【イギリス】
てんかん研究で動物実験を削減
AVA-net 海外 ニュース No.146 2011-1-2 翻訳:宮路正子
ラットやマウスはてんかん研究モデルとして使われることが多く、発作を人工的に誘発する実験に使われる個体もある。この実験は動物へのストレスも大きい。しかし、バス大学のローランド・ジョーンズ博士は、てんかん研究に使用される動物の数を90パーセント減少させる技術を開発した。
ジョーンズ博士は、英国国立3Rs動物実験代替法センター(NC3Rs)から36万3000ポンド(約4、750円)の助成金を受け、てんかん研究に一匹のラットから取り出した組織を培養した脳組織を使用する方法を開発した。
残念ながら現段階では、動物実験が、てんかん発作を引き起こす脳内における化学変化を研究する唯一の方法であるが、この新しいモデルを使えば、てんかんの発作に至る変化を追跡するのに、一回の実験に一匹のラットを使用するだけで済むことになる、とジョーンス博士はいう。
ジョーンズ博士は、この方法によっててんかんの研究に使用される動物の数を90%ほど削減することができると推計し、単一の脳における変化を時間の経過によって追っていくので、複数の動物群を使用するより、偏差の少ないデータを速く得ることができるという。
研究者は、新しい技術によって、てんかんの症状に対する理解を深め、治療のための新薬を開発することができる。てんかんの患者は世界で5000万人ほどおり、その20〜30%では薬物療法の効果が見られない。
これは今年NC3Rsが授与した13の助成金のひとつだ。助成金の合計額は400万ポンド(約5億2400万円)を超え、他には多発性硬化症の原因究明、インフルエンザ研究、薬物依存症の解明、ガン細胞生物学などの研究者に授与された。
大学科学大臣であるデビィッド・ウィレッツ氏は、「英国政府は科学研究における動物の使用を最小限にしようとするNC3Rsの努力を支持しています。NC3Rsの助成金は、重病の治療法研究において、イギリスが3R代替法の分野で最先端の地位を維持することを可能にするでしょう」と述べている。
2010年10月24日
Laboratory News
http://www.labnews.co.uk/laboratory_article.php/5800/2/reducing-animals-in-epilepsy-study
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