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海外ニュース

【アメリカ】

なぜ私たちはガンとの戦いに負けているのか

2004年4月29日 ラルフ・W・モス博士(CancerDecisions.com)

AVA-net 海外 ニュース  No.108  2004.9-10

 翻訳:宮路


 非常に大きな意味のある記事がフォーチュン誌に掲載された。「なぜ私たちはガンとの戦いに負けているのか」という題で、フォーチュン誌の編集長である著者クリフトン・リーフは、自身も思春期に罹ったホジキン病から一命を取り留めているので、ガンやそれに対する現代の治療法について、それほど一般的でないものに関しても知識を持っている。

 リーフは、自分が生存できたのは非常に幸運だったと認める一方で、「なぜガンとの戦いにおいてほとんど進展がないのか」を問う勇気も持っている。

■ガンについてのショッキングな事実

 最近、Gleevec、Herceptin、Iressa、Erbitux、そして最も新しいところではAvastinなどの抗ガン剤に対して世間が数々の好意的な評価を与えていることを認め、ガンの克服にこれまでより近づいているように見える、という。しかし、実はそうではなく、この戦いにとって必要不可欠な希望と楽観主義は、この複雑で捉えがたく、無慈悲な敵を打ち破ることをさらに困難にし、いくつかの現存する系統的な問題を覆い隠している。私たちはこの戦いに勝ってなどおらず、これまでのところ、実は負けつつあるように見える、というのだ。

 リーフは、ガンについて、実情を知る内部の人間には良く知られているが、多くの読者にはショッキングな事実をいくつか挙げている。

-- これまでにアメリカが行ったすべての戦争による犠牲者数を合計したより多くの人間がこれからの14ヶ月にガンで死亡する。

-- アメリカでは、ガンは死亡原因の第一位として心臓病に取って代わろうとしており、既に多くの年齢集団において死亡原因の第一位となっている。

--  ガンで死亡するアメリカ人の割合は、年齢調整死亡率をみても、ニクソン大統領がガン撲滅を宣言した1971年当時、そして1950年代のそれとほとんど変わらない。その一方で、心臓病による年齢調整死亡率は、同じ半世紀の間に59%、そして卒中は69%も減少している。

--  大いに吹聴されているガン患者の生存率向上は大部分が神話にすぎない。よい一般的なガン疾患の生存期間の延長は、年ではなく月で計算されているとリーフはいう。

-- ガン患者の生存期間の延長は、ほとんどの場合、ライフスタイルを変える(国立ガン研究所がこの促進を優先事項にしてきた形跡はない)、そして特に早期発見によるものだ。

-- 数少ない劇的な大発見(ホジキン病の治療法のような)は、ガンとの戦いにおいて早い時期に起こった。それ以降、ほとんど常に「大発見」がなされたと公表されてきているにもかかわらず、最近数十年間には本質的な進展はほとんどない。

-- M.D.アンダーソン癌センターのあるバイオ統計学者によれば、前立腺ガン、乳ガン、大腸ガン、肺ガンなどの一般的なガン患者の長期生存率は「1970年代以来、ほとんど変動がない」。

-- インテル社の最高経営責任者で、研究への資金提供で中心的役割を果たしているアンディ・グローブはこういう。「それはギリシャ悲劇に似ている。誰もが、完璧を目指して個々の役を演じ、自分が正しいと信じたことを行う。その結果は散々なものだ」

 今日、ガンに対する戦いは完全に細断化され、すべての研究に払われている資金がどこから来ているのか追跡するのはほとんど不可能なほどだ。しかもそれは相当な額にのぼる。毎年ガン研究に144億米ドルが費やされているとリーフは推測する。これまでに費やされたものをすべて合計すると、アメリカ人は1971年以来、インフレ調整された金額で、2000億ドル近くを費やしてきた。1兆ドルの5分の1が何に費やされたのか説明を求めても不当ではあるまい。

的外れな実験室内での研究

 それだけの巨額な金と引き換えに何が得られたのか。実のところ、研究はガン患者が直面している現実の問題とはますます無関係なものになってきている。研究領域が狭いほど、研究者が得る報酬は高い場合が多い、とリーフはいう。特に考えさせられるのは、ガン研究がその方向性において根本的に誤っているというリーフの主張だ。

 ガン科学者は、乳ガン、結腸ガン、肺ガンのような人間の疾病を「模倣」する「動物モデル」や人工細胞株を自信満々で作成し、そして誇らしげに、これらの「実験室モデル」のガンを「治した」。しかし、細胞株やマウスにおいて成長する腫瘍は、人間の体に自発的にできる腫瘍とはまったく異なる。欠陥のあるモデルからは有用なデータを得ることはできない。ガン研究界について詳しい人々は、臨床試験ではほとんど成功しないマウス実験の「大発見」の止め処ない連発に慣れっこになってしまった。

