【ＥＵ】

AVA-net 海外 ニュース 　No.128　2008.1-2

翻訳：宮路正子

欧州議会は、欧州連合（EU）がEU動物実験指令の改正手順を活用して、大型類人猿と野生から捕獲したサルの科学的実験への使用禁止を緊急優先事項とすべき、とする宣言書を採択し、また、科学的実験へのすべての霊長類の使用を代替法に換える期限も設定するべきだとしている。２００７年９月６日の時点で４３３人の欧州議会議員がこの宣言書に署名している。

宣言書が欧州議会で正式に採択されるためには、半数以上の議員の署名がなければならない。この宣言書は英国選出のボウィス議員、フランス選出のルール議員、スウェーデン選出のホルム議員、ドイツ選出のハームズ議員、スロベニア選出のマーコ議員が発起人となっている。

発起人のひとりボウィス議員は、「これは動物福祉に関心を持つ人だけでなく、人間の健康を保護しようとする人すべてにとって素晴らしいニュースだ。現在、イギリスの実験施設では毎年およそ３３００頭の霊長類が使用されている。代替法の開発および使用はますます増加しており、これは動物の実験使用数を減らし、霊長類の実験を完全になくすことを最終的な目標とするのが可能でることを意味する。霊長類の実験使用を削減し置き換えるための努力は歓迎するが、霊長類の実験を廃止するためには、より多くの行動が必要である」という。

また、霊長類の４分の１以上の種が絶滅の危険にあるというのに、野生由来の霊長類は自然の生息地から捕えられ、EUの実験施設で研究に使用され続けている、とし、技術における進歩は霊長類実験より効率的で、信頼性のある代替「実験」法を提供し、今、サルや大型類人猿の科学的実験への使用を止めることは優先事項だ、とつけ加えた。

イギリス選出のマーティン議員は、「霊長類は社会的、精神的、感情的な機能において人間に非常に近く、彼らを科学的実験の極端なトラウマにさらすのは考えられないことであるはずだ。それだけでなく、霊長類の科学的実験はしばしば劣悪な科学であり、また、使用される種の多くは野生では絶滅の危機にさらされている。このような理由で、私は大型類人猿、野生由来のサルの科学実験の廃止と、すべての霊長類の科学的実験を段階的に廃止するための期限設定を求める宣言書に署名した」と述べている。

マーティン議員は、欧州議会などの媒介を通して、この残酷で非人道的な行為を廃止するためのキャンペーンを進めて行きたいという。

２００６年に委員会が動物実験に関して募集したパブリックコメントでは、８０パーセントの回答者が霊長類の実験使用は容認できないとしている。欧州議会議員は、毎年EU内の実験施設で１万頭以上の霊長類が使用されていると指摘する。宣言書は、ほとんどすべての霊長類種が９０パーセント以上のDNAを人間と共有していることに触れ、霊長類種が飼養下において非常に苦しむ能力があることを認識している。

議会は、これらの霊長類種の２６パーセントは絶滅危惧種でありながら実験施設での使用のために野生からの捕獲が続けられており、また、これらの種が西洋の学術施設で制限なく使用されていると見なされれば、人間の食用捕獲などの脅威から守るのも難しいかもしれない、と記している。

欧州議会議員たちは、宣言書の中で、いまや先進技術が霊長類実験より効率的で信頼性のある、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI) 、マイクロドージング、コンピューターモデル、組織や細胞の培養などの代替法を提供することを強調し、また、遺伝子の類似性にもかかわらず、人間と他の霊長類の間には、重要な違いがあり、霊長類実験は人間を基にした研究の的確さにはかなわ
ないことにも言及している。

宣言書は、署名者の氏名と共に理事会、委員会、加盟国に送られる予定だ。

２００７年９月６日
EUROPEAN PARLIAMENT（欧州議会公式サイト）
http://www.europarl.europa.eu/news/expert/infopress_page/057-10105-246
-09-36-909-20070905IPR10104-03-09-2007-2007-false/default_en.htm