AVA-net 海外 ニュース 2008.3-4
翻訳:角 恵美
木曜日(2月14日)にアメリカ政府の研究機関連合によって発表された計画は、新たな化学製品や薬品の人間への安全性を評価するために行われている動物実験の終焉につながる可能性のある意欲的なものだ。
環境保護局(EPA)、国家毒性評価計画(NTP)、国立衛生研究所(NIH)の3つの政府研究機関は、新たな方法の開発と実施に関する覚書に署名をした。各機関間の協力については、『サイエンス(Science)』の最新版に記載されている。
「今回の合意は画期的な出来事です。私たちはこのことが動物実験廃止への第一歩であると信じています。代替のプロセスはおよそ10年だと思われます。」と、米国人道協会(HSUS)のマーティン・スティーブンスは言う。三機関は、新方式は科学的立証を必要とするために、毒性試験代替の完全な実施には時間がかかることを認めている。
HSUSなどの活動家団体は長年、とりわけ化粧品や美容品に含まれる化学薬品の安全性を試験するために動物を利用することに抗議してきた。三機関は、このたびの協力は新たな化学薬品の数と実験費の増大や動物実験に対する市民の「不安感」によって加速した、と指摘している。
スティーブンスによれば、具体的な数字は分からないが、年間およそ1000万もの動物が毒性試験に用いられている。マウス、ラット、ウサギ、モルモットが大半であるが、イヌ、サルなども使用されている。
これまで、毒性は動物の体内に薬品を投入して有害かどうかを調べることで判定してきた。「そのやり方には金と時間がかかり、大量の動物が使われるが、いつもうまくいくとは限らない。」と、NIH国家ヒトゲノム研究所所長フランシス・コリンズは言う。
三機関が活用を望む代替システムは、試験管内で培養したヒト細胞やコンピュータによる試験機に依存したやり方である。それらのやり方により研究者たちは、潜在的に毒性の化合物を動物に投入することなく研究室で検査することができるようになる。
EPAは、新方式による300の化学薬品の評価を始めた。第一段階は今年中に終わる予定であると、毒性計算科学研究所所長ロバート・カブロックは言う。
NIHゲノム化学研究所所長クリストファー・オースティンによると、1536個の小さなウェル(Wells)を含む7.6cmx12.7cm(3inx5in)
のガラスプレートを用いる方式では、一度に何千もの化学薬品を検査することが可能である。試験管内で培養された数百のヒト細胞を個々のウェルに入れ、そのなかに異なる薬品をコンピュータ試験機によって投入する。時間を置いてから、それぞれのウェルに試験機でレーザーをあてて細胞の残量を測る。コンピュータは、細胞の反応の仕方に基づいてそれぞれの化合物の毒性を分析する。
EPAは2500の潜在的に毒性の化合物を厳密に実験するのに30年かかった、とNIH所長エリアス・ゼルフーニは比較して言う。
決定したデータは全て、公共データベースに収められる。「それらとても貴重な実験結果にアクセスできることは、全世界の人々にとって大変重要なことだと思われる。」と、カブロックは述べる。三機関の合意は、EPAとNTPが毒性試験のプロセスを迅速化するために2005年に始めた取り組みの成果である。そして、国家研究委員会(NRC)は昨年、実験を行うことがどれだけ早くなり得るかについて記述された報告書を発表した。
3つの政府研究機関は、細胞に基づいた実験が正確であるかを裏付けるために、動物実験済みの化合物から取り掛かる予定である、とコリンズは述べる。動物実験は一夜にして消え去るものではないが、三機関の取り組みは動物実験の終焉に向けた第一歩である、とゼルフーニは言う。
動物実験の代替は、製薬会社が治療目的で化合物の試験をするときに用いるのと同じ方法が、細胞に有害かどうかを検査するときにも利用できるということに研究者たちが気付いたときに具体化され始めた。「ある目的で開発した技術が、『ほかのことにも利用できるなんて!』と気づくことは、研究者が常に望んでいることの1つです。」と、コリンズは言う。そして、「インタネットやウェブに発展するとだれが思っただろう?」と、彼は1970年代の軍部データ伝送計画の発展を引き合いに出した。
2008年2月14日
USA TODAY ONLINE “Three U.S. agencies aim to end animal
testing”
http://www.usatoday.com/tech/science/2008-02-14-animal-tests_N.htm