の公式報告すべてをレビューしたが、この10年間に、FDAのAdverse
Event Reporting System(AERS:副作用情報管理データベース)には220万件の副作用報告があり、患者の症状に関する情報を含む報告のうち、患者が入院したものが40パーセント以上、死亡したものは15パーセントだった。
最も多く副作用が報告されるものの中には遺伝子組み換え薬品として知られている新しいタイプの薬品がある。この中には関節リウマチやクローン病などの自己免疫疾患の治療薬も含まれる。これらの薬品は免疫システムに作用するので、患者の感染へのリスクを高めてしまう。
その他に副作用報告が多かったのは、糖尿病治療薬(Byetta)、骨粗鬆症治療薬(Forteo)、経皮避妊薬(Ortho
Evra)などだ。
副作用はさまざまな薬品によって起こる可能性があり、患者は自分の身を守るために必要な措置を取らなければならない、とウィス-スミス博士はいう。「薬品は化学物質です。そして患者は何かを体内に取り入れるのですから、それが何か知る必要があります。自分が使っている薬品を医師に知らせ、できれば薬品の入手にはひとつの薬局を使うことをお勧めします。そうすれば、患者が使っているさまざまな薬品すべてを誰かに把握してもらうことができ、薬品の相乗作用による副作用を防ぐことができます。」
「日常的に使う薬品の数が増えていくようなら、これまでに使っているものの中で何か止めることができないかどうか医師に相談してください。そうすれば必要最低限の量に抑えることができます。薬品に添付される注意書きにはすべて目を通し、具合が悪くなったらすぐに誰かに相談してください。何かおかしいと感じたら、医師か薬剤師に相談してください。」
参照: Archives of Internal Medicine, オンライン2011年3月28日
2011年3月28日
Reuters
http://www.reuters.com/article/2011/03/28/us-rising-reports-bad-reactions-drugs-idUSTRE72R65Z20110328
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