【ヨーロッパ】
製薬・化粧品会社、動物実験の廃止計画を支持
AVA-net 海外 ニュース No.147 2011-3-4 翻訳:宮路正子
主要な製薬会社や化粧品会社は、より人道的なアプローチの導入・動物実験の廃止計画を支持
大手製薬会社アストラゼネカ、プロクター&ギャンブル(P&G)、ユニリーバや、化粧品会社ロレアルの専門家は、全欧州規模のイニシアチブが掲げる、研究や安全性試験における動物の使用廃止へ向けたプランを承認した。
動物実験反対者は、動物は生理学的に人間とは異なる場合が多いので、人間が使用する薬品や製品を試験するためのモデルとしてはふさわしくないと長い間主張してきた。
一方、科学者は、動物が、臨床試験で人間に初めて試す前に、新薬の安全と有効性を確かめるための重要なステップを提供すると主張する。
今週発表される論文は、関連業界、学術機関、規制機関の専門家たちがまとめたもので、AXLR8と呼ばれる動物実験代替法開発のためのイニシアチブを支持する内容となっており、新薬や化学製品の安全性試験の未来は、生きた動物ではなく、細胞培養とコンピューターモデルを使用する新技術にあるとしている。
論文は、今日、私たちは、十分な国際的・政治的支援があれば、動物を使用することなしに、無数の化学薬品の人や環境へのリスクを調べ、評価する手段と技術を作ることができるという新たな生物学的転機にいるのだとし、動物実験代替法を提供するさまざまな新技術やアプローチの有効性について述べている。
また、薬物試験に使用可能な心臓組織を製造するための胚幹細胞、ロボットを使用した薬物のスクリーニング、生体における薬物の効果を予測できるコンピューター・プログラムの使用なども代替法として存在する。
昨年、イギリスでは360万以上の動物実験が行われたが、データにあまり意味がない、あるいは実験計画がきちんと立てられていなかったために発表されなかった動物実験研究の数について、科学界内部で問題意識が高まっている。
論文によると、ひとつの化学物質を検査するのに、5年の年月と、800匹の齧歯動物、250万ポンド(約3億3000万円)を費やす場合もあるが、ロボットによる代替法では、1週間足らずの間に350の科学物質を検査することができ、費用も動物実験と比べると、ほんのわずかしか必要なくなるという。
国際人道協会(HSI)の研究部部長で 、AXLR8イニシアチブのアソシエート・コーディネーターであるトロイ・セイドルは、さまざまな分野に渡る、どことも利害関係のない専門家からの支持は、安全性試験の科学を変革するためのEUや国際レベルでの努力を強力に後押しするものだと述べている。
セイドルはまた、「これは、安全性試験における動物の使用を段階的に廃止へと導くための最初のステップです。業界側が法規制者と実際に会い、開発を行い、資源を投資し、これまでのやり方を変える用意があるということは、これが絵に描いた餅ではなく、現実に起こり得ることであることを示しています。変化はすぐには起こらないでしょうが、これは良いスタートです」と語った。
AXLR8イニシアチブは、欧州委員会(EC)の資金提供により、毒性試験における動物実験の置き換え、削減、洗練化(による動物の苦痛の軽減)する研究分野を特定し、その進展をモニターする。
ECはこの達成のために、過去20年間に約1億5000万ユーロ(約17億円)を費やしている。
ロレアルはすでに、Episkinという、形成外科の後に残る皮膚サンプルから作られ、製品検査や毒物検査に使用可能な培養されたヒト皮膚を使用している。
また、P&Gのスポークスマンは、製品の安全研究における動物試験の削減は、会社の主要な目標だという。「製品の安全研究における動物試験を排除するための取り組みにおいてP&Gは最先端にいます。P&Gでは、安全性試験の99パーセント以上を、動物実験をせずに行いました。」
2010年11月27日
The Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/science/science-news/8165125/Drug-and-cosmetics-firms-back-plan-to-cut-animal-testing.html
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