AVA-net 海外 ニュース No.133 2008.11-12
翻訳:宮路正子
動物実験をマイクロドーズ試験に置き換える可能性を高める新データが発表された。
欧州連合マイクロドーズ加速器質量分析パートナーシップ・プログラム(EUMAPP)は、30ヶ月の月日と2百万ユーロドルを費やした、治験におけるマイクロドーズ試験(100マイクログラム以下かつヒトにおいて薬理作用を発現すると推定される投与量の100分の1を超えない極めて低用量の披験物質を健常人に単回投与することにより行われる臨床試験)の使用に関する研究プロジェクトの予備結果を、6月16日、ドイツ、バード・ホンブルクで行なわれた欧州薬学連盟(EUFEPS)の会議で発表した。
EUMAPPで使用されたのは、人体においてはその特性を示したが、動物やin vitro(生体外)モデルでは予測が難しい、あるいはマイクロドーズのデータが示す治療レベルでは特性を予測するのが難しいと考えられた化合物で、マイクロドーズ臨床試験の予見性を厳しくテストするために選ばれた。
Xceleron社の社長兼最高経営責任者であり、EUMAPP運営委員会の委員長を務めるコリン・ガーナー博士は、EUMAPPの予備結果をレビューした後、「プログラムの結果は、厳しく精査し、詳細に解釈する必要がありますが、予備結果は、マイクロドーズ試験が予備臨床開発の最早期における貴重な臨床データを提供する能力があることを強く裏付けています」、と述べている。
また、フランスのセルビエ研究所所長ローリン・ヨヘムセン博士は、EUMAPPの研究はマイクロドーズ試験の予測能力への信頼を高めることに貢献している、という。
EUMAPP共同体の科学アドバイザーであるマルコム・ローランド教授は、EUMAPPの結果は、総括的に見て、加速器質量分析と組み合わせたマイクロドーズ試験が、合理的に適用されれば、他に類がないほど早く、候補選択の決定を容易にするための追加ツールを提供するだろうという見解を支持し続けるに十分なほど有望である、と述べている。
最近、Xceleron社は、25の化合物に関するデータベースを開発したと発表した。このデータベースには、多岐にわたる化合物の、100倍あるいはそれ以上(何千倍というケースもある)に及ぶ投与量の薬物動態パラメーターを80%の確率で予見性を示すマイクロドーズと薬理学的投与量(薬剤などが疾患の治療や予防効果を示す量)に関するデータも含まれている。
マイクロドーズ試験は、極微で安全な量の新しい化合物を人間のボランティアに投与し、化合物に対する反応を加速器質量分析で分析する。
加速器質量分析は、直接個々の原子を数えることが可能であり、また、非常に高感度なので、1リットルの化合物を世界中の海水と同量の液体で希釈しても、その化合物を検出する能力がある。このアプローチを使っていればTGN1412の薬害は避けられたかもしれないと大勢の人間が同意している。TGN1412の治験では、人間ボランティアはひどい副作用に苦しんだが、人間ボランティアの500倍以上の量を投与されたサルの実験ではこの副作用は予測されなかった。
動物実験代替法としてのマイクロドーズ試験の採用は、全英動物実験廃止協会(NAVS)が推進している霊長類実験を廃止し、ヨーロッパにおける動物実験の規則を改善するためのキャンペーンへの強力な後押しとなるだろう。
NAVSの最高責任者、ジャン・クリーマーは、「欧州委員会は、現在、実験における動物の使用に関する指令(Directive86/609/EEC)の見直しをしており、今年中に改正のための提案を行なうと予想されています。NAVSは、欧州議会議員432名の署名を得た霊長類実験廃止宣言の採択や、議会と委員会での頻繁なプレゼンテーションという形で、この過程に積極的にかかわってきました。化粧品の動物実験では、本気で取り組めば、動物実験が置き換え可能であることを示しました。今度は、規制試験を行なう方法について大きな変革を行なう時期が来たのです。現代的な、人間を基にしたテクニックの採用は、動物にとっても消費者にとっても朗報となるでしょう」、と述べている。
MTB europe 2008年6月24日
http://mtbeurope.info/news/2008/806019.htm