【EU】
実験動物の福祉に関する規制を強化
AVA-net 海外 ニュース No.145 2010-11-12 翻訳:宮路正子
欧州議会、動物実験の動物福祉に関する新しい規制を承認
EUで合意された新しい規制では、実験に使用される動物の数を削減し、実験過程における管理を強化することが目的となっている。
欧州議会議員は、長い時間をかけた話し合いの後、動物実験指令改正案を支持し、EU加盟国は2年以内にこれに従って国内法を制定しなくてはならない。実験施設は国の当局から動物実験の許可を得なければならず、承認されている代替法があればそちらを使用しなければならなくなる。
しかし、動物保護団体は、指令はまだ十分ではないといい、イギリスの動物実験廃止団体BUAVは、今回の改正を「逸した機会」と呼ぶ。
改正から削除された提案には人間以外の霊長類の使用や動物の実験への再使用に関する厳しい制限、強度の苦痛や長引く苦痛を伴う実験の禁止などが含まれていたが、それでも、欧州委員会が科学的に適切な場合には動物実験代替法を使用しなければならないことを明確にしたことに喜んでいるとBUAVはいう。
欧州議会が承認した新指令は、1986年までさかのぼる動物実験指令に取って代わる。これにより、2004年と2007年にEUに新しく加盟した国(そのほとんどは中央・東ヨーロッパの国)は新しい動物福祉基準を取り入れなければならなくなる。
新指令は基本的にチンパンジーやゴリラなどの大型類人猿の動物実験使用を禁止しているが、マカクなど他の他の霊長類はまだ使用することができる。この点は委員会の提案を議会が却下した。
苦痛の測定
指令は、また、「軽度」から「重度」まで苦痛の程度を分類している。これは繰り返しの苦痛を防ぐよう新たに考えられたものだ。
委員会は、「軽度」に分類された実験に使用された動物のみ再使用を許可することを提案していたが、「中度」に分類された実験に使用された動物の再使用も可能になった。欧州議会議員は、動物を再使用することで、使用動物総数を削減することができると主張する。また、アルツハイマーなどの慢性疾病の研究においてヨーロッパが遅れをとることについて憂慮もしている。
EUのデータによると、毎年約1200万匹の動物が実験に使用されている。
指令は各国政府に動物実験施設の定期検査を義務付けており、ときには抜き打ちで行わなければならない。委員会はこれらの検査を監督することになる。
国際動物保護団体“国際人道協会”(Humane Society International)は、新指令はまだ、いくつかの動物実験における「過酷な苦しみ」を防ぐことはできないが、米国など他の国々が“ヨーロッパの後に続けば、動物実験の規制は国際的に改善することになる”という。
2010年9月8日
BBC Online
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-11230884
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