 アメリカの最も有名なガン研究者のひとり、マサチューセッツ工科大学(MIT)のロバート・ワインバーグ博士によると、「ガン研究全体において解決されなければならない根本的問題は、治療という観点から見た場合、人間のガンの前臨床モデルのほとんどが、とんでもない代物だということ」だ

 ハーバード大学のブルース・チャブナー教授も同様の不満を述べている。「ガン研究者のいう肺ガン用モデルは肺ガン用モデルではない。なぜなら、人間の肺ガンは100種もの変異があるからだ。遺伝学的にこれ以上複雑なものは誰も見たことがないだろう」。

 では、なぜ、これらの本質的に無価値な結果しか出さない人工のシステムがいまだに使用されているのだろうか。答えは簡単だ。これらの人工モデルが非常に便利で、容易に操作できるし、腫瘍の大きさも目測でわかるからだと、Genentech社のビシュバ・ディキットはいう。腫瘍を収縮させること、特にマウスにおいて、が、人間の生存や健康とはほとんど関係がないことは認識されるどころか考慮もされない。毎年、製薬会社はこれらのモデルを使用して数億ドルを浪費している、とワインバーグはいう。しかし、Avastin、Erbitux、oxaliplatinなどの腫瘍収縮薬が巨大な利益が生み出しているのだから、製薬会社にその製造を止める理由はない。

腫瘍の収縮はガンの生存率とは無関係

 リーフは、また、ガンの退行、つまり腫瘍の収縮についても取り上げ、これが薬の有効性を判定する手段としては全く不適当であることを指摘している。(これは、私が自著「化学療法を問う」で詳しく取り上げたテーマでもある)

 マウスや人間の体内で腫瘍が収縮するのを見、薬がそのような効果をあげていることを知るのは刺激的だとリーフはいう。それは測定可能な目標となる。しかし、腫瘍収縮はそれだけでは、実のところ、ガンがさらに進行するという予兆現象なのだ。悲しい真実は、「腫瘍収縮は生存の確率を高めるものではない」ということだ。前の文を注意深く読んでいただきたい。これは、名の知れた出版物には掲載されない。

 対照的に、実際に重要なのは、転移(二次的成長)で、これが多くのガン患者の死亡原因となっている。そう聞けば、ガン研究者はこの油断ならない現象について何年も研究してきているだろうと思うだろうが、事実は全くその逆だとリーフはいう。

 フォーチュン誌は、1972年まで遡って国立ガン研究所の助成金について調べたが、申請された研究の0.5%未満が転移に関する研究を主にしているものであることが明らかになった。昨年助成金が与えられたおよそ8900の研究申請のうち、92%は転移という言葉すら含まれていなかった。M.D.アンダーソン癌センターのフィドラーによれば、ガン研究者は転移に関する研究を避ける傾向にあり、その理由は難しく、非常に成果の上げにくい分野だからであり、代わりに、研究者は、実験室で測定可能な結果を生むとわかっている技術や手段に集中する。フィドラーは、「ここに、私が使用する抗体がある。そして、ここに、・・・というものがあり、これで、私は資金を得るのだ」というのが研究者の姿勢だと説明する。(フィドラーは、感心なことに転移阻止について250以上の科学論文を公表している)

 現在、軒並み現れている新薬にも厳しい評価が与えられる。ヨーロッパで行われた研究は、1995年から2000年の間にヨーロッパで承認された12の新しい抗ガン剤が、生存、生活の質、安全性において、それまでの薬と比べて優れた面はないことを明らかにした。しかし、製薬会社に関する限り、これらの新薬にはひとつの大きな長所があった。それまでの薬より数倍も値段が高いということだ。なかには、価格が350倍もするものもあった、とリーフはいう。また、彼は2つの新しいブロックバスター薬、AvastinとErbitux、は本質的な有効性が不足していることを指摘している。Avastin は、末期の大腸ガン患者の寿命をどうにか4.7カ月延ばした。Erbituxは、確かに腫瘍を縮小させる効果はあったが、患者の生命を延ばしたというデータはないが、それにもかかわらず、この薬を服用するためには、毎週2400ドルかかる。

 記事は、それから放射線療法、インターフェロン、インターロイキン-2、エンドスタチン、そしてGleevecなどの「そうではなかった奇跡の治療」のリストをあげている。リーフ自身が認めているように、フォーチュン誌も以前、「ガン治療の大発見」と表紙に大きな見出しをつけたインターロイキン-2の特集記事を掲載したことがある。

