AVA-net 海外 ニュース No.138 2009-9-10
翻訳:宮路正子
2007年の統計 - 要点
1.2007年には、320万あまりの動物実験が新たに行われ、2006年から189、500件(6%)増えているが、これは主に、マウス、魚類、家禽の使用数が増加したためで、他の動物種使用数は2006年と比べ減少している。マウスの使用数は、基礎研究と繁殖用に増加している。
魚類の使用数は、薬品や、人、動物、環境の保護を目的とする応用研究において増加しており、家禽の使用数は応用獣医学研究において増加している。
2.動物実験では主にマウス、ラット、その他の齧歯動物が使用され、実験総数の83パーセントを占める。残りの大部分は魚類(10%)と鳥類(4%)だ。
3.法律による特別な保護の対象となっている犬、猫、馬、人間以外の霊長類の使用数は、実験総数の1パーセント未満となっている。
4.人間以外の霊長類は、約4、000の実験に使用されているが、これは、2006年から240件(6%)減少している。旧世界ザル、新世界ザルともに使用数が減ったためだ。(霊長類に関する詳細については、付録B*を参照のこと)
*(http://www.homeoffice.gov.uk/rds/pdfs08/spanimals07appb.pdf)
5.2007年に行われた実験の3分の1以上(37%)は、遺伝子有害変異動物や遺伝子組み換え動物を生産するための繁殖研究で、使用されたのは主に、マウス(93%)と魚類(6%)だ。
6. 動物実験法1986のSchedule2*に記載されている動物で行われた実験の約99パーセントについては、イギリス国内の指定供給源から取得した動物を使用している。
*(http://www.archive.official-documents.co.uk/document/hoc/321/321-xa.htm)
7.正常な遺伝子を持つ動物は、2006年から86、200(5%)増加し、173万の実験(実験総数の54%)に使用されている。この増加は、基礎研究に使用されるマウスと安全試験に使用される魚類と関連している。
8.遺伝子有害変異動物は、2006年より11、000件(3%)減り、315、600件の実験に使用された。そのほとんどは齧歯動物(91%)で、残りの大部分は、魚類、あるいは両生類だった。
9.遺伝子組換え動物を使用した実験は、114、400件(11%)増えて115万件となり、2007年に行われた実験の36パーセントを占める(2006年には34パーセント、1995年には8パーセント)。これらの実験のほとんど(99%)にはマウスと魚類が使用されている。
10.約39パーセントの実験で、侵襲による苦痛の程度を軽減するために何らかの麻酔を使用した。その他の実験の多くでは、麻酔の使用は、実験に悪影響を及ぼす恐れがあった。
11.2007年に開始された毒性試験以外の実験は全体の約87パーセントを占める(1995年には75パーセント)。動物が使用された主な分野は、免疫学研究、薬品の研究・開発、ガン研究、解剖学、生理学だった。
12.毒物試験は、1995年には25パーセントを占めていたが、2007年には13パーセントだった。毒性試験の数は、1995年以来、39パーセント減少している。
2007年に行われた実験の大部分(78%)は、薬品の安全性と有効性評価のためのものだった。2007年に行われた毒性試験の約78パーセントで、齧歯動物が使用されており、人間以外の霊長類の使用は1パーセント以下だった。
2007年に行われた毒性試験の87パーセントは、法律あるいは基準で義務付けられたものだった。
動物使用の傾向
1976年以降、実験に使用される動物の数は大幅に減少し、1990年代は横ばい状態を保っていたが、最近は増加傾向にある。2000年以来、実験の数は7%%上昇しており、これは、繁殖研究の増加による影響が大きい。
分子生物学の新技術は、新しい研究分野を開拓し、遺伝子組換え動物の使用増加につながっている。
また、EU薬品戦略白書で出された新しい法案が承認・実施されれば、人の健康と安全のために使用される動物の数の増加につながるだろう。
UK Home Office - Statistics of Scientific
Procedures on Living Animals Great Britain 2007
http://www.homeoffice.gov.uk/rds/pdfs08/spanimals07.pdf
*なお、2008年の統計が7月21日付けで発表されましたので、次回会報で紹介いたします。