AVA-net 海外 ニュース No.130 2008.5-6
翻訳:宮路正子
チンパンジーの健康改善・扶養および保護法(以下、チンパンジー保護法)の言い回しでは、特定の条件のもとでは、いったん「引退した」チンパンジーを研究施設に連れ戻すことが可能だった。実際には連邦政府のプログラムのもとで引退したチンパンジーが研究施設に連れ戻されたことはなかったが、「チンプ・ヘイヴンは終の棲家」法は事実上、この抜け穴をふさぎ、医学研究から引退したすべてのチンパンジーが余生を平和に暮らすことを確実にした。
チンプ・ヘイヴンは、2000年にチンパンジー保護法が成立し、チンパンジー・サンクチュアリ・システムの実施が可能になった際、このシステムを構築・運営するために政府が選んだ非営利団体だ。チンプ・ヘイヴンは2005年に最初のチンパンジーたちを迎え、現在、研究施設その他から引退した123頭のチンパンジーの住まいとなっている。チンパンジーはいくつかの大きな社会集団で、快適な住居と、何エーカーもの森林生息地2つを含む、広々とした野外エンクロージャー(囲まれた空間)に暮らしている。
この法案の可決は、医学研究を通して、既に人類に多くの貢献をしてくれたチンパンジーの恒久的な引退を確実にするものであり、また、援助資金提供者も、これで何の憂慮もなくチンパンジーの支援をすることができると、チンプ・へイヴンの理事兼代表のリンダ・ブレント博士は述べる。「私たちは、この重要な修正案を議会に提出したジム・マクレリー下院議員とリチャード・バー上院議員、そしてこれを支持したチャーリー・メランコン下院議員、メアリー・ランドリュー上院議員、デビッド・ヴィッター上院議員とスタッフの皆さんに感謝しています。また、多くの個人や団体にも、チンパンジーとチンプ・へイヴンのために、この件ではご協力いただきました」
歴史的なチンパンジー保護法は、実験動物に対する終生の責任を認識して、彼らを引退させるための、初の連邦政府出資によるシステムだが、必要経費の25パーセントは民間からの資金を充てなければならないとする条項がある。しかし、チンパンジーの実験施設への返還を可能にする条項があるために、支援をためらう個人寄贈者、基金、動物福祉団体もある。「チンプ・へイヴンは終の棲家法」はこの可能性を削除し、国立サンクチュアリ・システムが財政的に実行可能であることを確実にするはずだ。さらに多くの居住施設を建設し、引退を待つチンパンジーにケアを提供するための資金が必要とされる。
チンプ.へイヴンの開発担当マネージャー、パトリシア・ライディンジャーは「私たちは今、3万ドル(約300万円)の資金を必要としています。これがあれば2つの大きな遊び場を完成させることができるので、もっとたくさんのチンパンジーをサンクチュアリへ移すことができます」という。
ルイジアナの北西にある森林で、おいしい葉を求めて木を登ったり、仲間と日向でくつろいだりしている引退したチンパンジーたちは、おそらくこのようなニュースには気づいていないだろう。しかし、この法案の可決によって彼らは確実に利益を得る。チンプヘイヴンの素晴らしい終の棲家にずっといられることになるのだから。
2007年12月19日
Chimp Haven News
http://www.chimphaven.org/view-news.cfm?id=38