 しかし、リーフの記事が非常に重要ことについて書かれているにもかかわらず、重大なニュースとして取り上げられる可能性は低いだろう。例えば、今朝、Google Newsに引用されている4500のニュースのうち、この記事についてのものは3つしかなかった。これとの比較として、Erbituxが発表されたとき、同じ検索エンジンで一日に千以上の記事が見つかった。

 リーフの記事はオンライン
(http://www.fortune.com/fortune/articles/0,15114,598435,00.html)
で購入することができる。しかし、残念なことに、リーフはこの問題について十分に突き詰めいていない。例えば、記事には「戦いに勝つ方法」という章が含まれているが、その前に書かれている鋭い分析と比較すると、切れ味が悪く、分かりにくい。また、リーフはガンとの戦いの経済的・政治的基盤について検討していないように思える。より利益の上がる薬が求められているのは、巨大製薬会社の体質によるものと、その不健全な影響力が研究界、承認システム全体を支配しているからだ。

 また、リーフは、ガンとの戦いにおける最も傑出した批評者、特に相補・代替医療(CAM)を取り入れている人々、について触れていないため、多くの実例(例えば、一時的な腫瘍収縮を生存期間の延長と見なすことの危険についての議論)について、非常に的を射た批判を行っている一方で、何十年もの間この分野に注目している人々なら熟知している問題の他の多くの重要な側面を見逃している。

 リーフは、自分たちにはよいアイディアが足りないという科学者の言葉を引用しているが、これにはCAM関係者は同意しないだろう。この数十年間に、ガン治療に関する斬新なアイディアをいくつも提唱した優秀な研究者が数多くいるが、彼らのほとんどは無視され、あるいは職を追われ、中には非難の対象となったものもいる。私が1980年に出版した「ガン業界」ではそのような8つのケースについて書いている。その12年後に出版した「ガン療法」では、100以上の独創的な治療、そのほとんどは今でも効果のある治療法であるかもしれない、のレビューをおこなった。また、「ガン治療薬としての抗酸化剤」で挙げた治療法の多くは、実施どころか検証さえされていない。

 ガン治療の主流にいる人々が積極的に無視し続けているユニークなアイディアについてここで述べてみたい。

 最近、MTH-68を使用した治療の成果についてまとめた論文の再版を、同僚のエヴァとラズロ・サタリー医師から受け取った。この治療は、無毒化したニューカッスル病ウィルス・ワクチンを用いたもので、特定のケース、特に脳腫瘍に効果があるようだ。論文は、ドイツ、ハンガリーおよびカリフォルニアの有名な研究所の研究者との共同執筆で、脳腫瘍学ジャーナルの最新号に掲載された。これはサタリー医師の初めての論文ではない。私自身も共同執筆者として、1999年にこのトピックについて最良のケースをまとめて論文を書き、これはpeer-review(同僚評価)誌に掲載されたが、正確にいうと「新しい」アイディアではなく、単に認識されていないものだ。実際、この合成物のMTH-68という名前は、発見された年、1968年からきている。1968年といえば、ガン撲滅宣言の3年前であり、現役のガン研究者の多くが生まれる前だ。論文、書簡、プレス・リリース、記者会見、政府当局への要請が繰り返されたにもかかわらず、この有望な治療法は、既存の医学界でほとんど認知を受けていない。アメリカの「ガン主流派」のサタリーらの仕事に対する反応は、耳を覆うような静寂だった。

 この6月、2万5000人の腫瘍学者が、米臨床腫瘍学会の年次会議に集まるだろうが、ガンとのがんじがらめで身動きのできなくなった戦いから開放してくれるMTH-68のような効果の期待できる治療が中央の舞台で注目を集めるだろうなどとは思わないほうがいい。鋭い批判を行ったリーフですら、潜在的に価値がありながら組織的に無視されている治療法が他にも多くあることを知らない、あるいは関心がないようだ。巨大製薬会社の、大きな儲けと投資した分を速やかに取り戻す必要性が、ガン研究の最強の推進力であるという事実に、一般市民、議会、科学界が気づかない限り、これらの治療法は無視され続けるのだ。

The Oral Cancer Foundation
(http://www.oralcancerfoundation.org/news/story.asp?newsId=140)


 

 

 

1.Csatary LK, Moss RW, Beuth J, et al. Beneficial treatment of patients with
advanced cancer using a Newcastle disease virus vaccine (MTH-68/H).
Anticancer Res. 1999 Jan-Feb;19(1B):635-8.

2.Csatary LK, Gosztonyi G, Szeberenyi J, et al. MTH-68/H Oncolytic viral
treatment in human high-grade gliomas. Journal of Neuro-Oncology
2004;67:83-93. 3.Leaf, Clifford. Why we're losing the war on cancer.
Fortune 2004;149(6):76-97..

 
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