【アメリカ】
ヴァンダービルト大学、実験動物の死に8156ドル(約75万円)の罰金
洗濯機に入れられたサルの赤ん坊
AVA-net 海外 ニュース No.145 2010-11-12 翻訳:宮路正子
ヴァンダービルト大学は、サルの赤ん坊が誤って洗濯機で死亡した後、罰金を支払い、実験のプロトコルを見直した。
米国農務省(USDA)は、実験動物のケアや取り扱いが適切に行われていることを確認するために医学研究施設を定期的に検査しており、5匹のハムスターとガラゴザルの赤ん坊の事故死についてヴァンダービルト大学に8156ドルの罰金を科した。研究施設の職員が謝ってサルの赤ん坊が中にいるのに気づかずに、ケージの寝床用敷布を洗濯機に放り込んでしまったのだ。
ガラゴザルはブッシュベイビーとも呼ばれ、毛がふさふさしてピンポン玉のような目をした小型の霊長類で、大人でも人間の手のひらに乗せられるほど小さい。赤ん坊はそれよりも小さく、死亡した赤ん坊は生まれたばかりだったので、母親をどかし、寝床用かごの敷布を回収した職員は赤ん坊に気づかなかった。
この事件は2008年に起こった。また、5匹のハムスターが、不適切に調合された実験化合物を注入後、死亡、あるいは安楽死させなければならなかったという事件もあった。USDAと大学は、7月15日に和解に合意した。
ヴァンダービルト大学は、大学が自発的に動物の死亡事故を報告したことを指摘し、将来同じような事故が再発しないよう早急の措置を取ったとの声明を発表した。
「ヴァンダービルト大学は医学研究を行うために必要な動物すべてのために最高水準のケアと最も人道的なプロトコルを何よりも心がけています。大学は動物実験プログラムの厳格な管理のために予算においても人材においても多大な資源を注いでいます」と、医学センターのニュース&コミュニケーション部のジョン・ハウザー部長は声明で述べている。
バンダービルトはアメリカでも有数の医学研究センターで、ガン、エイズ、糖尿病、その他の疾患の研究に使用される動物の人道的な取り扱いを確実にするためにプロトコルを綿密に作成している。USDAの検査官は、2008年の事件ではこのプロトコルに従わない人間がいたために動物が不必要に死んだという結論を下した。
「臨床研究における動物の使用は、人間、そして、動物自身にも明確な利益があることを示しています。今日使われている救命薬物療法や外科処置の多くは、人間用も動物用も、事前の動物実験なしではあり得なかったでしょう。ヴァンダービルト大学はこのような治療法のために最善を尽くす所存です」ハウザーは声明でこう述べている。
USDAの検査官は、2007年にもプロトコル違反でヴァンダービルト大学に7、219ドル(約62万円)の罰金を科している。また、2006年にも報告された事件があったが、このとrきには罰金は科されなかった。
それが動物園であれ、サーカスであれ、シーワールド(水族館)、あるいは大学の研究施設であろうと、施設が遵守すべきプロトコルがある、とUSDA動植物衛生検査部のスポークスマン、デヴィッド・サックスはいう。
これまでの事件
以前に報告されたのは、実験室に使用期限の過ぎた薬物が保管されていたり、実験動物の環境エンリッチメント、たとえばハムスターの回し車やタイヤのぶらんこなど、動物に刺激を与え、楽しませるものを与えること、に関する詳細な計画書がなかったことについてだった。
大学が罰金を科せられたニュースを受けて動物福祉団体は大学と連邦政府の監督機関両方を批判している。“動物の搾取の即刻中止を求める会”のマイケル・A・バドキー代表は、ヴァンダービルトの怠慢により、ガラゴザルの赤ん坊と5匹のハムスターの命が奪われ、他の動物に不要な苦しみを味あわせた。この施設には相応の重い処罰を科せられるべきなのに、USDAはこのような小額の罰金刑だけで動物の生命を奪った大学を放免していると非難している。
2010年8月28日
Tennessean.com
http://mobile.baltimoresun.com/wap/news/text.jsp?sid=297&nid
=19963915&cid=17103&scid=-1&ith=1&title=Health
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