【アメリカ】
米国保健科学会議(ACSH)、
人間のガンの指標としての動物実験を疑問視
AVA-net 海外 ニュース No.113 2005.7-8
翻訳:宮路
「化学物質と食品の健康安全問題に関しては実験用ラットを信用するべきではない」
これはACSHが発信したメッセージのひとつだ。ACSHは、特定の化学物質、食品添加剤、その他の物質に発ガン性があるかどうかに関して、一般市民の不必要な過剰反応と見なすものをなくそうと努力している団体である。
ACSHに関与している科学者らは、最近、一般市民が露出されている程度のペルフルオロオクタン酸(PFOA:
perfluorooctanoicacid)の量では、人間の健康へリスクはほぼあり得ない、として、ジャーナリスト、訴訟人、自然保護活動家達が、環境内のPFOAによって人間が危険に晒されているという主張に異論を唱えた。
デュポンなどのフッ素樹脂メーカーは、他のメーカーに販売する液状フッ素製品中のPFOAの量を減らすことに同意した。
PFOAはテフロンなどの製品の製造に使用されるが、完成品には含まれていない。
ACSHは、食品、栄養、化学物質、医薬品、ライフスタイル、環境、健康に関する問題についての消費者の教育を目的とする団体として1978年に創設された。
ACSHを創設したのは、「健康と環境に関する多くの重要な一般方針が健全な科学的根拠に基づいていないことを憂慮する」科学者達だ。
ACSHのアソシエイト・ディレクター、ジェフ・シュティーアは、様々な物質に発ガン性があるという認定を実験室での動物実験を唯一の根拠として行うことは、ACSHが反対の立場を取っているもののひとつだという。
ACSHは、実験用ラットをある物質に長期的かつ大量に露出させ、その後ラットがガンになると、その物質が発ガン性だと決める考え方に疑問を持っている、とシュティーアはいう。
ACSHは、動物実験が公衆衛生安全問題における有効な役割を果たしていると信じているが、ある物質が発ガン性かどうかを決定付ける唯一の要素であってはならない。動物実験に反対するものではないが、一般市民にもっと疑問を持って欲しいと考えている。
科学者はまだ、ある物質の人間における発ガン性を決定付ける技術を開発していない、とシュティーアはいう。
また、ACSHは、現在、問題になっている肥満についても取り上げている。
米農務省は、最近、肥満予防のための食物摂取ガイドラインを発行しており、アメリカ人がこのガイドラインに従えば、ライフスタイルに抜本的な変化が起こるが、それには精神力が必要とされる、とシュティーアは述べている。
問題はほとんどのアメリカ人がこのガイドラインに書かれているような食生活をしていないということであり、いくつかの活動家団体が、誰もがガイドラインに沿った食生活を送るべきだと考えているが、これは現実的でないとシュティーアはいう。
食品添加物に反対する団体もあるが、化学物質と食品技術は私たちが食べることができるものと食べるべきであるもののギャップを狭めることができるという。
例えば、コカコーラを1日2缶飲む人が、ダイエットコーラに換えれば、他の条件が全く変化しない場合、その人は1年間で10キロ近く体重を落とすことができる。
シュティーアはいくつかの活動家団体がACSHは食品添加物と科学物質業界の宣伝組織だと非難していることに憤りを感じている。ACSHは、様々な分野の企業、団体、個人から寄付を得ているが、特定の名前を挙げることは拒否し、寄付金は、条件なしに提供されている。また、ACSHの論文は独自にピアレビュー(同僚間の相互評価)されているという。
American
Council on Science and Health News Center 2005年4月3日
http://www.acsh.org/news/newsID.1101/news_detail.asp
http://www.acsh.org/docLib/20050126_WOCSummary.pdf
a summary of America's War on “Carcinogens”:Reassessing the Use of Animal Tests
to Predict Human Cancer Risk (based on an ACSH book of the same name)
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