AVA-net 海外 ニュース No.133 2008.11-12
翻訳:宮路正子
新薬の試験・販売方法に致命的な欠陥があるために、アメリカ人は将来、ヴァイオックス(Vioxx)などのような、米食品医薬品局(FDA)が承認した薬の容認できない副作用に曝される可能性が高い、とする研究が米社会学学会の年次総会で発表された。
「薬害は、文字通り、アメリカにおける現在の薬品試験と承認のシステムに組み込まれています。最近行われたシステムの変更は、深刻な危険性のある新薬が占める割合を増加させただけです」と、この論文を書いた社会学者で、ニュージャージー医科歯科大学の比較衛生政策の教授であるドナルド・ライト博士はいう。
全米科学アカデミー連合のひとつである、医学院(Institute of Medicine
)に提出された1999年の報告書によると、薬の副作用(ADRs) はアメリカで4番目に大きな死亡原因で、毎年、200万件以上の深刻な副作用が起こっている。その中には不適切に処方された服用量、薬品の乱用、薬品の相互作用も含まれている。
ライト博士の分析は、処方薬による患者のリスクの組織的基因を特定しており、将来の薬害を避ける、あるいは減少させるための制度改革を提案している。
ライト博士によると、現行の試験方法では、すでに承認されている薬品ではなく、プラシーボ(偽薬)との比較に基づいて新薬の有効性を評価している。系統的レビューは、7つのうちひとつの新薬が既存の薬品より優れているが、7つのうち2つの新薬が深刻な副作用を引き起こすことを示している。この副作
用は、米食品医薬品局(FDA)が、「黒枠警告」(black box warnings )、副作用警告、あるいは薬品の市場撤去さえ含む措置を取るほど深刻なものだ。
この方法で開発された新薬は、既存の薬品よりすぐれた効果はあるものの、患者に有害である可能性も2倍だと、ライト博士はいう。
ライト博士の分析は、また、臨床試験設計における別の欠点も示唆している。製薬会社は、中毒性副作用に関する証拠が最小になるよう試験を設計しているというのだ。臨床試験参加者の中でも、典型的な患者ではなく、より健康な人口からサンプルを取り、より高齢であったり、貧しかったり、複数の健康上の
問題を持っている人々は除いてしまうのだ。また、試験は薬品の主効果に関するデータを収集するに足る期間は行われるが、長期に及ぶ副作用を発見できるまでの期間は行われない。薬品の認可はこれらのデータに基づいて行われるため、有害な副作用のある薬品が認可されてしまうこともある。
現在のシステムでは、今日の新薬に対する‘安全で有効’という定義は、‘不完全な情報に基づいて一見安全で、偽薬よりは有効’に代わってしまう可能性もあると、ライト博士はいう。
政府の見落としに関しては、FDAの深刻な予算不足が、職員に給与を払うために、FDAが規制する業界である製薬業界への依存を引き起こしたとし、資金の見返りに、業界はより迅速な審査を期待するが、より迅速な審査は、深刻な長期の副作用を見逃す可能性も持っているという。
「安全性確認審査のスピードアップにより、副作用に関する「黒枠警告」や市販されてから市場撤去される薬品の数は3倍になりました。有害な薬品から一般市民を保護するというFDAの役割を強化するための最近の改革にもかかわらず、現行の薬品安全性審査、そして製薬会社が薬品を承認されていない用途のために販売促進することを可能にする緩和された規則のために
、有害性と有効性の比率は悪化しつつあります」、とライト博士はいう。
News-Medical.Net 2008年8月3日
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