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海外ニュース

【イギリス】

動物実験が描く誤解を招くイメージ

 未発表のネガティブな実験結果が、期待される治療法が臨床で限られた成功しかしていない理由の説明になる

AVA-net 海外 ニュース  No.143 2010-7-8 翻訳:宮路正子

 ネガティブな実験結果は発表されないことが多いため、発表される動物実験のデータは治療の可能性を30%ほど過大評価している、と示唆する研究が発表された。

 これは驚くほど大きな偏りだと、研究の主執筆者マルコム・マクラウドはいう。マクラウドは、英エディンバラ大学、臨床脳科学センターの神経科医だ。この研究は、今日 “PLoS Biology”(参照:1)に発表され、病気の動物モデルについて発表されるものの偏りが引き起こす影響を分析している。

 マクラウドらは、実験的脳卒中に基づく動物データのメタ分析とレビューへの共同アプローチ(CAMARADES)と呼ばれる脳卒中のデータベースを調べた。このデータベースは、動物実験での発見が臨床試験に置き換えたときに有効でないことが多いのをうけて、2004年、国際的協力により設立された。マクラウドのチームは16の脳卒中治療法を試験する1、350の実験を含む525の研究について念入りな調査を行った。

 チームは、最初に、発表基準の重要さについて評価した。任意の治療法から有効サイズの平衡域を出すことができると予想していたところ、有効サイズの大きいデータを含む文献はたくさんあったが、少ないものを含んでいる文献はほとんどなかった。チームは、次に、未発表の研究の数を算出し、治療法の“本当”の効果を計算した。その結果、治療法の有効性が非常に過大評価されていることに加えて、16%もの実験が発表されないままになっていることが明らかになった。

翻訳で失われるもの

 引用の多かった動物実験の3分の1強がのちにヒトでの治験に再現されており(参照:2)、脳卒中の動物モデルでは有効であると報告されていた約500の治療法のうち、アスピリンとヒト組織プラスミノーゲン活性化因子を使用した早期血栓溶解だけが臨床で効果があった(参照:3)。論文にはネガティブな結果が含まれていないことが、動物で実験された薬品が、臨床ではどうしてほとんど効果をあげていないかの説明になるかもしれない。

 これらの調査結果は、ある治療法が臨床において効果的かどうか予測する際に動物モデルは特に有効ではないという証拠を強めるものだという人もいる。治験で本当に必要なのは、人間の反応を予測できる動物モデルだが、そのようなモデルは進化生物学の法則に反する、とレイ・グリークはいう。 グリークは麻酔医で、“医学の進歩を目指すアメリカ人の会”という、カリフォルニア州ゴレータにある、疾病の動物モデル使用に反対する非営利団体の代表を務める。

 しかし、マクラウドは、動物実験は有効な治療法への道を開くために役立つ可能性のあるものだといい、たとえば、治療状態をランダム(無作為)化する、あるいは実験者に何の治療のための実験なのか知らせない(参照:3)など、動物実験をより効率的で効果的にするための戦略を推奨する。 動物実験のネガティブな結果を報告しないのは、動物を無駄にし、時期尚早な臨床につながるので非倫理的だとマクラウドはいう。研究が発表されなければ、人間の病気に関する知識に貢献しないことになるのだ。

ポジティブに偏る

 発表の偏りが多いのは、学術誌がポジティブな結果を発表する傾向があることを示している。 ポジティブな結果は、ネガティブな結果より興味深く、引用可能だと見なされているからだ。 「結果がネガティブな場合、研究者は実験について詳細に記述し、発表するという作業をやりたがらない。 というのは、権威ある学術誌には掲載されないし、キャリアアップにもならないことが分かっているからです」、とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の脳卒中研究者S・トム・カーマイケルはいう。

 マクラウドは、この研究が、すべての研究結果を発表するべきだと科学者を納得させ、Nature Precedings(訳注;ネイチャー出版グループが、査読のあるジャーナルには未発表の研究成果や、実験途中のデータなどを共有するための場としてオンライン上に設けた媒体)のようにネガティブな研究も掲載する出版団体が、発表前アーカイブ(従来の学術誌に査読語発表される前の電子版研究論文)を始めるきっかけになることを望んでいる。

 Journal of Negative Results in BioMedicine(生物医学におけるネガティブな結果についてのジャーナル)のような学術誌は、ネガティブな実験結果に焦点を合わせているし、Neurobiology of Aging(老化の神経生物学)誌はネガティブな結果用の特別なセクションを設けている。また、ネイチャー出版グループが発行するJournal of Cerebral Blood Flow and Metabolism(脳血流と新陳代謝ジャーナル)(JCBFM)も厳密に行われた研究のネガティブな結果を一箇所にまとめて掲載することにした。

 「あと数年間で、このようなやり方は学術誌において当たり前のことになると確信しています。今回の研究によって、学術界そして出資団体がネガティブなデータの価値をこれまでより評価し、その発表を支持するべきだと納得することを望んでいます」、とJCBFMの編集主任ウルリッヒ・ダーナグルはいう。

 しかし、学術誌だけでは問題を解決できないとマクラウドはいう。発表の偏りが臨床研究へ与える影響が、ClinicalTrials.gov <http://clinicaltrials.gov/>のような情報データベース開発の原因となった。ここには開始前の臨床試験が登録される。マクラウドは、動物実験に関しても同様のデータベースが将来導入されることを望んでいる。「ある薬品開発を進める価値があるかどうか判断しようとしているとき、その薬品に関して、学術誌に発表された部分的な情報だけでなく、すべての情報を入手するのは重要なことです」。

<参照>
1. Sena, E. S. , van der Worp, H. B. , Bath, P. M. W. , Howells, D. W. & Macleod, M. R. PLoS Biology 8, e1000344 (2010).
2. Hackam, D. G. & Redelmeier, D. A. J. Am. Med. Assoc. 296, 1731-1732 (2006).
3. van der Worp, H. B. , et al. PLoS Medicine 7, e1000245 (2010).

2010年3月30日 ネイチャー誌
http://www.nature.com/news/2010/100330/full/news.2010.158.html#B1

 

 

 

 

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