【イギリス】
科学者チーム、多くの動物実験に深刻な不備があると発表
AVA-net 海外 ニュース No.123 2007.3-4
翻訳:宮路正子
動物実験の多くに不備があり、試薬が人間においてどの程度効果があるのか予測できないとして、ベテラン科学者のチームが発表した論文が動物実験の真価に疑問を投げかけている。
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌に掲載されたこの論文は、すべての動物実験を廃止するための実証的な根拠として動物の権利活動家が飛びつきそうなものだし、悲惨な結果に終わったNorthwick Parkでの臨床試験も動物の権利活動家の主張を強めるものだった。動物実験では安全だった薬が人間のボランティアには壊滅的な副作用を持っていたのだ。
しかし、論文を発表した科学者達は、現在のところ動物実験の手法基準が低いため、動物実験がどの程度役に立つか決定することが不可能であり、最終的な判断はまだ下せないという。
残念なことに、この分野に関してはいずれかの利益団体に政治的に利用されることなしには何も言うことが出来ないが、この論文では、動物実験の是非については触れていない、というのも実験の多くが低い基準のもとで行われているため、そのような判断はできないのだ、と科学者チームのひとり、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のイアン・ロバーツ教授はいう。
世論調査によれば、英国民は一貫して、人間の保健医療の役に立ち、代替法がなく、動物が不必要に苦しまないならば、動物実験を支持するといっている。動物実験が人間の保健医療の役に立つかどうかという問いは科学者が答えるべきものであるが、様々な薬の人体における作用について動物実験がどの程度予測できるのかを知るために動物実験の結果を合理的に検証した研究はこれが初めてだ。
チームは6つの薬、脳梗塞治療薬が2つ、それから頭部外傷、出血、新生児の苦痛、骨粗鬆症のためのものがそれぞれ1つずつ、について検証した。まず、これらの薬の臨床試験の結果を調べ、それから、最初の動物実験について調べた。
そして、動物実験の結果と臨床試験のそれが一致しない場合が多いことを発見した。頭部に外傷を与えられた動物ではコルチコステロイド剤が効果があったのに関わらず、人間では効果が見られなかった。しかし、動物実験ではラットは頭部に外傷を与えられてからたった5分後に薬が使われていると、ロバーツ教授は手法の不備を指摘している。
また、脳溢血用のtirilazadという薬は動物実験では効果が見られたが、臨床試験ではこの薬への依存症状が起きたり死亡したりする患者の数が増加したことが分かった。論文によると検証した18の動物実験は手法の基準が低かったという。
また、動物実験の結果が曖昧なものもあったが、骨粗鬆症と新生児の呼吸困難では、臨床試験と同じ結果が得られたという。
研究者チームは、この研究のような、より系統的なレビューを行い、研究者が薬の作用についてより明確な理解ができるようにするために、いくつもの動物実験のデータを集めておくことが必要だと述べている。
The Guardian
http://www.guardian.co.uk/animalrights/story/0,,1972659,00.html
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