AVA-net 海外 ニュース No.142 2010-5-6 翻訳:宮路正子
欧州連合(EU)オンブズマン、 P.ニキフォロス・ディアマンダウロスは、チンパンジーなどのヒト以外の霊長類(NHP)の研究使用に関して欧州委員会が行った調査方法についての調査を始めた。
これは、動物実験廃止のための欧州連盟(ECEAE)からの苦情を受けてのことで、ECEAEは担当した委員会作業部会がその領域における専門知識に欠けており、いくつかの証拠を考慮に入れなかったと申し立てている。
オンブズマンは、委員会に2010年4月30日までにこれに関する意見を求めており、委員会で不適切な行政があったかどうか調査を行う。
ディアマンダウロス氏は、この問題には一般市民も強い関心を持っていることに言及し、「オンブズマンは、EU機関が有効で分かり易い政策立案を促進する際に重大な役割を果たしています。
この役割は、リスボン条約の取り決めによりさらに重要になるでしょう。条約は、EUの民主的時代に市民や団体が参加する権利を強化し、また、EU機関が代表団体や市民社会とのオープンで透明性のある対話を定期的におこなうことを義務付けています」と述べている。
作業部会に対する専門的知識に欠けるという申し立て
2007年、欧州議会は、科学実験におけるNHP使用の代替手段を提供するための期限を定めるよう委員会に促し、2008年5月、委員会は、健康・環境リスクに関する科学委員会(SCHER)に、研究におけるNHP代替法の可能性に関する見解を提出するよう依頼した。
2008年10月、SCHERは、この件に関する公聴会を開いたが、ECEAEなど多くの動物保護団体、医学団体、患者の安全保護に関する団体は、後にこのプロセスが公正を欠いていたと委員会に苦情を申し立てた。
2009年5月、ECEAEはオンブズマンに、この件について見解を求められた委員会の作業部会は、NHP研究の分野における十分な専門知識がない、と苦情を申し立て、また、委員会がNHP研究とその代替法に関して関連団体が提出した相当量の証拠を十分考慮に入れなかったとも主張した。
オンブズマンは、作業部会メンバーの選択基準についての情報を提供するよう委員会に求め、また、SCHERが第三者からのすべての関連情報を検討したと委員会が結論付けた根拠についても関心をもっている。委員会は、2010年4月30日までに、ECEAEの主張に関する意見を提出するよう求められている。
EUのオンブズマンはEU機関、団体、オフィスなどの不適切な行政に関する苦情を調査する。EU市民、加盟国の居住者、企業、団体はすべて、オンブズマンに苦情の申し立てをすることができる。
オンブズマンはEU行政に関する問題の解決へ、迅速かつ柔軟な方法を無料で提供している。
2010年2月16日
The European Ombudsman
http://www.ombudsman.europa.eu/press/release.faces/en/4616/html.bookmark